
1. 歌詞の概要
「I’ll Call You Mine」は、girl in red(本名:Marie Ulven)が2021年にリリースしたデビューアルバム『if i could make it go quiet』に収録された楽曲であり、アルバムの中でも特に柔らかく、甘く、切ない光を放つ一曲である。
この曲では、誰かを強く想う気持ちと、その相手を「私のもの」と呼びたいほどに深い愛情を抱く感情が、率直に、そしてどこか危ういほど純粋に描かれている。
一方で、愛するということに潜む不安や依存、そして「愛しているからこそ不安になる」という繊細な心理も、静かに織り込まれている。
全体的にこの楽曲は、幸福感と脆さ、期待と恐れ──恋愛が持つすべての感情のレイヤーを、淡い色彩で描き出している。
2. 歌詞のバックグラウンド
「I’ll Call You Mine」は、Marieが自身の恋愛感情、特に”相手にすべてを預けたい”という強い渇望を素直に描こうとした曲である。
彼女はこの曲について、「恋愛の初期段階で感じる、相手を完全に手に入れたいと思うあの感覚」をストレートに表現したかったと語っている。
それは、自己と他者の境界が曖昧になるような、ある意味で危うく、しかしとても人間らしい欲望であり、「if i could make it go quiet」というアルバムのテーマ──心のノイズと葛藤──とも深く響き合っている。
サウンド面では、軽やかなギターフックと、優しく包み込むようなボーカルが特徴的であり、恋愛の甘さと不安の入り混じった感情を巧みに表現している。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元:Genius Lyrics
“When you’re all by yourself, do you like it?”
一人きりのとき、あなたはそれを楽しんでいるの?“Do you think of me when you’re by yourself?”
一人のとき、私のことを考えてくれてる?“I’ll call you mine”
あなたを「私のもの」と呼びたい“If that’s alright”
もしそれが許されるなら
これらのラインは、相手への深い愛情と、そこに潜む小さな不安が交錯する、きわめて繊細な心情を描き出している。
4. 歌詞の考察
「I’ll Call You Mine」は、恋愛における”所有したい欲望”と”拒絶される不安”の間で揺れる心を、驚くほどリアルに、かつ優しく描いた楽曲である。
「When you’re all by yourself, do you like it?」という問いかけには、相手が自分なしで過ごすことへの嫉妬や寂しさが透けて見える。
一方で、「I’ll call you mine, if that’s alright」というフレーズには、ただの一方的な欲望ではなく、相手の意志を尊重したいという優しさも感じられる。
このバランスが、この曲を単なる執着の歌にするのではなく、愛するという行為のもろさと美しさを、より深く、普遍的なものにしている。
また、楽曲全体に漂うほのかな不安感──「本当にこの関係は続くのか」「自分はこの人にとって特別なのか」という問い──が、単なる甘いラブソングとは異なる深みを与えている。
girl in redは、「愛したい、でも怖い」という誰もが抱える矛盾した感情を、決して大げさにせず、そっと、しかし鋭く掬い上げているのだ。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Bags” by Clairo
恋愛のはじまりに潜む緊張と期待を、繊細に描いたインディーポップの名曲。 - “Sleepover” by Hayley Kiyoko
叶わない恋に対する切ない思いを、夢見心地なサウンドに乗せたラブソング。 - “Seventeen” by Sharon Van Etten
若さと恋愛に伴う痛みと成長を、力強く描いたエモーショナルなバラード。 - “Talia” by King Princess
失った愛への執着と痛みを、ストレートに歌ったモダンなポップソング。 - “Home” by Cavetown
誰かとの居場所を探し求める心情を、柔らかなメロディに託した楽曲。
6. 愛したい気持ち、そのすべてを肯定して
「I’ll Call You Mine」は、girl in redが持つ「恋愛のリアリティ」を最も美しく表現した楽曲のひとつである。
恋に落ちるとき、私たちは誰しも、「この人を失いたくない」と願い、
「この人を私のものと呼びたい」と切実に思う。
その気持ちは時に危うく、未熟で、自己中心的にさえ見えるかもしれない。
けれど、それもまた愛するということの、避けられない一部なのだ。
girl in redは、「I’ll Call You Mine」で、そんな不完全で純粋な感情を、ありのままに、優しく肯定してみせた。
それは、誰かを心から愛したことのあるすべての人に向けられた、静かで力強いラブソングなのである。
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