発売日: 1998年4月20日
ジャンル: トリップホップ / エクスペリメンタル・ロック / ダブ
Massive Attackの3rdアルバムMezzanineは、トリップホップの枠を超え、ダークでヘヴィなサウンドスケープを展開した彼らの代表作である。このアルバムは、エレクトロニカ、ダブ、ポストパンク、ゴシックロックといった多様な要素を融合し、圧倒的な没入感を伴う音楽体験を生み出している。前作Protectionまでのソウルフルなトーンから一転し、陰鬱で不穏なムードが全編にわたって支配的だ。
プロダクションの中心には、Robert “3D” Del Naja、Grant “Daddy G” Marshall、Andrew “Mushroom” Vowlesが携わり、ゲストボーカルにはElizabeth Fraser(Cocteau Twins)やHorace Andyが参加。特に、Elizabeth Fraserの幽玄な歌声が楽曲にミステリアスな魅力を与えている。以下に、全11曲を詳しく解説する。
1. Angel
アルバムの幕開けを飾る圧倒的な一曲。Horace Andyの独特のボーカルが、不穏なベースラインと絡み合い、緊張感を生み出している。曲全体が徐々に盛り上がり、最後には爆発的なカタルシスを迎える構成が秀逸。
2. Risingson
ダブとヒップホップを融合させたトラックで、3DとDaddy Gのラップが中心となる。低音の効いたベースラインと不協和音のギターが、アルバム全体のダークなトーンを設定している。
3. Teardrop
Elizabeth Fraserがボーカルを務める、アルバムの中でも最も有名な楽曲。ピアノのシンプルなリフと彼女の浮遊感のある歌声が美しく絡み合い、生命や愛の儚さを象徴している。ドラマ「Dr. House」のテーマ曲としても知られる。
4. Inertia Creeps
中東音楽の要素を取り入れたトラックで、反復的なリズムが催眠的な効果を生む。歌詞には不安や自己崩壊といったテーマが込められており、ムード全体を引き締める役割を果たしている。
5. Exchange
ジャズとダブが融合したインストゥルメンタルに近い楽曲。柔らかいメロディラインが、アルバム全体の中で一瞬の安らぎを提供している。
6. Dissolved Girl
ギターリフが前面に出たロック色の強い一曲。女性ボーカルが攻撃的なサウンドと調和し、アルバムの中で異色の存在感を放っている。
7. Man Next Door
Horace Andyによるレゲエの名曲をダークにアレンジしたカバー。重厚なビートとアンビエント的なエフェクトが楽曲に陰鬱な雰囲気を与え、原曲とは全く異なる印象を生み出している。
8. Black Milk
Elizabeth Fraserが再びボーカルを務める、ミステリアスで幻想的なトラック。ダウナーなビートと浮遊感のあるメロディが、聴き手を深い夢の中へ誘う。
9. Mezzanine
タイトル曲で、アルバムの中核を成す一曲。ギターとベースが絡み合い、漆黒のムードを形成している。反復的なリフと緊張感のある展開が圧巻。
10. Group Four
10分近い大作で、Elizabeth Fraserと3Dのボーカルが交錯する。ゆっくりと高まる緊張感が特徴で、アルバム全体のクライマックスを形成している。
11. (Exchange)
「Exchange」のリプライズ版で、Horace Andyのボーカルが加わることで、アルバムの幕を穏やかに閉じる役割を果たしている。
アルバム総評
Mezzanineは、Massive Attackのキャリアの中で最もダークで挑戦的な作品であり、トリップホップの枠を超えた革新的なアルバムだ。その重厚なベースライン、不安を煽るギターリフ、そしてミステリアスなボーカルが融合し、圧倒的な世界観を構築している。リスナーを深い没入感へと引き込み、聴き終えた後にも長く余韻を残す。現代の音楽シーンにも影響を与え続けるこの作品は、トリップホップを語る上で欠かせないマスターピースである。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Dummy by Portishead
トリップホップの代表作。ダークで感情的なトーンがMezzanineと共通する。
Blue Lines by Massive Attack
デビューアルバムで、よりソウルフルなトリップホップの原点を感じられる。
Maxinquaye by Tricky
Massive Attackの元メンバーによるソロ作で、実験的かつダークなトーンが特徴。
Spirit of Eden by Talk Talk
アンビエントとロックが融合した作品で、深い没入感が共通している。
Endtroducing….. by DJ Shadow
サンプリングを駆使したインストゥルメンタルアルバム。陰鬱なムードと圧倒的なサウンドスケープが似ている。
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