アルバムレビュー:Ain’t Love Grand! by X

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日: 1985年9月**
ジャンル: ハードロック、ポップ・ロック、パンク・ロック、アメリカーナ


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概要

『Ain’t Love Grand!』は、ロサンゼルスのパンクバンドXが1985年にリリースした5作目のスタジオ・アルバムであり、
**彼らが初めてメジャー指向を明確に打ち出した、音的にも感情的にも“賛否分かれる作品”**である。
プロデューサーにはMichael Wagener(Dokken、Metallicaらを手がけたドイツ出身のエンジニア)を起用し、
従来のローファイで荒削りな音像から一転、より整理された、硬質なハードロック的プロダクションへと変貌を遂げた。

バンド内ではこの変化が内外に緊張をもたらし、
初期Xが持っていた詩的でラフな魅力を失ったという批判と、洗練された演奏力の進化を評価する声が交錯した
本作は、80年代中盤における“パンクからオルタナ、ハードロックへの移行”という大きな流れの中で、
Xがその狭間で**“鳴らしたくなかった音”と“鳴らさざるを得なかった音”のせめぎ合い**を記録した貴重なアルバムとも言える。


全曲レビュー

1. Burning House of Love
シングルカットされた代表曲。
エクシーンとジョン・ドウのツインボーカルは健在だが、
ギターサウンドはより分厚く、“ラジオ対応”されたことが明確に感じられる
とはいえ歌詞は依然として「燃えさかる愛の家」という暴力的で比喩的な失恋描写

2. Love Shack
B-52’sとは無関係。
無骨なギターリフとコーラスがリードする、ややコミカルなロックンロール。
愛の隠れ家が、感情の牢獄へと変わるイメージが歌詞に込められる。

3. My Soul Cries Your Name
情念に満ちたジョン・ドウのボーカルと、
ブルージーで重たいアンサンブルが特徴的なミッドテンポナンバー
タイトルがすでに泣いている。

4. My Goodness
軽快なリズムと“恋の苦悩”が裏腹に響く。
ギターはパワーポップ寄りで、The Knack的な80年代流行の香りもある。
Xらしさが後退した一曲でもある。

5. Around My Heart
“心を取り囲むもの”というタイトルの通り、
愛情の拘束と依存を描く内省的な一曲。
エクシーンの詩的世界観が比較的保たれている点で異彩を放つ。

6. What’s Wrong with Me…
X流セルフネガティブ・アンセム。
“私のどこがいけないの?”という問いが、
ラフなパンクではなく、整理されたハードロックとして提示されることに賛否が分かれた

7. All or Nothing
クラシックなロックンロールの形式を借りた、白黒つけたがる恋愛観への批評
“全部かゼロか”という極端な選択が、実は何も言っていないという虚しさがにじむ。

8. Watch the Sun Go Down
アルバム中最もロマンチックでスローな楽曲。
しかしその“日が沈む”イメージは、関係の終わりと感情の終息をも暗示する。
Xのバラードの中でも異質な静けさを持つ。

9. I’ll Stand Up for You
タイトルだけを見ると感動的な応援ソングのようだが、
歌詞のトーンはもっと複雑で、“誰かのために立ち上がることの痛み”を歌った内容
ギターのフックが際立つ。

10. Little Honey
本作の隠れた佳曲。
カントリーのルーツを感じさせるリズムとメロディに、
Xらしい素朴で乱暴な愛情表現が息づいている。

11. Supercharged
アルバムを締めくくるロックンロール・アンセム。
タイトル通り“過剰にチャージされた”ような演奏とボーカルで、
自己過信と崩壊寸前のエネルギーが同時に鳴っている


総評

『Ain’t Love Grand!』は、Xにとってもっとも「自分たちらしくない」と評された作品であると同時に、
彼らがその時代とどう向き合い、音楽的に模索し、メジャー・シーンとの“衝突”を記録したアルバムでもある。

80年代中盤、ハードロック/パワーポップ/MTV世代が求める“整った音像”と、
Xが持っていた詩的で崩壊寸前のパンク・スピリットは、
このアルバムの中で不完全ながら同居している。
その違和感は当時、批判も招いたが、
それこそがこの時期のXの“本当のリアル”だったのではないか。

結果的に本作は、バンドの純粋な転換点というより、
次なる衝動=カウパンク、オルタナ・カントリーへの足がかりとして再評価されている。


おすすめアルバム

  • Rank and File / Sundown
     パンク上がりのカントリーロック。Xの進化系との共振点が多い。

  • Lone Justice / Lone Justice
     LA発、ルーツロックとポップを結ぶ女性ボーカルバンド。

  • The Blasters / Non Fiction
     Xとも親しいLAルーツロックシーンの代表格。

  • Social Distortion / Prison Bound
     のちの“ロックンロール・パンク”への橋渡しとなる音像。

  • The Replacements / Tim
     パンクバンドが“音の整合性”と“感情の純度”の間で揺れる名盤。


特筆すべき事項

  • このアルバム以降、XはプロデューサーRay Manzarekの元を離れ、
     “外から見たX”ではなく、“中から鳴るX”を再発見する方向へと向かっていく

  • 本作は当時のMTVやラジオでの露出も狙った音像だったが、
     結果的には**“誰の耳にも届かない中間地帯”に取り残された**とも言われる。

  • だが、そうした境界的な作品こそ、**時代の狭間でしか生まれ得なかった“音のドキュメント”**とも言えるのだ。

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