Goodbye by The Sundays（1997）楽曲解説

楽曲レビュー

2025.05.072025.05.10

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. “さよなら”というやさしい言葉
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1. 歌詞の概要

「Goodbye」は、The Sundaysが1997年にリリースしたラスト・アルバム『Static & Silence』の収録曲であり、バンドのキャリアの終焉を象徴するかのような、静かで深い余韻を残すナンバーである。タイトルが示すように、テーマは“別れ”である。けれども、それは大声で叫ばれるような断絶ではなく、風に消えるようなささやきに近い。言葉数は少ないが、その中に込められた感情は計り知れず、微細な心の動きを丁寧に描いた叙情詩とも言える。

歌詞においては、別れを拒絶するでもなく、過剰に美化するでもなく、「それが自然の流れであること」として淡々と受け入れていく姿勢が印象的である。そしてその“受け入れる”という行為にこそ、大人の成熟と、静かな勇気が宿っているように感じられる。

2. 歌詞のバックグラウンド

The Sundaysは1990年代初頭のイギリスにおいて、ドリーミーなギター・ポップの旗手として注目されたが、彼らの活動は極めて寡作であった。デビュー作『Reading, Writing and Arithmetic』（1990）での鮮烈な印象、セカンド『Blind』（1992）での陰りと憂い、そして『Static & Silence』（1997）での静謐な達観——この3作で彼らは、ひとつの人生の縮図のような軌跡を描いて終わった。

「Goodbye」はその最後のアルバムの中でも最終盤に位置し、まるでバンド自身が、静かに舞台から去っていくための音楽のようにも聴こえる。デヴィッド・ガヴロンのミニマルなギター、ハリエット・ウィーラーの儚くも芯のある歌声、それらすべてが、永遠の“終わりの美学”をたたえている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

I want to say goodbye
「さよなら」を言いたい

I want to say goodbye to you
あなたに「さよなら」を言いたいの

この言葉は、あまりにもシンプルであるがゆえに、逆に深い余韻を残す。未練ではなく、拒絶でもなく、「別れを必要としている」という静かな意志が込められている。

There’s no need to lie
嘘をつく必要なんてないの

Goodbye, goodbye
さよなら、さよなら

ここには、飾り気のない誠実さがある。悲しみも含んでいるが、それ以上に穏やかな諦念、あるいは慈しみのような感情が感じ取れる。別れは痛みだけではない——そう教えてくれるフレーズである。

※歌詞引用元：Genius – Goodbye Lyrics

4. 歌詞の考察

「Goodbye」は、その名の通り、終わりを語る曲である。しかしそれは、「終わり＝喪失」とは限らないことを、静かに示してくれる。この曲にあるのは“断絶”ではなく、“手放し”だ。たとえば大切だった関係、過去の自分、または人生のあるフェーズ——そういったものとの別れを、苦しみを経て、ようやく言葉にできるようになった心情がにじんでいる。

ハリエット・ウィーラーの歌声は、この曲でいっそう澄んでおり、ほとんど「祈り」に近い。彼女の声は、何かを責めるでもなく、自分を美化するでもなく、ただ“今ここにある感情”をそのまま受け入れ、淡々と放っていく。まるで「さよなら」は、日常のひとつの動作であるかのように。

また、「Goodbye」はThe Sundaysの解散を示唆するような内容としても読み取ることができる。実際、この楽曲の後、バンドは活動を休止し、今日に至るまで再始動していない。だからこそ、この曲はただのラブソングではなく、彼ら自身からリスナーへの静かな“別れの手紙”なのかもしれない。