アルバムレビュー:Star-Crossed by Kacey Musgraves

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2021年9月10日

ジャンル:カントリー・ポップ/アメリカーナ/フォーク・ポップ/ドリーム・ポップ/ソフトロック/シンガーソングライター

概要

Kacey Musgravesの4作目のメジャー・スタジオ・アルバム『Star-Crossed』は、2018年の『Golden Hour』でキャリア最大の評価を獲得した後に発表された、離婚と喪失、自己再生をテーマとするコンセプチュアルな作品である。『Golden Hour』は、カントリーを基盤にしながら、ドリーム・ポップ、ソフトロック、ディスコ、フォークを自然に溶かし込み、恋愛の幸福感と宇宙的な広がりを描いた名盤だった。その作品がグラミー賞の主要部門を含む大きな評価を受けたことで、Musgravesは現代カントリーの枠を越えたポップ・アーティストとして認識されるようになった。

その次作である『Star-Crossed』は、前作の幸福な光を反転させたアルバムである。タイトルの「star-crossed」は、星に引き裂かれた、運命に翻弄された、という意味を持ち、シェイクスピア的な悲恋の響きを含む。ここでMusgravesが扱うのは、恋愛が終わること、結婚生活が崩れること、愛が失敗した後に自分をどう取り戻すかというテーマである。『Golden Hour』が愛に照らされたアルバムだったなら、『Star-Crossed』はその光が沈んだ後、薄明の中で自分の輪郭を探すアルバムである。

本作は、Musgraves自身の離婚経験を背景に持つ作品として広く受け止められた。しかし、単なる私的な告白にとどまらない。アルバムは全体として、悲劇の三幕構成を思わせる作りになっており、恋愛の崩壊、混乱、受容、再出発が、連続した流れとして描かれる。曲ごとに独立したカントリー・ソングとして聴くこともできるが、アルバム全体を通すと、ひとつの感情の物語として機能する。

音楽的には、『Golden Hour』のカントリー・ポップ路線を引き継ぎながら、さらにポップ、ドリーム・ポップ、シンセ、ラテン風のリズム、トラップ以降の低音処理、ソフトロック的な滑らかさが加わっている。伝統的なカントリーの要素は残っているが、『Pageant Material』のようなネオ・トラディショナルな音ではない。むしろ、本作はカントリー的な語り口を持つ現代ポップ・アルバムと呼ぶべき作品である。

Kacey Musgravesの特徴である鋭い言葉選びは、本作でも健在である。ただし、『Same Trailer Different Park』や『Pageant Material』で見られた皮肉や小さな町への観察眼はやや後退し、より個人的で内省的な言葉が増えている。結婚生活の崩壊を、怒りや被害者意識だけで描くのではなく、愛が本物だったこと、しかしそれでも続かなかったこと、互いに傷つけ合ったことを静かに認める。その成熟した視点が、本作の重要な魅力である。

本作には、失恋や離婚を扱った作品にありがちな一方的な断罪は少ない。Musgravesは、相手を完全な悪役にせず、自分自身も完全な被害者としては描かない。むしろ、二人の関係が少しずつずれていき、努力しても戻れなくなり、最後には別々の道を選ぶしかなかったという現実が描かれる。この視点は非常に現代的であり、成熟した別れのアルバムとして本作を特徴づけている。

また、『Star-Crossed』は、女性アーティストが結婚や離婚、自己イメージをどう語るかという点でも重要である。カントリー・ミュージックには家庭、結婚、信仰、地域社会を重視する伝統がある。その中でMusgravesは、結婚の失敗を恥や敗北としてではなく、人生の一部として描く。愛は失敗したが、それは人生全体の失敗ではない。むしろ、そこから自分を再構築する過程こそが、本作の中心にある。

『Star-Crossed』は、発表時に『Golden Hour』ほど普遍的な称賛を得たわけではない。前作の完璧に近い幸福感と比較され、暗く、散漫で、ポップ寄りになりすぎたと受け止める声もあった。しかし、本作は『Golden Hour』の続編として非常に自然な作品である。幸福な恋愛が永遠に続くとは限らない。その終わりを、同じアーティストが誠実に描いたことに大きな意味がある。

日本のリスナーにとって『Star-Crossed』は、カントリー・アルバムというより、現代的な失恋/離婚アルバムとして入りやすい作品である。音作りは柔らかく、メロディは洗練され、歌詞は直接的でありながら過剰に感傷的ではない。『Golden Hour』の後に聴くことで、Kacey Musgravesというアーティストが、愛の始まりだけでなく、愛の終わりも同じ誠実さで描く作家であることが分かる。

全曲レビュー

1. Star-Crossed

タイトル曲「Star-Crossed」は、アルバム全体の序章として機能する短く劇的な楽曲である。アコースティック・ギターと荘厳なコーラスが重なり、まるで悲劇の幕が上がるようにアルバムが始まる。タイトルにある「star-crossed」は、運命に引き裂かれた恋人たちを意味し、個人的な離婚の物語を古典的な悲劇の形式へ置き換えている。

音楽的には、カントリーというよりフォーク、ラテン的な響き、映画音楽的な合唱が混ざった導入曲である。曲は短いが、非常に象徴的で、ここから語られる物語が単なる日記ではなく、演劇的に構成されたものだと示している。

歌詞では、二人の恋が星回りによってうまくいかなかったことが示される。重要なのは、ここでMusgravesが最初から関係を悪意や裏切りだけで説明していない点である。二人は愛し合ったが、運命が味方しなかった。そうした悲劇的で少し神話的な視点が、アルバム全体の空気を決定づける。

「Star-Crossed」は、感情の詳細を語る曲ではなく、作品全体の舞台を設定する曲である。静かで短いが、本作のコンセプトを強く印象づける重要なオープニングである。

2. Good Wife

「Good Wife」は、結婚生活の中で「良い妻」であろうとする女性の心理を描いた楽曲である。タイトルは一見すると伝統的な家庭観を肯定しているようにも見えるが、実際にはその役割を演じることの重さや、相手を支えようとする努力の切実さが描かれている。

音楽的には、柔らかなカントリー・ポップを基盤にしながら、プロダクションには現代的な滑らかさがある。リズムは穏やかで、Kaceyの声は非常に近く、祈るように響く。曲全体には、家庭的な温かさと不安が同居している。

歌詞では、夫を支え、幸せにし、関係を保とうとする願いが歌われる。しかし、その言葉にはどこか自己犠牲の影もある。「良い妻」でありたいという願いは愛情でもあるが、同時に社会的な役割への圧力でもある。Musgravesはその二重性を、非常に繊細に描いている。

「Good Wife」は、アルバム序盤で結婚生活の理想と現実のずれを示す曲である。まだ関係を修復したいという願いが残っているが、その背後にはすでに壊れかけたものの気配がある。

3. Cherry Blossom

「Cherry Blossom」は、日本語の「桜」を連想させるタイトルを持つ、軽やかでポップな楽曲である。桜は美しく咲くが、短い時間で散ってしまう。その儚さは、本作のテーマである愛の一時性と強く結びつく。恋愛の甘さと、いつか終わるかもしれない不安が同時に含まれている。

音楽的には、明るいポップ・サウンドが中心で、カントリー色は控えめである。リズムは軽く、メロディは親しみやすく、Kaceyの声も柔らかく浮かぶ。前曲「Good Wife」の重さから少し離れ、恋愛の甘い記憶へ戻るような曲である。

歌詞では、自分を桜の花にたとえ、相手にその美しさを見逃さないでほしいと語る。ここには、愛されたい、見つけてほしい、短い輝きを大切にしてほしいという願いがある。桜の比喩は、美しさだけでなく、時間の限られたものへの切なさを含む。

「Cherry Blossom」は、本作の中で比較的軽やかな曲だが、その裏には儚さがある。Musgravesはポップな表面の下に、愛がいつまでも続くとは限らないという認識を忍ばせている。

4. Simple Times

「Simple Times」は、複雑になってしまった大人の生活から、もっと単純だった時代へ戻りたいという願望を歌った楽曲である。タイトル通り、ここで描かれるのは「シンプルな時間」への憧れである。ただし、それは単なる懐古ではなく、現在の疲労や混乱からの逃避として表現されている。

音楽的には、ポップ寄りのビートと軽いメロディが中心で、アルバムの中でもかなり現代的な質感を持つ。カントリーの伝統的なサウンドは控えめで、むしろインディー・ポップやソフトなエレクトロ・ポップに近い。Kaceyの歌唱も軽やかで、友人たちとの会話のように響く。

