発売日: 2010年5月25日
ジャンル: ドリームポップ、シューゲイザー、インディーロック
Wild NothingのデビューアルバムGeminiは、80年代のドリームポップとニューウェーブにインスパイアされた作品で、ジャック・テイタムがその音楽的才能を一人でほぼ全てのパートに注ぎ込んだセルフプロデュースアルバムである。リバーブのかかったギター、エコーの効いたボーカル、そしてシンセサウンドが作り出す儚くも心地よい空間が特徴だ。
アルバム全体には青春の甘酸っぱさやノスタルジア、そして淡いメランコリックな感情が漂い、まるで夢の中を漂うような感覚をリスナーに与える。キャッチーなメロディと控えめなエモーションのバランスが絶妙であり、インディーロック界に新しいドリームポップの旗手としてWild Nothingを位置付けた作品だ。
トラック解説
1. Live in Dreams
アルバムの冒頭を飾る、まさに夢の中にいるようなトラック。煌びやかなギターリフとシンセが交差し、青春の甘さと儚さを表現した歌詞が心に響く。
2. Summer Holiday
80年代のニューウェーブを彷彿とさせる明るいトラック。軽快なリズムとキャッチーなメロディが印象的で、夏の楽しい記憶を呼び起こすような一曲。
3. Drifter
控えめでミステリアスな雰囲気を持つ楽曲。シンプルなアレンジとリバーブの効いたギターが、歌詞に込められた孤独感を引き立てている。
4. Pessimist
ジャングリーなギターとミニマルなビートが特徴的。タイトル通りやや陰鬱なトーンを持ちながらも、美しいメロディラインが希望の光を感じさせる。
5. O Lilac
控えめなテンポで進行する儚いトラック。花の名前が象徴するように、繊細で壊れやすい感情を見事に表現している。
6. Bored Games
タイトルに反してエネルギッシュなサウンドを持つ一曲。ギターリフとシンセが絡み合い、バンドのニューウェーブ的な側面が強調されている。
7. Confirmation
リバーブの効いたボーカルとシンセの組み合わせが楽曲全体を支配する。静かな感情の高まりを描き、リスナーを深い感傷へと導く。
8. My Angel Lonely
スローテンポで進行するトラックで、ジャック・テイタムの内省的な歌詞が心に響く。ギターとシンセのバランスが絶妙で、アルバムの静かなハイライトとなっている。
9. The Witching Hour
アルバムの中でも特にシューゲイザーの影響が色濃い楽曲。ギターのノイズとシンセの層が重なり、幻想的な雰囲気を作り出している。
10. Chinatown
リードシングルとしてリリースされた楽曲で、アルバムの中でもひときわポップな一曲。甘いメロディとシンプルなビートが魅力的で、聴くたびに心が弾む。
11. Our Composition Book
軽やかなリズムとメランコリックなメロディが印象的。青春の日々を記録したノートのような歌詞が、リスナーの共感を誘う。
12. Gemini
タイトル曲であり、アルバムの締めくくりを飾る大作。アルバム全体のテーマを凝縮したような音楽的な深みと感情が詰まった楽曲で、静かな余韻を残す。
アルバム総評
Geminiは、Wild Nothingの音楽性を確立した重要なデビューアルバムであり、80年代のドリームポップやニューウェーブへの深い敬意と、現代的な感性が見事に融合している。特に「Chinatown」や「Live in Dreams」のような楽曲は、ポップでありながらも心に残る情緒を持ち、リスナーに特別な感覚を与える。
ジャック・テイタムのセルフプロデュース能力の高さが随所に光り、全編を通して一貫した美しいサウンドスケープを作り出している。このアルバムは、青春やノスタルジアを音楽で体験したいすべてのリスナーにとって必聴の作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Beach House – Teen Dream
同じくドリームポップの名盤で、幻想的で美しいサウンドスケープがGeminiと共通する。
The Radio Dept. – Clinging to a Scheme
エコーの効いたギターとリズムが印象的なアルバムで、Geminiのファンにぴったり。
Cocteau Twins – Treasure
80年代のドリームポップの基礎を築いた名作で、Wild Nothingのルーツともいえる。
DIIV – Oshin
ポストパンクとドリームポップを融合したサウンドがGeminiのファンに響く。
Deerhunter – Halcyon Digest
ノスタルジックな雰囲気と繊細なメロディが、Geminiのテーマと共鳴する。
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