
発売日: 2013年3月
ジャンル: カントリーロック、アメリカーナ、フォークロック
概要
『All Fired Up』は、Poco が2013年に発表した18作目のスタジオアルバムである。
前作『Running Horse』(2002)から実に11年ぶりのオリジナル作品であり、
“晩年期 Poco の最終到達点”
とも呼べる重要作だ。
本作が特別なのは、創設メンバーであり長年バンドを支えてきた
ラスティ・ヤング(Rusty Young)
が中心となって完成させた、ほぼ“ラスティの音楽的遺言”のような位置づけにある点である。
2000年代〜2010年代初頭のアメリカーナ再興の中で、Poco は自身の原点であるアコースティックロックやハーモニーを再び磨き上げ、
- 牧歌性
- 温かい寛容さ
- 人生を見つめる静けさ
- バンドとしての誠実な演奏
を核に据えた音像を提示した。
派手なAOR期やロック寄りの作品とは異なり、
“Poco の本質そのもの”
に立ち返ったような作品で、ファンからは
“これぞ Poco”
と高く評価されている。
全曲レビュー
1曲目:All Fired Up
アルバムのテーマを象徴する軽快なオープナー。
アコースティックギターの爽快感と温かいハーモニーが心地よく、
長い沈黙を破り戻ってきた Poco の“健やかな再出発”を宣言するような一曲。
2曲目:Drink It In
人生の美しさを静かに受け入れるような歌詞が印象的。
ミドルテンポの落ち着いた曲調で、晩年のPoco が持つ慈愛のムードに満ちている。
3曲目:Regret
悲しさと優しさが入り混じる、深い情緒をたたえたバラード。
ラスティ・ヤングの表現力が光り、アルバムの中でも特にエモーショナルな楽曲である。
4曲目:That’s What Rock and Roll Will Do
リズミカルで楽しいロックナンバー。
“音楽に救われる人生”をテーマにした前向きな曲で、これまでのPoco の歴史を振り返るようなメタ的ニュアンスもある。
5曲目:The Last Goodbye
タイトル通り“別れ”を扱った楽曲だが、感傷に浸りすぎず、前を向く優しさがにじむ名曲。
静かだが深い余韻を残す。
6曲目:A Little Rain
フォーク/アメリカーナ色が強い、しっとりとした小品。
“雨は悪いことではない”という比喩が、人生の試練を象徴する。
7曲目:Hard Country
カントリー色の強い、スチールギターが美しい楽曲。
広大な景色やロードムービーのような風景が目に浮かぶ。
8曲目:Love Has No Reason
優しいラブソング。
シンプルなメロディだが、Poco の持つ“温度感のある誠実な音楽”がよく表れている。
9曲目:Rockin’ Horse Blues
ブルースの風味が加わった変化球。
ラスティの音楽的ルーツの一部が見える楽曲で、アルバムの後半に味わい深いアクセントを与える。
10曲目:Neil Young(※同名の人物を歌った曲ではなく“若い心”がテーマ)
軽快でポップなナンバー。
タイトルのユニークさも相まって、アルバムの中で少し遊び心を感じさせる。
11曲目:Here Comes That Girl Again
軽やかで陽気な曲。
アメリカーナらしいホームメイド感と、Pocoらしい穏やかさが融合した楽しい佳曲である。
12曲目:Long Shot
肩の力が抜けたミドルテンポ曲で、最後に向けて静けさを深めていく。
“人生の賭け”の比喩が印象的で、穏やかな叙情が流れている。
13曲目:Cancel Tomorrow
ラストを飾るスローバラード。
時の流れや明日への不安と寄り添うような優しい曲で、静かな幕切れが深い余韻を残す。
総評
『All Fired Up』は、Poco の晩年を象徴する“穏やかな名盤”である。
カントリーロックの先駆者としての誇りを保ちながら、年齢を重ねたからこそ描ける
静けさ・優しさ・人生の深み
がアルバム全体に満ちている。
本作の魅力は、
- アコースティック中心の柔らかさ
- ラスティ・ヤング中心の落ち着いた表現
- シンプルだが味わい深いメロディ
- 過度に飾らず、誠実で自然体のサウンド
といった点にあり、
“後期 Poco を代表する1枚”
と言っても過言ではない。
派手なヒットを狙うのではなく、
“音楽を生活の中で育ててきた人間の静かな声”
を届けるという姿勢が、とてもPocoらしい。
おすすめアルバム(5枚)
- Running Horse / Poco
前作であり、同じくアコースティックで温かい晩年の名作。 - Legacy / Poco
再結成期のバンドの成熟を確認できる。 - Indian Summer / Poco
穏やかさと叙情性のルーツとして連続性が高い。 - James Taylor / Hourglass
アコースティック主体で人生を見つめる音楽として共通性が高い。 - America / Here & Now
70年代組が現代的アメリカーナへ歩んだ好例。
歌詞の深読みと文化的背景
2000年代〜2010年代のアメリカでは、
アメリカーナ/ルーツロックの再評価 が大きな潮流となっていた。
その中で、Poco のような先駆的バンドは“遺産(レガシー)ではなく現役”として再び聴かれはじめる。
『All Fired Up』が扱うテーマは、
- 時の流れと向き合う心
- 日々の小さな優しさ
- 変化の中でも失われない絆
- 人生の旅路
といった普遍的なもので、
“晩年の落ち着き”が強く漂う。
また、ラスティ・ヤングは本作の後、数年を経て引退し、のちに逝去。
そのため『All Fired Up』は結果として、
Poco の最後期を象徴する作品
として重要性を増すこととなった。



コメント