
1. 楽曲の概要
「There Goes Our Love Again」は、イングランド・ロンドン出身のロック・バンド、White Liesが2013年に発表した楽曲である。収録作品は、同年8月にリリースされた3作目のスタジオ・アルバム『Big TV』。アルバムでは2曲目に配置され、表題曲「Big TV」に続いて作品の物語的なスケールを一気にポップな形へ押し広げる役割を持つ。
シングルとしては2013年8月5日にリリースされた。作詞・作曲はWhite LiesのメンバーであるHarry McVeigh、Charles Cave、Jack Lawrence-Brown。プロデュースはEd Bullerが担当している。Bullerは、Suedeなどの作品でも知られるプロデューサーであり、英国オルタナティヴ・ロックのドラマ性と明快な音作りを結びつける手腕を持つ人物である。
White Liesは、2009年のデビュー・アルバム『To Lose My Life…』で注目を集めた。Joy Division、Echo & the Bunnymen、Interpol、Editorsなどと比較されることも多く、低音の効いたポストパンク的サウンド、悲劇的な歌詞、Harry McVeighの低く大きな声を特徴としていた。2011年の『Ritual』では、よりシンセと大きなプロダクションを導入し、2013年の『Big TV』ではさらに物語性とメロディアスなポップ性を強めた。
「There Goes Our Love Again」は、White Liesの重厚なイメージを保ちながらも、かなり開かれたコーラスを持つ曲である。暗さや悲壮感はあるが、サウンドは非常にキャッチーで、アリーナ・ロック的な広がりもある。White Liesが初期のゴシックなポストパンクから、より大きなスケールのロック・バンドへ移行していく過程をよく示す楽曲といえる。
2. 歌詞の概要
歌詞の主題は、壊れかけた愛と、そこから離れられない語り手の反復的な感情である。タイトルの「There Goes Our Love Again」は、「また僕らの愛が行ってしまう」「また僕らの愛が失われていく」といった意味に取れる。重要なのは、「again」という言葉である。この別れや失敗は初めてではない。何度も繰り返されてきた関係の崩れが、また起きている。
語り手は、自分の心に許しを求めるように歌う。そこには、相手を傷つけたのか、自分が傷ついたのか、はっきりしない曖昧さがある。愛が失われることを見ていながら、完全には手放せない。戻ってきた、遠くへは行かなかった、という反復的な言葉も、関係から離れようとして結局戻ってしまう心理を示している。
この曲の歌詞では、「home」という言葉が重要である。家は安心できる場所であるはずだが、ここでは「desperate end」と結びつく。つまり、帰る場所は救いであると同時に、行き詰まりでもある。愛の関係が、逃げ場にもなり、閉じ込める場所にもなっている。
歌詞全体は、明確な物語よりも感情の循環を描いている。離れる、戻る、許しを求める、また愛が失われる。この流れが何度も繰り返されることで、語り手が同じ場所から抜け出せないことが分かる。White Liesらしい、恋愛を個人的な感情だけでなく、運命的な閉塞として描く曲である。
3. 制作背景・時代背景
『Big TV』は、White Liesにとって3作目のアルバムであり、前作『Ritual』の重厚なシンセ・ロックを受け継ぎながら、より物語的な作品として作られた。アルバム全体には、ヨーロッパからアメリカへ渡る若いカップル、都市、移動、夢、失望といったイメージがある。タイトルの『Big TV』も、メディア、理想化された生活、遠くの世界への憧れを連想させる。
「There Goes Our Love Again」は、そのアルバムの中で最もシングル向きの曲のひとつである。アルバム冒頭の「Big TV」が広大でやや重い導入を作るのに対し、この曲はより短く、フックが強く、すぐに印象を残す。作品全体のテーマを保ちながら、ラジオ向けのポップ・ロックとして成立している。
2013年の英国ロック・シーンでは、2000年代後半のポストパンク・リバイバルの波は一段落していた。White Liesも、単に暗いギター・ロックを鳴らすだけではなく、より大きなプロダクション、シンセ、メロディアスなコーラスによって自分たちの音を拡張していた。「There Goes Our Love Again」は、その時期のWhite Liesが、初期の冷たさを保ちながら、より明快なポップ性へ進んだことを示している。
ミュージック・ビデオはJames Slaterが監督し、ロンドンのRivoli Ballroomで撮影された。仮面をつけたダンサーたちが登場する映像で、1960年代のボリウッド・スリラー映画『Gumnaam』へのオマージュともされる。曲の中にある反復する愛の失敗、舞踏会的な華やかさ、孤独な人物像が視覚的に補強されている。
4. 歌詞の抜粋と和訳
There goes our love again
和訳:
また僕らの愛が失われていく
この一節は、曲全体の核心である。愛が終わること自体よりも、それが「また」起きている点が重要である。語り手は失敗を初めて経験しているのではなく、同じ痛みを繰り返している。そこに、諦めと未練が同時にある。
I didn’t go far, and I came home
和訳:
僕は遠くへは行かなかった、そして家に帰ってきた
このフレーズは、関係から逃げようとしても完全には離れられない心理を示している。家に帰ることは安心にも見えるが、この曲では必ずしも救いではない。帰る場所があるからこそ、同じ関係の循環に戻ってしまう。
歌詞引用は批評・解説に必要な最小限に限定した。White Liesの歌詞は権利保護された著作物であり、全文ではなく短い抜粋のみを扱っている。
5. サウンドと歌詞の考察
「There Goes Our Love Again」のサウンドは、White Liesの中でも非常に明快なポップ・ロックとして作られている。イントロからビートははっきりしており、ギターとシンセが曲の輪郭を作る。低く暗い質感は残っているが、全体としては大きく開けた印象がある。
Harry McVeighのボーカルは、この曲でも重要な役割を持つ。彼の声は低く、よく響き、悲劇的な言葉を大きなスケールで伝える。White Liesの曲では、個人的な感情がしばしば過剰に大きく響くが、この曲でも、恋愛の失敗が日常的な出来事ではなく、運命的な反復のように聞こえる。
