発売日: 2011年8月9日
ジャンル: ドリームポップ、インディーロック、スロウコア
ブルックリン出身のインディーロックバンドWidowspeakが放つセルフタイトルのデビューアルバムは、ドリーミーでノスタルジックな音の世界を紡ぎ出す。フロントウーマンであるモリー・ハミルトンの柔らかく囁くようなボーカルと、ロバート・トーマスのギターが生み出す朧げなサウンドスケープが特徴で、まるで遠い記憶の断片を音楽で描写したような作品だ。
Widowspeakは、Mazzy StarやCowboy Junkies、さらにはThe Velvet Undergroundの影響を受けたサウンドを現代的に再解釈し、静けさの中に潜む力強さと感情を表現している。ミニマルなアレンジと幻想的な雰囲気が、リスナーを現実から切り離し、深い没入感を与える。
トラック解説
1. Puritan
アルバムの幕開けを飾る、ミッドテンポの楽曲。ゆったりとしたリズムと揺れるようなギターメロディが、アルバム全体の雰囲気を暗示する。歌詞には自己探索や失われたものへの思いが込められている。
2. Harsh Realm
シングルとしてリリースされたキャッチーな一曲。モリーの囁くようなボーカルとリバーブの効いたギターが絡み合い、ノスタルジックなムードを醸し出す。リフレインが耳に残る。
3. Nightcrawlers
ブルージーなギターと緩やかなリズムが特徴の楽曲。歌詞には夜の孤独と儚さが込められており、ダークな雰囲気が漂う。
4. In the Pines
伝統的なフォークソング「In the Pines」にインスパイアされたトラックで、オリジナルの不穏な雰囲気を保ちながら、Widowspeakらしいミステリアスなアレンジが加えられている。
5. Limbs
アルバムの中でも特にドリーミーな一曲。ゆったりと進行するメロディと、モリーのエーテルのようなボーカルが、リスナーを瞑想的な世界へと導く。
6. Gun Shy
アップテンポながらもメランコリックな雰囲気を持つ楽曲。タイトルには恐れや不安が込められており、歌詞とサウンドのギャップが印象的。
7. Hard Times
ミニマルなアレンジと浮遊感のあるギターが特徴。タイトル通り、困難な時期や失われたものへの想いが、モリーのボーカルを通じて静かに語られる。
8. Fir Coat
ブルースとドリームポップが交差する楽曲。ギターのリフが楽曲を支え、リズムセクションが抑制されたエネルギーを感じさせる。
9. Ghost Boy
アルバムの中でも特に幻想的な楽曲。幽霊のように現れる「過去の記憶」を歌詞に込めた一曲で、淡いギターとハミルトンの歌声が、儚い感情を表現している。
10. Half Awake
夢と現実の狭間を描写するかのようなトラック。歌詞には曖昧な意識の中で感じる孤独が表現されており、アルバムのテーマを象徴している。
11. When You’re Wrong
アルバムの最後を飾る感動的なバラード。切ないメロディと控えめなアレンジが、心の奥底に触れるような余韻を残す。
アルバム総評
Widowspeakのセルフタイトルアルバムは、バンドの個性を明確に示すデビュー作として非常に完成度が高い。静けさとメランコリックなムードの中に、感情の強さと普遍的な美しさを感じさせる。特に「Harsh Realm」や「In the Pines」のような楽曲は、バンドの特徴を的確に表現し、リスナーをその世界観に引き込む。
このアルバムは、ドリーミーで瞑想的な時間を過ごしたいときに最適で、Mazzy StarやBeach Houseのファンにとっても新しい発見となるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Mazzy Star – So Tonight That I Might See
ドリームポップの名盤で、Widowspeakのメランコリックなムードに通じるサウンドを持つ。
Beach House – Devotion
繊細で幻想的な音楽性がWidowspeakの世界観と共鳴するアルバム。
Hope Sandoval and the Warm Inventions – Bavarian Fruit Bread
囁くようなボーカルとミニマルなアレンジが、Widowspeakのサウンドに似ている。
Cowboy Junkies – The Trinity Session
静けさの中に漂う強い感情が、Widowspeakの儚さと共通する。
The War on Drugs – Slave Ambient
リバーブの効いたギターとドリーミーな音楽が、Widowspeakのファンに響く一枚。
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