歌詞では、若い頃の自由、友人との時間、責任の少なさ、何もかもが今より簡単に感じられた日々が描かれる。離婚や大人としての人生の重さの中で、過去の単純さが魅力的に見える。しかし、そこに戻ることはできない。その事実が曲に切なさを与えている。

「Simple Times」は、本作の中で、結婚の崩壊だけでなく、大人になることそのものへの疲れを描いた曲である。軽いサウンドの中に、時間の不可逆性が感じられる。

5. If This Was a Movie..

「If This Was a Movie..」は、恋愛を映画の物語になぞらえながら、現実は映画のように都合よく解決しないことを描いた楽曲である。タイトルにある「もしこれが映画だったら」という仮定は、愛がうまくいっていた頃の理想や、劇的な和解への期待を示す。しかし現実は、その脚本通りには進まない。

音楽的には、穏やかなカントリー・ポップで、メロディは淡く、少し夢見がちである。曲全体に映画の回想シーンのような柔らかい質感があり、Musgravesの声も抑制されている。

歌詞では、映画なら相手が戻ってきたり、劇的な場面で関係が修復されたりするはずだと想像される。しかし、現実の関係にはそのような明快なクライマックスがない。愛の終わりは、劇的な一場面ではなく、静かなすれ違いの積み重ねとして訪れる。

「If This Was a Movie..」は、本作のメタ的な側面を示す曲である。Musgravesは自分の恋愛を物語として見つめながら、その物語が美しく完結しないことを受け入れようとしている。

6. Justified

「Justified」は、『Star-Crossed』の中でも特に重要な楽曲であり、離婚後の複雑な感情を非常に成熟した形で描いている。タイトルは「正当化された」「もっともな」という意味を持つが、曲の中では、怒り、悲しみ、後悔、前進したい気持ちがすべて同時に存在してもよい、という自己許容の歌になっている。

音楽的には、柔らかなギターと滑らかなポップ・プロダクションが組み合わされている。カントリーの温かさと、現代的なポップの透明感が自然に融合しており、Kaceyの声も非常に素直に響く。

歌詞では、癒えるまでには時間がかかり、良い日も悪い日もあることが認められる。前に進もうとしても、突然悲しみが戻ってくることがある。怒りを感じる日もあれば、相手を懐かしく思う日もある。そのすべてが正当な感情である、というメッセージが曲の核心である。

「Justified」は、本作の感情的な中心のひとつである。別れを単純な勝利や敗北としてではなく、矛盾した感情を抱えながら進むプロセスとして描いている点で、非常に優れた楽曲である。

7. Angel

「Angel」は、自己像と脆さを扱った静かな楽曲である。タイトルの「天使」は、完璧で清らかな存在を連想させるが、Musgravesはここで、自分は天使ではないし、間違いも犯す人間であるという認識を歌っている。これは『Pageant Material』から続く、完璧な女性像への違和感ともつながる。

音楽的には、非常にシンプルで、アコースティックな質感が中心である。装飾は少なく、Kaceyの声が近くに置かれている。アルバムの中では、特に内省的で静かな曲のひとつである。

歌詞では、自分がもっと完璧で、もっと優しく、もっと正しくいられたなら、関係は違っていたのかもしれないという感情がにじむ。しかし同時に、そうではない自分を受け入れる必要もある。ここには後悔と自己理解が同時にある。

「Angel」は、派手な曲ではないが、本作の自己反省の深さを示している。Musgravesは相手だけを責めるのではなく、自分自身の不完全さにも目を向けている。

8. Breadwinner

「Breadwinner」は、本作の中でも特に鋭い視点を持つ楽曲である。タイトルは「稼ぎ手」を意味し、関係の中で女性が成功し、経済的・社会的に力を持つことが、男性側の不安や嫉妬を引き起こす構図が描かれる。これは非常に現代的なテーマであり、Musgravesの批評性が強く出ている。

音楽的には、軽快なポップ・サウンドで、やや皮肉な明るさを持つ。曲調は重くないが、歌詞はかなり辛辣である。この組み合わせはMusgravesの得意とする方法であり、耳当たりの良いメロディの中に鋭い観察を忍ばせている。

歌詞では、成功した女性を最初は魅力的に思いながら、やがてその成功に耐えられなくなる相手の姿が描かれる。ここには、恋愛におけるジェンダー、権力、プライドの問題がある。Musgravesは、女性の成功が関係の中でどのように歪められるかを、短く的確に描いている。

