発売日: 2024年5月17日
ジャンル: オルタナティブロック、ポップロック、アメリカンロック、アリーナロック
概要
『Here to Eternity』は、Collective Soulが2024年にリリースする予定の12作目のスタジオ・アルバムであり、30年以上にわたるキャリアの集大成でありながら、新たな“永遠への序章”として機能する、極めて前向きな意志に満ちた作品である。
本作は、2022年の『Vibrating』に続く流れで制作され、パンデミックを経て活動再開したバンドが、その熱量と希望、そして変わらない誠実さを音楽として再提示したものとなっている。
アルバムタイトル『Here to Eternity』は、“この瞬間から永遠へ”という時間的スケールを帯びたフレーズであり、バンドの現在地と未来志向の両方を象徴する詩的な表現でもある。
オルタナティブロックの枠をベースにしつつ、メロディアスなポップセンス、骨太のギターリフ、そしてエド・ローランドの信念に満ちたリリックが再び強い存在感を示している。
全曲レビュー
1. Mother’s Love
穏やかで荘厳な雰囲気から始まるオープニング。
“母の愛”という普遍的なテーマを扱いながらも、特定の関係性にとどまらず、“世界を育むもの”としての象徴性を帯びた美しいバラード。
2. Hey Man
本作の中でもっともアグレッシブなロックチューン。
ストレートなギターとエネルギッシュなシャウトが交錯し、“おい、目を覚ませ”というメッセージが痛快に響く。
3. Kick It
ファンキーなベースと軽快なビートが印象的なナンバー。
“やってやろうぜ(Kick It)”という合言葉のようなリフレインが、ライブでも盛り上がること必至のアンセミック・トラック。
4. Not the Same
恋愛や友情を経て“もう同じじゃいられない”と気づく瞬間を描いたミッドテンポのロック。
サビでの展開がドラマチックで、心の成長と喪失感の両方が響く。
5. Bob Dylan (Where Are You Today)
タイトルからして印象的なこの楽曲は、“時代を歌う声”が見えにくくなった現代への問いかけ。
実際のディランへのトリビュートでありつつ、真理を求める姿勢を現代に問い直す内容となっている。
6. Therapy
軽快なアコースティック・ギターが主導するナンバー。
“音楽そのものがセラピーである”というCollective Soulの基本哲学が、穏やかでユーモラスに表現される。
7. Who Loves
“誰が本当に愛してくれるのか?”という問いを投げかける、内省的で静謐なバラード。
メロディの美しさが際立ち、バンド後期の叙情的側面を象徴する一曲。
8. Look Around
“立ち止まって、周りを見てごらん”というメッセージが込められたポップ・ロック。
ポジティブな詞と、スウィング感あるビートで、日常の美しさに目を向けさせる楽曲。
9. Words Away
失われた言葉、届かなかった想いをテーマにしたセンチメンタルな楽曲。
ギターの音がまるで残響のように響き、記憶と感情の断片が音になったような詩的世界。
10. La Dee Da
タイトルからは想像できない、人生の軽やかな諦観をテーマにした遊び心満載のナンバー。
サウンドはビートルズ的なサイケデリック・ポップの趣もあり、実験的で耳に残る。
11. Therapy (Reprise)
アルバム後半で再登場する“Therapy”の短い再構成版。
インストゥルメンタルに近く、全体を一度クールダウンさせる役割を果たす。
12. Here to Eternity
タイトル曲にして、本作の精神的コアを担う壮大なロック・バラード。
“ここ”から“永遠”へと続く旅路を、力強く、そして静かに祝福するような結びの一曲。
人生と音楽に対する深い感謝と希望が、メロディとともに響く。

総評
『Here to Eternity』は、Collective Soulが“続けること”の美学を、あらためて言葉と音で刻み込んだ作品である。
そこには若さの衝動もある。
だがそれ以上に、“経験を通して得た優しさと強さ”が、アルバム全体を包み込んでいる。
キャリアの後半戦に差しかかりながら、決して惰性ではなく、“今この瞬間を鳴らすこと”にこだわり抜くロックバンドの矜持が、ここにはある。
未来が不確かな時代において、「ここから永遠へ」という視線を持つこと自体が、音楽的にも精神的にも、強いメッセージとなっている。
おすすめアルバム
- Goo Goo Dolls / Chaos in Bloom
大人のロックバンドとしての成熟と希望が共鳴。 - Train / AM Gold
ノスタルジアとポップセンスのバランス感が近似。 - Lifehouse / Out of the Wasteland
自己回復と愛をテーマにした、叙情的オルタナティブロック。 - Barenaked Ladies / Detour de Force
ユーモアと人生観の融合が共通するリラックスした作品。 - Switchfoot / Interrobang
時代への問いかけと音楽への信頼が同時に鳴る作品。
歌詞の深読みと文化的背景
『Here to Eternity』のリリックには、時間、愛、信仰、喪失、再生といった人生の普遍的テーマが、過剰な装飾なく“今の言葉”で語られている。
そこには、成熟したロックバンドにしか到達しえない“語り方の自由”と“受け入れの広さ”がある。
特にタイトル曲「Here to Eternity」は、“この瞬間を信じること”が永遠に繋がるという逆説的な真理を、非常に柔らかく、しかし力強く提示している。
Collective Soulはここで、人生のあらゆる位相を“音”に変えて、リスナーにそっと手渡しているのだ。
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