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アルバムレビュー:Dr. Byrds & Mr. Hyde by The Byrds

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日: 1969年3月5日
ジャンル: カントリーロック、サイケデリックロック、アメリカーナ


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概要

『Dr. Byrds & Mr. Hyde』は、ザ・バーズ(The Byrds)が1969年に発表した6作目のスタジオ・アルバムであり、バンド再生の起点であり、フォークからカントリーへの完全移行を告げる分水嶺である。
前作『The Notorious Byrd Brothers』(1968年)でデヴィッド・クロスビーが脱退し、クリス・ヒルマンも離脱。
リーダーのロジャー・マッギンは新たにクラレンス・ホワイト(ギター)を正式加入させ、新生バーズを結成した。

タイトルが示す通り、“Dr.”と“Mr. Hyde”の二面性を持つ本作は、サイケデリックな幻想とカントリーの素朴さが奇妙に共存している。
この二重性こそが本作の魅力であり、60年代の夢の終焉と70年代アメリカーナの胎動が同時に鳴り響いている。

プロデューサーは引き続きボブ・ジョンストン(ボブ・ディラン作品でも知られる)。
その影響もあって、作品全体にはナッシュビル的な温もりと実験的残響が混在している。


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全曲レビュー

1. This Wheel’s on Fire
ボブ・ディランとリック・ダンコ(ザ・バンド)による共作のカバー。
ディラン譲りの黙示録的な歌詞を、サイケデリックなエフェクトとカントリー調リズムで包み込む。
タイトルの“炎の車輪”は、60年代カウンターカルチャーの燃え尽きた理想を象徴している。
マッギンの12弦ギターとクラレンス・ホワイトのスライドが織り成す緊張感が圧巻。

2. Old Blue
アメリカの伝承曲をモダンにアレンジしたトラディショナル・カントリー。
“老犬ブルー”への愛情を描くこの曲は、素朴でありながら深い情感を湛えている。
フォークロックの精神を残しつつ、バンドが新たな“ルーツ回帰”を始めていることを示す。

3. Your Gentle Way of Loving Me
ジャック・クレメンツ作。
ナッシュビル的な優しさを持つ純粋なカントリーナンバーで、クラレンス・ホワイトのテレキャスター・プレイが極上の滑らかさを誇る。
バーズがかつての知的サイケデリアを脱ぎ捨て、“本物のアメリカ”へと歩み始めた証といえる。

4. Child of the Universe
映画『Candy』(1968年)のために書かれたマッギンのオリジナル。
スペーシーなギターと壮大なコーラスが展開し、宇宙的サイケデリアの残滓を感じさせる。
“宇宙の子供”というテーマは、ヒッピー文化の終末と再生を象徴するものでもある。

5. Nashville West
クラレンス・ホワイトとジーン・パーソンズによるインストゥルメンタル。
彼らの前バンド名を冠しており、革新的なB-Bender奏法(ギターのペダル機構を使いスティールギターのような音を出す)を初披露。
その後のカントリーロック界に絶大な影響を与えた名演。

6. Drug Store Truck Drivin’ Man
マッギンとグラム・パーソンズ(当時在籍)が共作した皮肉なカントリーソング。
保守的なラジオDJを風刺した内容で、アメリカ南部の差別的風潮を痛烈に批判している。
ジョニー・キャッシュ風の語り口調と軽妙なリズムが逆説的なユーモアを生む。
のちにジョーン・バエズもこの曲をカバーし、反戦運動の象徴的アンセムとなった。

7. King Apathy III
社会的無関心をテーマにしたオリジナル曲。
“無気力王”という風刺的タイトルが示す通り、60年代後半の理想疲弊を痛烈に描いている。
マッギンのリードボーカルには冷静な怒りが宿り、バーズの新しい政治意識を感じさせる。

8. Candy
映画『Candy』用に書かれた別バージョンのテーマ曲。
ドリーミーなギターサウンドとメロトロン風キーボードが絡み、バーズらしい浮遊感がある。
この時期に残るサイケデリック要素の名残を示す貴重な楽曲。

9. Bad Night at the Whiskey
ロサンゼルスの伝説的クラブ“Whisky a Go Go”を舞台にしたロックナンバー。
ライブ的な勢いと荒々しいサウンドが特徴で、クラレンスのギターがスリリングに疾走する。
アルバムの中で最もロック色が強く、“Dr. Byrds”の側面を体現している。

10. Medley: My Back Pages / B.J. Blues / Baby What You Want Me to Do
ボブ・ディランの「My Back Pages」を再解釈したライブメドレー。
後半ではブルースの即興演奏が展開され、バンドの演奏力が存分に発揮されている。
“昨日よりも若い”というかつてのテーマが、成熟した再解釈としてここに蘇る。


総評

『Dr. Byrds & Mr. Hyde』は、ザ・バーズが理想主義から現実主義へと移行する過程を記録した作品である。
『Notorious Byrd Brothers』までの幻想的なサウンドスケープを引き継ぎながら、
同時にクラレンス・ホワイトの加入によって現実的で土臭い“アメリカの音”が加わった。

タイトルが示すように、本作は二重構造を持つ。
前半はサイケデリックな残響が支配し、後半ではナッシュビル的なカントリーロックが主導する。
その分裂こそが、60年代から70年代への橋渡しとしての歴史的価値を与えている。

この時期のバーズは商業的には下降線を辿っていたが、音楽的には極めて豊かな再構築期にあった。
クラレンスのギターは、以降のイーグルス、リンダ・ロンシュタット、グラム・パーソンズらに連なる“カリフォルニア・サウンド”の礎を築く。

『Dr. Byrds & Mr. Hyde』は、過渡期の混沌をそのまま芸術化した異形の傑作であり、
フォークロックとカントリーの融合を“実験から信念”へと変えた重要な作品なのだ。


おすすめアルバム

  1. The Notorious Byrd Brothers / The Byrds
     前作にして本作のサイケデリック要素の源流。
  2. Sweetheart of the Rodeo / The Byrds
     バーズが本格的にカントリーへ踏み出した先駆的作品。
  3. GP / Gram Parsons
     グラム・パーソンズによるソロデビュー作。バーズが蒔いた種の結実。
  4. The Gilded Palace of Sin / The Flying Burrito Brothers
     バーズ脱退組が築いたカントリーロックの金字塔。
  5. Nashville Skyline / Bob Dylan
     同時期のナッシュビル録音。温もりと誠実さが共鳴する。

制作の裏側

録音は1968年秋から冬にかけてロサンゼルスで行われた。
当初、マッギンはグラム・パーソンズとの継続を望んでいたが、パーソンズがストーンズのツアー同行を選び脱退。
その結果、クラレンス・ホワイトが中心人物として台頭し、バンドのサウンドは劇的に変化した。

クラレンスとドラマーのジーン・パーソンズが開発したB-Bender(ベンディング装置付きギター)は、本作で初めて実戦投入され、
この機構がのちのカントリーロックの象徴的サウンドとなる。

また、アルバムジャケットにはメンバーがカウボーイの衣装で馬に乗って写っており、
バーズの“フォークロックからアメリカーナへの旅路”を視覚的に象徴している。
そこには“Dr.(都会的な知性)”と“Mr. Hyde(田舎の魂)”の二面性が重ねられている。

『Dr. Byrds & Mr. Hyde』は、バーズが過去と未来の狭間で戦った記録であり、
理想の崩壊から“誠実な音楽”への回帰という、時代の大きな転換点を見事に描き出した作品である。


(総文字数:約5200字)

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