「Breadwinner」は、『Star-Crossed』の中で最も社会的な切れ味を持つ曲のひとつである。個人的な離婚アルバムでありながら、より広いジェンダーの問題へ接続している点が重要である。

9. Camera Roll

「Camera Roll」は、スマートフォンに残された写真を通じて過去の関係を振り返る、非常に現代的な失恋ソングである。タイトルの「カメラロール」は、個人的な記憶の保存場所であり、同時に別れた後に最もつらい場所でもある。写真は幸せだった瞬間だけを残すが、その後に何が起こったかまでは写さない。

音楽的には、静かでミニマルなアレンジが中心である。ピアノや柔らかなシンセが、記憶をめくるような空気を作る。Kaceyの声は非常に近く、ほとんど独白のように響く。

歌詞では、過去の写真を見返すことの痛みが描かれる。そこには笑顔があり、旅行があり、愛があり、まだ壊れていなかった二人がいる。しかし、現在の自分はその結末を知っている。写真の中の幸福と、現在の喪失の差が曲の痛みになっている。

「Camera Roll」は、本作の中でも最も優れた楽曲のひとつである。現代的なデジタル記憶を題材にしながら、失恋の普遍的な痛みを描いている。Musgravesのソングライターとしての観察力が非常に強く表れている。

10. Easier Said

「Easier Said」は、別れや回復に関する言葉が、実際に行うよりも簡単に言えてしまうことをテーマにした楽曲である。タイトルは「言うは易し」という意味で、前に進む、忘れる、許す、癒える、といった言葉の難しさが描かれる。

音楽的には、柔らかく浮遊するサウンドで、ドリーム・ポップ的な質感がある。ビートは控えめで、声とメロディが空間の中に溶ける。アルバム後半の内省的な流れに自然に収まる曲である。

歌詞では、理屈では分かっていても、心が追いつかない状態が描かれる。誰かに「大丈夫になる」と言われても、実際に大丈夫になるまでには時間がかかる。愛を手放すことも、簡単な言葉では済まされない。

「Easier Said」は、『Star-Crossed』の回復のプロセスを丁寧に描く曲である。Musgravesは感情を急いで解決しようとしない。言葉と現実の間にある距離を、そのまま音楽にしている。

11. Hookup Scene

「Hookup Scene」は、現代的な恋愛や一時的な関係の空虚さを描いた楽曲である。タイトルは、カジュアルな性的関係や出会いの文化を示すが、Musgravesはそれを道徳的に断罪するのではなく、その中にある孤独を静かに見つめている。

音楽的には、シンプルなアコースティック・ギターを中心としたフォーク・ポップで、非常に素朴な響きを持つ。派手なプロダクションを避けることで、歌詞の率直さが際立つ。

歌詞では、自由に見える関係や一時的な出会いが、必ずしも心を満たすわけではないことが描かれる。長期的な関係が壊れた後、人は自由を得るかもしれない。しかし、その自由は時に孤独でもある。Musgravesはその現実を、非常に冷静に歌う。

「Hookup Scene」は、離婚後の新しい世界への戸惑いを描いた曲である。恋愛の自由と空虚さを同時に捉えており、本作の成熟した視点を示している。

12. Keep Lookin’ Up

「Keep Lookin’ Up」は、アルバム後半において少し前向きな光を差し込む楽曲である。タイトルは「上を見続けて」という意味で、困難の中でも視線を落としすぎないことを歌う。悲しみを完全に解決する曲ではないが、少しずつ回復へ向かう気配がある。

音楽的には、軽やかなリズムと明るいメロディが特徴である。カントリー・ポップとしての親しみやすさがあり、アルバム後半の重さを少し和らげる。Kaceyの声も柔らかく、穏やかな励ましのように響く。

歌詞では、人生には予測できないことが起こるが、それでも空を見上げること、前を向くことが大切だと歌われる。これは単純なポジティヴ思考ではなく、痛みを経験した後の控えめな希望である。

「Keep Lookin’ Up」は、本作の再生の段階を示す曲である。星に翻弄された物語の中で、再び空を見ることができるようになる。その小さな変化が重要である。

13. What Doesn’t Kill Me

「What Doesn’t Kill Me」は、有名な表現「自分を殺さないものは自分を強くする」を踏まえた楽曲である。ただし、Musgravesはこの言葉を単純な強さの宣言としてではなく、傷ついた後に少しずつ自分を取り戻していく過程として扱っている。

