アルバムレビュー:Room to Roam by The Waterboys

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 1990年10月2日
ジャンル: ケルト・ロック、フォークロック、アコースティック・ポップ、ルーツ・ミュージック


『Room to Roam』は、The Waterboysが1990年に発表した5作目のスタジオ・アルバムであり、
前作『Fisherman’s Blues』で確立されたアイリッシュ・トラッドとロックの融合路線をさらに深化・拡張した、“ケルト期”の到達点的作品である。
本作では、より牧歌的で軽やか、そして共同体的な音楽作法=「みんなで歌い、奏でる音楽」への志向が強まり、
The Waterboysは一時的に詩的な大河ロックバンドから“村の楽団”へとその姿を変貌させた

マイク・スコット率いるバンドは、スコットランド・スペイサイド地方の田舎町スティンバリーに拠点を移し、
“遊びと日常”が自然に混ざるかのような録音環境で本作を制作。
その結果生まれたサウンドは、まるで風の通る部屋のように自由で親密で、ちょっとした魔法のような温もりを湛えている。


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全曲レビュー

1. In Search of a Rose
ケルトのダンス音楽をベースにしたインストゥルメンタル。
ローズ(薔薇)を探し続ける旅路の始まりを予感させる、軽快で愛らしい幕開け。

2. Song from the End of the World
シリアスなメロディと詩的な詞が交差するフォーク・バラード。
“世界の終わりからの歌”というタイトルに反して、生命の継続と希望がほのかに滲む。

3. A Man Is in Love / Kaliope House
前半はマイク・スコットが穏やかに恋を語る短い曲、
後半はフィドルとアコーディオンによるトラッド・インスト曲。
切り替えの鮮やかさが、日常と幻想の境界を曖昧にする。

4. Bigger Picture
ロック的ビートとトラッドの旋律が交錯する、本作中最も躍動感のあるナンバー。
“もっと大きな絵を見るべきだ”という言葉に、個を超えた視点への願いが込められている。

5. Natural Bridge Blues
ブルース調の語りにアイルランド的リズムが組み合わされたユニークなトラック。
地名を冠したこの曲は、旅と風景の記憶を結びつける“地理的ポエジー”である。

6. Something That Is Gone
スコットの内省的モノローグが印象的な短い小品。
かつての何かを失った者の静かな祈りが込められている。

7. The Star and the Sea
夢の中で交差する象徴たち──星と海。
The Waterboysらしいメタファーに満ちたスローナンバーで、
本作における“静けさの中心”ともいえる一曲。

8. A Life of Sundays
アルバムのハイライトであり、祝祭的ロックとアイリッシュ・セッションが合体した楽曲。
“毎日が日曜日のような人生”という言葉は、怠惰でなく、むしろ精神的自由の象徴として鳴り響く。

9. Islandman
海と孤島を背景にしたイマジナリーなフォーク・ストーリーテリング。
マイク・スコットのナレーション的歌唱が、遠い昔の記憶を語る吟遊詩人のように響く。

10. The Raggle Taggle Gypsy
スコットランドの伝承バラッドのカバー。
貴族の娘がジプシーと駆け落ちするという物語は、自由への憧れと階級の超越を描く定番モチーフ。
アコースティック楽器群による生演奏の迫力が圧巻。

11. How Long Will I Love You?
後にEllie Gouldingがカバーし大ヒットとなる、普遍的愛の歌
シンプルで飾らないメロディと“永遠の問い”が結びつき、
スコットの優しい歌声が永遠性と日常のあいだを漂う。

12. Upon the Wind and Waves
風と波に語りかけるような、印象派的ミニアチュール。
抽象と音の身体性が融合した瞑想的な短編。

13. Spring Comes to Spiddal
録音地であるスピダルの春を描いたインストゥルメンタル。
笛と弦が花咲く大地の匂いを運んでくる、クロージングにふさわしい優雅さ。


総評

『Room to Roam』は、The Waterboysが目指した**“音楽のある日常”**を最も穏やかで自然な形で体現した作品である。
それは、前作『Fisherman’s Blues』にあった壮大な旅情や探求心が、
やがて生活と音楽の一致へとたどり着いたような、“音楽が呼吸になる瞬間”の記録なのだ。

華やかさやカリスマ性ではなく、会話のような音楽、台所の歌、村の演奏会、風に乗る笛
この作品には、そうした身近さのなかに潜む真の詩情と霊性が宿っている。
その素朴さゆえに過小評価された時期もあったが、
今や本作はThe Waterboysのケルト期の最終地点にして、もっとも温かなアルバムとして再評価されている。


おすすめアルバム

  • Kate Rusby / Sleepless
     日常と民俗性を自然に溶け込ませた英国フォークの逸品。
  • Fairground Attraction / The First of a Million Kisses
     素朴なポップとフォークが共鳴する牧歌的作品。
  • Nick Drake / Bryter Layter
     都会の静けさと田園的優しさが交錯する詩的フォーク。
  • Billy Bragg & Wilco / Mermaid Avenue
     歌と共同体の再発見をテーマにしたルーツ・プロジェクト。
  • James Yorkston / Moving Up Country
     スコットランドの風景と詩が一体化した静かなフォーク・モダン。

特筆すべき事項

  • 本作のタイトルはジョージ・マクドナルドの児童文学『Phantastes(幻想の物語)』に由来し、
     **想像力と自由の広がりを象徴する言葉“Room to Roam(彷徨う余白)”**としてスコット自身が引用した。
  • 『Room to Roam』をもって、ヴァイオリニストのスティーヴ・ウィッカムが一時的に脱退
     これにより、ケルト期のThe Waterboysは一区切りを迎えることになる。
  • マイク・スコットは後年、「本作がThe Waterboysとして最もバンドらしかったアルバム」と回想しており、
     それは**彼の理想とする音楽的民主主義=“音楽は集団で作るもの”**という思想の結実でもあった。

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