アルバムレビュー:2013 by Current Joys

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

cover

発売日: 2015年1月2日(Bandcampにて)
ジャンル: ローファイ、インディーロック、ベッドルーム・ポップ、サッドコア


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概要

『2013』は、ネバダ州リノ出身の音楽家ニック・ラスプーリによるソロプロジェクト、Current Joysの2作目のフルアルバムである。
前作『Wild Heart』の延長線上にありながらも、より断片的で私的、そして執着的な“記録”としての性格が強まった作品である。

タイトルが示すように、このアルバムは彼が実際に体験した2013年という一年間の感情の軌跡をそのまま残したものだ。
各トラックは完成された楽曲というよりも、未整理な感情のスナップショットであり、
まるでノートに書き殴った日記のようなラフさと生々しさに満ちている。

録音はすべて宅録で、音質は極めてローファイ。
マイクのノイズやギターのブレ、ボーカルの震えさえもそのまま残されており、
それらは単なる“欠陥”ではなく、痛みの真実性を証明する“証拠音”として機能している

Current Joysにとって『2013』は、
“完成度”よりも“記憶と感情の保存”を優先した、もっともパーソナルな音のアーカイブであり、
後の作品群に繋がるモチーフや詩的語彙もすでに散りばめられている。


全曲レビュー(抜粋)

※アルバムは15曲収録だが、特に印象的なトラックを抜粋して紹介。

1. My Sleep Is Summer

アルバムの幕開けにふさわしい、夢と現実の境界をさまようようなトラック
タイトルの“私の眠りは夏”という詩的表現には、休息=季節=失われた感情というテーマが凝縮されている。

3. You Weren’t There Anymore

幽玄なギターのアルペジオと、ほとんどささやき声に近いボーカル。
“不在”という痛みが、静かすぎるほどの静けさで描かれる。
孤独の核心を突くような名小品。

5. Televisions

後のCurrent Joysを象徴する楽曲のひとつ。
無機質な“テレビ”というモチーフは、感情の中継・不在・代替行為として機能している。
不安定なボーカルが逆に感情のリアリティを増幅させる。

6. 2013

表題曲にしてアルバムの中核。
ひたすら繰り返されるコードとフレーズの中に、年単位で抱えた感情の堆積と消耗が凝縮されている。
タイトルをそのまま楽曲名にすることで、個人の歴史が音楽に昇華された記録であることが明示されている。

9. Because of You

シンプルなギターとエコーのかかったボーカルで紡がれるラブソング。
「君のせいでこうなった」という感情の矛先が、恨みとも恋ともつかないグレーなニュアンスを持つ。

13. Little Lies (Reprise)

前作『Wild Heart』収録の“Little Lies”の再演。
構成は大きく変えず、むしろ演奏の荒さとボーカルの不安定さが増した印象。
同じ曲を“別の心で”歌うことで、時間と記憶の変質性が表現されている。


総評

『2013』は、音楽作品というより“一冊の感情ノート”に近い
アルバムとしての整合性よりも、各トラックの内在する痛みや揺らぎ、あるいは無力さがむき出しになっており、
その“整っていないこと”こそが、本作の核的魅力である。

ニック・ラスプーリの音楽は、このアルバムで個人的な混乱、失恋、過去への執着、自己逃避など、
人が“うまく語れないもの”を音にしていく術を確立したともいえる。

『2013』はまさに、**未成熟のまま保存された“情動のアーカイブ”**であり、
同時に、ローファイ・インディの美学がいかにして“声にならないもの”を語りうるかの証明でもある。


おすすめアルバム(5枚)

  1. Teen Suicide – I Will Be My Own Hell Because There Is a Devil Inside My Body (2012)
     ローファイとエモの極北。過剰で過敏な心をそのまま音にしたような共鳴作。

  2. Mount Eerie – A Crow Looked at Me (2017)
     個人の記録としての音楽。死と愛と記憶を静かに、しかし深く描く。

  3. Alex G – Trick (2012)
     断片的で実験的ながら、強い感情を持つローファイ作品。感覚的な文脈が似る。

  4. Elvis Depressedly – Holo Pleasures (2013)
     夢と現実の間で鳴る、淡いサッドポップ。Current Joysと通じる退廃的な美。

  5. Daniel Johnston – 1990 (1990)
     “生”と“創作”が限りなく接近した記録。DIY精神と感情のむき出しが重なる。

歌詞の深読みと文化的背景

『2013』における歌詞は、自己内省の断片として書かれている
その多くが“I”を主語に持ち、記憶の反芻、孤独な夜の風景、無言の喪失感などを繰り返し語る。

タイトルが年号であることが示すように、本作は**“時間”そのものへの執着が強く、
一曲ごとの内容が具体的であるにも関わらず、全体では
過ぎ去った一年の感情のドキュメント**として統一されている。

また、この作品はZ世代以降の**セルフブランディング以前の“生の自己”**を記録した点で貴重であり、
後にCurrent JoysがビジュアルやMVで構築する“感性の世界”の原型ともいえる。

『2013』は、語り尽くせなかった感情たちの、無名の墓標であり、
同時にそれらをそっと掘り返してくれるような、静かな祈りの音楽でもある
のだ。

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