発売日: 1980年10月24日
ジャンル: シンセポップ / ポストパンク / エクスペリメンタル
Orchestral Manoeuvres in the Dark(OMD)のセカンドアルバム『Organisation』は、前作『Orchestral Manoeuvres in the Dark』からさらに音楽的な深みと暗さを追求した作品である。このアルバムでは、冷たくミニマルなシンセサウンドが一層際立ち、ポストパンクの影響を受けたダークで内省的なトーンが特徴だ。プロデューサーには再びマイク・ハウレットを迎え、彼らの実験的なアプローチをサポートしている。
本作のハイライトは、OMDの代表曲「Enola Gay」。この楽曲は核爆弾を投下した爆撃機に着想を得た歴史的かつ風刺的な内容で、キャッチーなメロディと深刻なテーマの対比が印象的だ。アルバム全体として、シンセポップの枠を超えた芸術的なアプローチが随所に見られ、OMDの音楽的進化を明確に感じさせる一枚となっている。
全曲解説
1. Enola Gay
アルバムの代表曲であり、OMDのキャリアを象徴する名曲。軽快なシンセサウンドと反復的なリズムがポップな印象を与える一方で、歌詞は核爆弾投下という重いテーマを扱っている。アンディ・マクラスキーの感情を抑えたボーカルが、楽曲のメッセージ性を際立たせる。時代を超えて愛されるシンセポップのクラシックだ。
2. 2nd Thought
静かで内省的な雰囲気を持つ楽曲。シンプルなメロディラインが繰り返される中、シンセサウンドが次第に重なり、楽曲に深みを加えていく。歌詞には葛藤や迷いが表現されており、OMDの詩的な一面が感じられる。
3. VCL XI
実験的でミニマルなサウンドが特徴のトラック。タイトルはオーケストラ用の電子楽器「Vocoder」に由来し、楽曲全体にエレクトロニカ的な質感が漂う。冷たく無機質なシンセの響きが印象的。
4. Motion and Heart
アルバムの中では比較的明るいトーンを持つ楽曲。軽快なリズムとポップなメロディが際立ち、「Enola Gay」と並ぶシングル向きの一曲だ。歌詞は抽象的ながらも、内に秘めた感情を暗示している。
5. Statues
メランコリックなムードを持つバラード。ゆったりとしたテンポで進行し、アンディのボーカルが感情を繊細に伝える。ノスタルジックな歌詞とシンプルなシンセサウンドが相まって、リスナーに深い印象を与える。
6. The Misunderstanding
アップテンポでダンサブルな楽曲。明快なシンセリフとリズミカルな構成が特徴で、アルバムの中でも特にライブ映えするトラックだ。歌詞は人間関係のずれを描き、聴く者に共感を呼ぶ。
7. The More I See You
1940年代のジャズスタンダードのカバーだが、OMD独自の解釈が加えられ、シンセポップとして生まれ変わった楽曲。ミニマルなアレンジと、アンディのクールなボーカルが新鮮な印象を与える。
8. Promise
未来的なサウンドと抒情的な歌詞が融合した一曲。シンセサウンドが曲全体をリードし、リズムマシンが一定の緊張感を与えている。OMDの実験的な音楽性が感じられる。
9. Stanlow
アルバムの最後を飾る壮大なトラック。OMDが育った工業地帯スタンローに着想を得た楽曲で、工場の音や環境音がサウンドスケープに取り入れられている。シンセサウンドが重層的に重なり、映画的なスケール感を持つ一曲となっている。
アルバム総評
『Organisation』は、OMDがシンセポップの限界を押し広げたアルバムである。前作の持つポップなエネルギーを保ちながらも、より実験的で内省的なサウンドが展開され、バンドの成熟を感じさせる。特に「Enola Gay」はキャッチーさとメッセージ性を兼ね備えた名曲であり、アルバム全体のトーンを象徴している。音楽的な挑戦と深いテーマを融合させたこの作品は、OMDの重要な転機を示す一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Architecture & Morality by Orchestral Manoeuvres in the Dark
OMDの最高傑作とされるアルバム。さらに成熟したサウンドと叙情性が際立つ。
Vienna by Ultravox
シンセポップとポストパンクを融合させた名盤。OMDファンにとっても親和性が高い。
Dare by The Human League
シンセサウンドのポップさが際立つニューウェーブの代表作で、『Organisation』のポップな側面が好きな人におすすめ。
Black Celebration by Depeche Mode
ダークで実験的なシンセサウンドが印象的。OMDの内省的な要素と通じる部分が多い。
Low-Life by New Order
ポストパンクとシンセポップの絶妙な融合が楽しめるアルバム。OMDの音楽的進化を好むリスナーにおすすめ。
コメント