発売日: 2016年2月19日
ジャンル: ドリームポップ、ニューウェーブ、アートポップ
Life of Pauseは、Wild Nothingがこれまでのドリームポップサウンドをさらに進化させ、新しいテクスチャとジャンルを大胆に取り入れた3作目のスタジオアルバムだ。ジャック・テイタムはこの作品で、ファンクやソウル、アートポップの影響を融合し、より洗練された音楽性と複雑なアレンジに挑戦している。
ロンドンとストックホルムで録音された本作は、これまで以上にプロダクションに重点を置いており、ディテールに満ちたサウンドスケープが魅力的だ。煌びやかなシンセサイザーや層の重なったギター、そしてより感情的で多面的なテイタムのボーカルが、アルバム全体を彩っている。
トラック解説
1. Reichpop
アルバムの幕開けを飾る異色の一曲。カリプソ風のリズムとマリンバの音色が異国情緒を感じさせ、Wild Nothingの新しい方向性を示す冒険的なトラックだ。
2. Lady Blue
軽快なシンセサウンドとメランコリックな歌詞が印象的な一曲。過去の恋愛に対する感情が優しくも切ない雰囲気で描かれている。
3. A Woman’s Wisdom
ソウルフルなボーカルラインとシンセサウンドが絡み合い、深い感情を呼び起こすトラック。静と動のダイナミズムが巧みに表現されている。
4. Japanese Alice
奇妙な夢を思わせるエフェクトとシンセが楽曲を支配し、実験的なサウンドが耳に残る。タイトル通り、不思議の国のアリス的な幻想的な雰囲気が漂う。
5. Life of Pause
アルバムのタイトル曲で、明るいメロディの中に孤独感が織り交ぜられている。歌詞には停滞や変化への葛藤が込められており、キャッチーなリフレインが印象に残る。
6. Alien
暗くムーディーな雰囲気が特徴の楽曲。ギターとシンセの不協和音が楽曲に緊張感を加え、他者からの疎外感をテーマにしている。
7. To Know You
シンセウェーブ風のサウンドが特徴的なダンサブルなトラック。リズムセクションが力強く、テイタムのボーカルが楽曲の熱量を引き立てている。
8. Adore
アルバムの中でも特に感情的な楽曲。優しいメロディと歌詞が愛や自己受容をテーマにしており、静かながらも深いインパクトを持つ。
9. TV Queen
80年代ニューウェーブを思わせる軽快なリズムとシンセが魅力の一曲。現代のメディア文化への風刺が込められた歌詞が印象的。
10. Whenever I
メランコリックで瞑想的な楽曲。流れるようなギターとボーカルが、心地よい浮遊感を生み出している。
11. Love Underneath My Thumb
ファンクの影響を感じさせるグルーヴィーなトラック。ユニークなリズムセクションと軽快なメロディが新鮮な印象を与える。
12. Operator
アルバムの最後を締めくくるシンプルなトラック。テイタムのボーカルが静かな感情を湛え、余韻を残す。
アルバム総評
Life of Pauseは、Wild Nothingが音楽的な多様性と成熟を追求したアルバムであり、これまでの作品と比較してさらに洗練された印象を与える。特に「Reichpop」や「To Know You」といったトラックは、テイタムの探求心と進化したサウンドスケープを象徴している。
それでも、ドリームポップ的な儚さと甘美なノスタルジアは健在であり、新たな要素と従来の美学を見事に融合している。夜の静けさや感情の深みを楽しみたいリスナーにとって、このアルバムは心地よい旅路となるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Tame Impala – Currents
同じく進化したプロダクションとエレクトロニックな要素が特徴の作品。
Beach House – Depression Cherry
幻想的なサウンドスケープとエモーショナルなメロディが共通する。
Toro y Moi – What For?
ポップと実験的な要素がバランスよく融合したアルバム。
The War on Drugs – Lost in the Dream
広がりのあるサウンドスケープとメランコリックなテーマが共鳴する一枚。
Real Estate – Atlas
繊細で優雅なメロディが印象的で、Life of Pauseのファンに響く作品。
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