1. 歌詞の概要
「Commitment」は、モニカが2019年にリリースしたソロ名義での独立後初のシングルであり、彼女の音楽人生において新たな章の幕開けを告げた楽曲である。その内容は、タイトルが示す通り「真摯な愛の誓い」や「関係における誠実さへの渇望」を主軸にしている。恋愛関係において、遊びや曖昧さではなく、心から信じ合える深い絆――つまり“コミットメント”を求める女性の視点から語られるこの歌は、恋愛と自己尊重の間で揺れる現代女性のリアルな感情を映し出している。
モニカの歌声はこの曲において、抑えながらも芯の強さを感じさせるトーンで表現されており、感情が昂るというよりも、冷静で毅然とした態度が印象的である。愛されることの意味を問うだけでなく、自らが何を求め、何を拒むのかをはっきりと伝えるこのスタンスは、まさに自立した女性像を象徴している。
2. 歌詞のバックグラウンド
この楽曲は、モニカがメジャーレーベルからの独立後、初めて自主レーベル「Mondeenise Music」を通して発表した作品としても注目を集めた。プロデュースを手がけたのはNova Wavという女性デュオで、彼女たちはビヨンセなど数多くのアーティストと仕事をしてきた新世代のプロデューサー陣である。
「Commitment」は、長年の音楽キャリアのなかで“大人のR&B”を極めてきたモニカが、改めて自身の声と視点で世の中の女性たちに語りかけるような位置づけの曲である。現代の恋愛観を踏まえながら、彼女が抱く誠実な愛への願いを端的かつ明確に伝えるこの作品は、R&Bシーンにおける彼女の立ち位置を再確認させる強いメッセージとも言える。
3. 歌詞の抜粋と和訳
I just want someone to treat me like somebody
私も「誰か」じゃなく「大切な人」として扱ってほしいのI just want someone to keep it real with me
ただ、嘘のない関係がほしいだけLike, when I say I love you, I mean that
私が「愛してる」と言ったとき、それは本気で言ってるのAnd when I say I need you, I mean that
「必要」と言うときも、心からそう思ってるの‘Cause I just want someone to give me commitment
本気で向き合ってくれる人が欲しいの
引用元:Genius Lyrics – Monica / Commitment
4. 歌詞の考察
「Commitment」は、モニカのキャリアのなかでも最も“等身大の自分”を表現した楽曲かもしれない。彼女はかつて「Angel of Mine」や「The Boy Is Mine」で恋に傷つきながらも相手に尽くす姿を描いたが、本作では愛される価値を自覚し、自分の願いを正面から提示する姿がある。
「treat me like somebody」というフレーズは、一見シンプルでありながら、恋愛における多くの女性が抱える悩み――つまり「軽んじられている」「都合のいい存在にされている」という感覚――を鋭く突いている。これは単に「彼氏が欲しい」という話ではなく、愛に値する“人としての尊重”を求める切実な心の叫びなのである。
その一方で、この楽曲には怒りや悲しみの爆発ではなく、「静かな決意」が流れている。まるで、何度も裏切られた経験があるからこそ、もう誤魔化しのない関係以外は要らない――そんな決意を淡々と語るようなニュアンスが感じられるのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Needed Me” by Rihanna
関係における対等性と、強い自己主張を感じさせるアンセム。 - “Girl on Fire” by Alicia Keys
傷ついても自分の道を貫く強さを歌い上げた現代女性の讃歌。 - “Ex-Factor” by Lauryn Hill
曖昧な関係に対して真実を求める、感情の深さが際立つ一曲。 - “Truth Is” by Fantasia
正直であることの大切さと、それを受け止める心を描いたR&Bバラード。 - “BS” by Jhené Aiko feat. H.E.R.
自分を大切にする決意をクールに表現した女性のための応援歌。
6. 特筆すべき事項:モニカの“セルフ・リボーン”
「Commitment」は、単なるラブソングではなく、モニカが「アーティストとして再び自分自身に立ち戻った」ことを象徴する作品である。大手レーベルから離れ、自分の声と人生をよりリアルに映し出せる音楽へと歩みを進めた彼女にとって、この楽曲はセルフ・リボーン(自己再生)の始まりにあたる。
また、ミュージックビデオでは、モニカ自身が主演し、恋人を銃撃するという衝撃的な展開が描かれている。これは愛における裏切りと、そこから立ち直る女性の内面を象徴的に描いたものであり、彼女が単なる歌手ではなく、“語る者”であることを強く印象づけた。
この曲は、愛においても音楽においても、妥協しない姿勢を貫くモニカの現在地を象徴する。そして同時に、聴く者の心にも「私にも、誠実な愛を求める権利がある」とそっと語りかけてくれる。2020年代におけるR&Bの新たなスタンダードとも呼べるような、静かで確かな名曲である。
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