アルバムレビュー:Around the Sun by R.E.M.

AD
※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 2004年10月5日
ジャンル: オルタナティヴロック、アートポップ、アダルトコンテンポラリー


AD

概要

『Around the Sun』は、R.E.M.が2004年にリリースした13作目のスタジオ・アルバムであり、**バンドの成熟と疲弊、そして政治的憤りが静かに共鳴した“停滞と葛藤の記録”**である。

前作『Reveal』で色彩と希望を取り戻したかに見えたR.E.M.は、2000年代初頭の世界情勢──特にアメリカの対外政策や内政の分断に直面し、
本作では再び**“社会的・個人的危機”の影の中へと歩を進めていく**。
その結果生まれた本作は、静かで内省的、そして慎重すぎるほど慎重なトーンで統一されている。

スタジオ録音は長期にわたって行われ、プロデュースはパット・マッカーシー。
リズムには打ち込みが多用され、テンポは全体的にスロー〜ミディアム中心。
メロディやアレンジは精緻である一方で、バンド本来のダイナミズムや即興性は抑えられており、
**「音楽は正しくあろうとしているが、心はどこか遠くにある」**という印象を残す。

R.E.M.自身も後年に本作を“やや重苦しく、感情が遠い”と振り返っているが、
その静かな憂鬱と誠実さが、当時の空気──“戦争と無関心の時代”を的確に映し出していたことも確かである。


AD

全曲レビュー

1. Leaving New York

ピアノとギターの交錯が美しいオープニングバラード。
9.11以降のニューヨークを“離れる”ことへの喪失と祈りを織り込んだ名曲。
「It’s easier to leave than to be left behind」という一節に、R.E.M.の成熟した優しさと痛みが滲む。

2. Electron Blue

打ち込みを主体にしたミディアムテンポのエレクトロポップ。
青白く光る電子的世界の中で、“心を失っていく感覚”がテーマとなる。
本作の象徴的な人工的感触を代表する一曲。

3. The Outsiders(feat. Q-Tip)

ヒップホップグループA Tribe Called QuestのQ-Tipをフィーチャーした異色トラック。
スタイプのモノローグ的歌唱とQ-Tipの語りが交錯する、ジャンル越境と内省が重なった政治的語り

4. Make It All Okay

“本当に許せるか?”という疑問を投げかける切ないラブソング。
過去作『Up』の延長にあるような繊細な音像で、“人を赦す”ことの複雑さを歌う。

5. Final Straw

ブッシュ政権下の政治状況に対する明確な抗議の歌。
2003年に先行公開されており、「これが限界だ」と繰り返すコーラスに、スタイプの怒りと諦念が共存する。

6. I Wanted to Be Wrong

ストリングスとアコースティックギターを基調とした、悲しみに満ちたバラード。
「間違っていたかった」と繰り返す歌詞に、正義が正しく響かない世界への苦悩が滲む。

7. Wanderlust

アルバム中唯一と言えるアップテンポの楽曲で、“さまよいたい衝動”を軽やかに表現。
とはいえ、サウンドにはどこか抑圧感があり、**解放というより“形だけの逃避”**に近い印象もある。

8. Boy in the Well

寓話的な語りと、静かに高まるバッキングが印象的。
“井戸の中の少年”は孤立、失語、あるいは時代に置き去りにされた存在の象徴ともとれる。

9. Aftermath

ビートルズ的なメロディラインをもつポップソング。
「すべてが終わった後でも、僕たちはまだ立っている」というテーマが、控えめながら芯の強さを見せる。

10. High Speed Train

打ち込みによるリズムとサウンドスケープが印象的なミニマル・ポップ。
速さに置いていかれるような感覚と、情緒の追いつかなさが同居している。

11. The Worst Joke Ever

“最悪の冗談”というタイトル通り、冷めたユーモアと自己諷刺が漂う。
滑稽と痛みの境界を行き来するような、ポスト9.11時代の心象風景を写し取る曲。

12. The Ascent of Man

不安定なリズムと奇妙なコーラスワークで展開される、ややサイケなロックチューン。
“人類の登頂”というタイトルは皮肉であり、進化とは何かを問う寓話でもある。

13. Around the Sun

アルバムのタイトル曲にして、極めて静かなクロージング。
地球の周りを回る太陽のように、物事は進んでいる──だが、それを“感じない”者もいる。
無感覚と連続性をめぐる、現代的な祈りのようなバラード


総評

『Around the Sun』は、R.E.M.が“語ること”の困難に直面しながら、それでも声を失わないために選び取った最も静かな形式である。

その音は控えめで、歌詞はほの暗く、構成には慎重すぎるほどのバランス感覚がある。
そのため、リスナーによっては“熱量の低下”や“曖昧さ”と受け取られることもあるだろう。

だが、2004年という時代──イラク戦争、メディアの情報飽和、ポスト9.11的疲弊──のなかで、
“簡単に叫ばず、確かに語る”という態度を保とうとしたこのアルバムの誠実さは、
当時も、そして今も、大きな意味を持っている。

“世界が回っていくその中で、自分の声がどこまで届くのか”という問いに対し、
R.E.M.はここで「それでも歌う」と答えたのである。


おすすめアルバム(5枚)

  • Peter Gabriel / Up
     ポリティカルかつ内省的なトーン、重厚なプロダクションが本作と通じる。

  • Radiohead / Hail to the Thief
     同時期に制作された“戦争と政治の時代の憂鬱な応答”。音の肌理も共振。

  • Wilco / A Ghost Is Born
     沈黙、音の断片、抑制された怒り。精神の疲弊と再構築の記録。

  • Elvis Costello / North
     極めて静かで内向的な作品。感情と抑制のせめぎ合いという意味で通じる。

  • Nick Cave & The Bad Seeds / No More Shall We Part
     喪失と信仰、愛と絶望の音楽的黙想録。抑制された表現に宿る深さが共通する。

ビジュアルとアートワーク

アルバムジャケットは、砂丘に立つ一本のヤシの木を遠くから捉えたような、孤立と持続を象徴する風景で構成されている。
それは、乾いた空間の中で何かが立ち尽くしているという印象を与える。

『Around the Sun』とは、“世界は動き続けているが、自分の感情は動いていない”という感覚を映し出す静止した惑星の音楽であり、
その“動きのなさ”にこそ、当時の時代精神が映っていたのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました