発売日: 1991年4月8日
ジャンル: トリップホップ / ダブ / エレクトロニカ
Massive AttackのデビューアルバムBlue Linesは、トリップホップというジャンルの先駆けとなり、音楽史に残る名盤としてその地位を確立している。本作は、ブリストルを拠点とする音楽コレクティブがヒップホップ、ダブ、ソウル、ジャズ、レゲエといった多様な音楽的要素を融合させ、新しいサウンドを生み出した作品だ。
このアルバムの中心には、Robert “3D” Del Naja、Grant “Daddy G” Marshall、Andrew “Mushroom” Vowlesの3人が立ち、ゲストボーカリストとしてShara Nelsonや、レゲエシンガーのHorace Andyが参加。特にShara Nelsonのエモーショナルな歌声は、アルバム全体のトーンを象徴する要素となっている。重厚なビートとミニマルなアレンジの中で、深い感情と洗練されたサウンドスケープが展開されている。以下に、全9曲の詳細を解説する。
1. Safe from Harm
アルバムの幕開けを飾る楽曲で、Shara Nelsonのソウルフルなボーカルが印象的。「Midnight Cowboy」のテーマ曲をサンプリングしたメロディが特徴で、不穏でありながらも安心感を感じさせるトラック。歌詞には、個人の安全と信頼がテーマとして描かれている。
2. One Love
Horace Andyの柔らかいレゲエ調のボーカルが楽曲を支配する一曲。ダブの影響を強く感じさせるリズムとベースラインが印象的で、アルバム全体のダイナミクスを拡張している。
3. Blue Lines
アルバムタイトル曲で、ヒップホップ的なビートとトリップホップの原型ともいえるグルーヴが融合。ラップを主体とした楽曲であり、Massive Attackの都会的で洗練されたサウンドを象徴する。
4. Be Thankful for What You’ve Got
William DeVaughnのソウルクラシックをカバーした楽曲。原曲の持つ温かさをそのまま残しながらも、よりダブ的な要素が加えられており、リズムとボーカルが独特の浮遊感を生み出している。
5. Five Man Army
レゲエとヒップホップが見事に融合したトラック。ダブ的なベースラインと反復的なリズムの上に、複数のボーカリストが絡み合う構成が斬新で、Massive Attackの実験精神を感じさせる。
6. Unfinished Sympathy
アルバムの中でも特に有名な楽曲で、トリップホップの代表曲として広く知られる。Shara Nelsonの圧倒的なボーカルと、美しいストリングスアレンジが際立つ。愛と喪失をテーマにした歌詞がエモーショナルな深みを与え、クラシックのような格調高さを持つ。
7. Daydreaming
スモーキーな雰囲気を持つ一曲で、ダブとヒップホップの影響が色濃い。低音の効いたビートと夢見心地なサウンドスケープが、リスナーを幻想的な世界へと誘う。
8. Lately
ゆったりとしたテンポとメロウな雰囲気が特徴的なトラック。Shara Nelsonのボーカルが再び際立ち、歌詞には愛と孤独がテーマとして描かれている。ジャズやソウルの影響も感じられる。
9. Hymn of the Big Wheel
アルバムを締めくくる壮大なトラックで、Horace Andyのボーカルが再び登場。宗教的でスピリチュアルなテーマが込められた歌詞が印象的で、楽曲全体が静謐な余韻を残す。
アルバム総評
Blue Linesは、トリップホップというジャンルを定義づけたアルバムであり、ヒップホップやダブといった異なる音楽スタイルを巧みに融合させた先駆的な作品だ。Massive Attackの特徴である重厚なビート、ソウルフルなボーカル、多層的なサウンドスケープは、リスナーに深い感情体験を提供する。本作が音楽シーンに与えた影響は計り知れず、現代のエレクトロニカやポップスにもその影響を見て取ることができる。トリップホップの歴史を語る上で、欠かすことのできない金字塔的な一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Protection by Massive Attack
2ndアルバムで、より洗練されたサウンドとドラマチックな楽曲が特徴。Blue Linesの進化形を楽しめる。
Dummy by Portishead
同じブリストルを拠点とするバンドのデビュー作。トリップホップを代表するアルバムで、ダークな雰囲気が共通点。
Mezzanine by Massive Attack
Massive Attackの3rdアルバムで、よりヘヴィでダークなサウンドが展開されている。
Maxinquaye by Tricky
Massive Attackの元メンバーであるTrickyのデビューアルバム。より実験的なトリップホップが楽しめる。
Endtroducing….. by DJ Shadow
サンプリングを駆使したインストゥルメンタルアルバムで、トリップホップ的なムードとリズムが堪能できる。
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