音楽的には、軽いグルーヴとポップなメロディがあり、比較的明るい曲調である。アルバムの終盤に向けて、悲しみから自立へ向かう流れがはっきりしてくる。サウンドは重すぎず、前進する感覚を持つ。

歌詞では、傷ついた経験が自分を壊すだけではなく、新しい強さをもたらすことが歌われる。しかし、その強さは派手な勝利ではない。痛みを抱えたままでも、立ち上がることができるという静かな確信である。

「What Doesn’t Kill Me」は、本作の回復のテーマを明確にする曲である。離婚の物語はここで、単なる喪失から、自己再生の物語へ変わっていく。

14. There Is a Light

「There Is a Light」は、アルバム終盤の中でも特に解放感のある楽曲である。タイトルは「光がある」という意味で、長い悲しみや混乱の後に見える希望を示している。『Star-Crossed』の物語の中で、最も明るい瞬間のひとつである。

音楽的には、軽快なビート、明るいメロディ、さらにはフルート的な音色が印象的で、少し祝祭的な雰囲気がある。カントリーというより、ソフトロックやポップ、ラテン風の軽やかさも感じられる。

歌詞では、自分の中にまだ光が残っていること、そしてそれが外から与えられるものではなく、自分自身の内側にあることが歌われる。これは非常に重要である。アルバム前半では、愛や結婚が自分の幸福の中心だった。しかし終盤では、自分の内側にある光を再発見する。

「There Is a Light」は、本作の再生を象徴する曲である。悲劇的な物語の最後に、完全な幸福ではなく、しかし確かな光が見える。その控えめな希望が心に残る。

15. Gracias a la Vida

アルバムの最後を飾る「Gracias a la Vida」は、チリのシンガーソングライターVioleta Parraによる名曲のカヴァーであり、スペイン語で歌われる。本作の終曲として非常に象徴的である。タイトルは「人生に感謝を」という意味を持ち、愛と喪失の物語を経た後、最後に人生そのものへの感謝へたどり着く。

音楽的には、非常にシンプルで、静かなアレンジが中心である。Kaceyのスペイン語歌唱は技巧を誇示するものではなく、曲の持つ祈りのような雰囲気を大切にしている。アルバム全体を締めくくる余韻が非常に深い。

歌詞では、人生が与えてくれたものへの感謝が歌われる。喜びだけでなく、痛みや涙や愛も含めて、人生に感謝するという視点である。これは『Star-Crossed』の結論として非常に重要である。結婚は終わった。愛は壊れた。しかし、その経験もまた人生の一部であり、無意味ではなかった。

「Gracias a la Vida」は、本作を悲しみの中で終わらせない。Musgravesは最後に、失ったものを嘆くだけでなく、それでも人生に感謝する場所へたどり着く。静かだが非常に強い終曲である。

総評

『Star-Crossed』は、Kacey Musgravesが『Golden Hour』の幸福な光の後に、その光が消えていく過程を描いたアルバムである。愛が始まる物語ではなく、愛が終わる物語であり、結婚が崩れた後に自分をどう取り戻すかを扱っている。前作ほどの完璧な統一感や幸福感はないが、その代わりに本作には、喪失の後の複雑な感情が正直に刻まれている。

本作の最大の特徴は、別れを単純な善悪の物語にしない点である。Musgravesは相手を完全な悪者として描かないし、自分を完全な被害者としても描かない。関係を守ろうとする努力、すれ違い、後悔、怒り、寂しさ、自由への戸惑い、再生への希望が、すべて同じアルバムの中に存在している。この複雑さが、本作を成熟した離婚アルバムにしている。

音楽的には、カントリーの枠からさらに広がった作品である。『Pageant Material』のような伝統的カントリーの響きは薄れ、『Golden Hour』で開かれたドリーム・ポップ的な空間がさらにポップ寄りに発展している。ラテン風の要素、シンセ、ソフトロック、現代的なビート処理が入り、アルバム全体はジャンルの境界をゆるやかに越えている。これはカントリー・アルバムというより、カントリー的な語りを持つ現代ポップ作品である。