ベースとドラムは、曲に安定した推進力を与えている。Jack Lawrence-Brownのドラムは過度に複雑ではないが、サビへ向かう力を作る。Charles Caveのベースは、White Liesらしい低音の重みを保ちながら、曲を沈ませすぎない。リズム隊がしっかり前へ進むため、歌詞の停滞感と音楽の推進力が対比される。
シンセサイザーの使い方も大きい。初期のWhite Liesはポストパンク的なギター・バンドとして語られやすかったが、『Big TV』期にはシンセの光沢がより前に出ている。「There Goes Our Love Again」では、シンセが曲に80年代的な広がりを加え、暗い歌詞をアリーナ的なコーラスへ引き上げている。
サビは非常に強い。タイトル・フレーズが反復されることで、愛が失われる瞬間が何度も再演される。歌詞としては悲しい内容だが、メロディは開けており、聴き手は思わず一緒に歌える。この構造がWhite Liesらしい。暗い主題を、合唱できるロック・アンセムとして提示するのである。
歌詞とサウンドの関係を見ると、この曲は「戻ってしまう愛」を音楽的にも反復している。離れたはずなのに帰ってくる。終わったはずなのにまた始まる。サビも、ヴァースも、同じ感情へ戻っていく。曲が進んでいるようで、実際には同じ場所を回っているような感覚がある。
「To Lose My Life」と比較すると、「There Goes Our Love Again」はよりポップで、より明るい音像を持つ。「To Lose My Life」は死と愛を極端に結びつける初期White Liesらしい曲だった。一方、この曲は同じく恋愛を悲劇的に扱いながら、より洗練されたポップ・ロックとして鳴っている。
「Bigger Than Us」と比べると、共通点も多い。どちらも大きなサビを持ち、個人の感情を巨大なスケールへ拡大する曲である。ただし「There Goes Our Love Again」は、より軽快で、反復するフックの効果が強い。White Liesの暗さを保ちつつ、聴きやすさを高めた曲といえる。
アルバム『Big TV』の中では、この曲は物語的な重さを一度ポップな形へ変換する役割を持つ。表題曲の後に配置されることで、アルバムの広い世界観と、個人的な恋愛の崩壊が接続される。大きな画面に映る夢や未来と、実際の人間関係の不安定さ。その落差がこの曲に表れている。
6. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲
- Bigger Than Us by White Lies
2011年のアルバム『Ritual』を代表する楽曲で、大きなサビとシンセを含む重厚なサウンドが特徴である。「There Goes Our Love Again」の開けたアンセム性を好む人には特に聴きやすい。White Liesが初期の暗さからより大きな音へ進んだ流れを理解できる。
- To Lose My Life by White Lies
デビュー・アルバムの表題曲であり、White Liesのゴシックで悲劇的なイメージを決定づけた曲である。「There Goes Our Love Again」よりも冷たく、死と愛を極端に結びつけている。バンドの出発点を知るうえで重要である。
- First Time Caller by White Lies
『Big TV』収録曲で、「There Goes Our Love Again」と同じアルバムの物語性を共有している。よりミドルテンポで、メロディの切なさが前に出る。『Big TV』期のWhite Liesの成熟したポップ感覚を確認できる。
- Munich by Editors
2000年代英国ポストパンク・リバイバルを代表する曲である。低いボーカル、鋭いギター、暗い緊張感という点でWhite Liesと比較しやすい。「There Goes Our Love Again」よりも硬質だが、同じ系譜にある。
- Obstacle 1 by Interpol
White Liesのサウンドを語る際にしばしば比較されるInterpolの代表曲である。冷たいギター、重いベース、都会的な孤独感が特徴で、「There Goes Our Love Again」の背景にあるポストパンク的な美学を理解しやすい。
7. まとめ
「There Goes Our Love Again」は、White Liesの3作目『Big TV』に収録された、2013年の重要シングルである。初期の暗く重いポストパンク的な質感を保ちながら、よりキャッチーで開かれたポップ・ロックへ進んだバンドの姿を示している。
歌詞は、何度も失われる愛と、そこから離れきれない語り手を描く。「again」という言葉が示すように、これは一度きりの別れではない。遠くへ行かなかった、家に帰ってきた、また愛が失われる。そうした反復が、曲全体の感情を作っている。
サウンド面では、Harry McVeighの大きなボーカル、推進力のあるリズム、シンセの広がり、合唱しやすいサビが結びついている。White Liesはこの曲で、暗い恋愛の主題を重く沈ませるのではなく、アリーナ的なロック・アンセムへ変換した。「There Goes Our Love Again」は、White Liesのドラマ性とポップ性が最も分かりやすく接続された一曲である。
参照元
- Discogs – White Lies “There Goes Our Love Again”
- Discogs – White Lies “Big TV”
- MusicBrainz – Big TV by White Lies
- Dork – White Lies “There Goes Our Love Again” Lyrics
- Dork – White Lies “There Goes Our Love Again” Track Profile
- IMDb – White Lies: There Goes Our Love Again
- Spotify – There Goes Our Love Again by White Lies
- YouTube – White Lies “There Goes Our Love Again”

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