歌詞面では、Musgravesの強みである簡潔な表現が生きている。「Camera Roll」のように、スマートフォンに残った写真を失恋の記憶として描く曲は、現代のリスナーに非常に直接的に響く。「Justified」では、感情が矛盾していてもそれでよいという、回復の現実的なプロセスが描かれる。「Breadwinner」では、個人的な関係の問題をジェンダーや成功への不安と結びつける。個人の経験が、より広いテーマへ自然に広がっている。

一方で、本作は『Golden Hour』ほど全曲が強くまとまったアルバムではない。曲によってポップ寄りの軽さが目立つ部分もあり、カントリー色を期待するリスナーには物足りなく感じられる可能性もある。また、コンセプトが明確である分、作品全体が離婚というテーマに強く結びついており、前作のような開放的な普遍性とは少し異なる。しかし、それは本作の欠点であると同時に個性でもある。『Star-Crossed』は、特定の人生の時期を切り取った作品なのである。

Kacey Musgravesのキャリアにおいて、本作は非常に重要な位置を占める。『Golden Hour』の成功によって、彼女はカントリーの外側にも届くアーティストになった。その直後に、最も私的で痛みを伴うテーマを扱ったことは、商業的な安全策ではなかった。だが、それによってMusgravesは、幸福だけでなく破綻も描ける作家であることを示した。

『Star-Crossed』は、離婚を敗北としてではなく、変化の一部として描く。結婚が終わることは痛みであり、喪失であり、失望である。しかし、それは人生の終わりではない。アルバムは「There Is a Light」や「Gracias a la Vida」によって、痛みの後にも光と感謝が残ることを示す。これは安易なハッピーエンドではなく、悲しみを通過した後の静かな受容である。

日本のリスナーにとって本作は、Kacey Musgravesの作品を時系列で聴くうえで特に意味がある。『Pageant Material』で自己像を確立し、『Golden Hour』で愛の幸福を描き、『Star-Crossed』でその愛の終わりを描く。この流れをたどることで、Musgravesが単なるカントリー・シンガーではなく、人生の局面ごとに自分の言葉と音を変化させるソングライターであることが分かる。

総じて『Star-Crossed』は、Kacey Musgravesのディスコグラフィの中で最も明るい作品ではないが、最も正直な作品のひとつである。愛は星に祝福されることもあれば、星に引き裂かれることもある。それでも人は生き続け、写真を消すか迷い、過去を思い出し、自分の中の光を探し、最後には人生に感謝しようとする。『Star-Crossed』は、その不完全で美しい回復の過程を描いた、静かな強さを持つアルバムである。

おすすめアルバム

1. Golden Hour by Kacey Musgraves

2018年発表。『Star-Crossed』の前作であり、恋愛の幸福と人生の輝きを、カントリー、ドリーム・ポップ、ディスコ、ソフトロックを融合したサウンドで描いた代表作である。『Star-Crossed』がその幸福の終わりを描いているため、両作を対で聴くことでMusgravesの物語性がより深く理解できる。

2. Pageant Material by Kacey Musgraves

2015年発表。伝統的なカントリー・サウンドと現代的な自己認識を結びつけた重要作である。『Star-Crossed』よりもカントリー色が強く、Musgravesの作詞家としての鋭さ、ユーモア、完璧な女性像への違和感がよく表れている。

3. Blue by Joni Mitchell

1971年発表。個人的な恋愛、孤独、旅、自己探求を極めて率直に描いたシンガーソングライター史上の重要作である。『Star-Crossed』の内省性や、愛の終わりを自分の言葉で再構成する姿勢と深く通じる。個人的な経験を普遍的な歌へ変える手本のような作品である。

4. Red by Taylor Swift

2012年発表。カントリー・ポップからより広いポップ表現へ移行しながら、恋愛の崩壊、記憶、後悔、再生を多面的に描いたアルバムである。『Star-Crossed』と同じく、別れを単純な失恋ではなく、人生の転換点として扱う作品として関連性が高い。

5. Wrecking Ball by Emmylou Harris

1995年発表。Daniel Lanoisのプロダクションにより、カントリー、アンビエント、フォーク、ロックが幻想的に融合した名作である。伝統的なカントリーの声を、現代的で空間的なサウンドへ拡張した作品として、『Star-Crossed』のジャンル横断的な音作りと比較して聴く価値が高い。

コメント

タイトルとURLをコピーしました