Struggler by Genesis Owusu（2023）楽曲解説

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. “止まらないこと”が最も強いという真実
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1. 歌詞の概要

「Struggler（ストラグラー）」は、Genesis Owusu（ジェネシス・オウス）が2023年に発表した2ndアルバム『STRUGGLER』のタイトル・トラックであり、**現代に生きる人間の「もがき」「粘り」「矛盾」といった実存的リアリティを、激しいビートと鋭利な言葉で貫いた“生のマニフェスト”**とも言える楽曲である。

“Struggler”とは、直訳すれば「もがく者」「あがく人」。
Owusuはこの曲を通して、理不尽な社会構造、自己否定、見えない圧力の中で、それでも生き続ける者たちの姿を、動的なビートに乗せて描き出す。

この「ストラグラー」とは、何者か？
彼はヒーローではなく、勝者でもない。
しかし、彼は「止まらない存在」であることによって、生を獲得していく。
この歌は、「正しさ」ではなく「生きていること」そのものに価値を見出す人間讃歌なのだ。

2. 歌詞のバックグラウンド

この楽曲は、アルバム『STRUGGLER』のテーマそのものを体現している。
Genesis Owusuはこのアルバムにおいて、自身の身体性、社会的抑圧、精神の崩壊と回復を**“旅する昆虫”のような比喩的存在＝ストラグラー**を通じて描き出している。

彼が語る「Struggler」は、人間というよりも、「環境のなかで、状況に抗いながらしぶとく生き残ろうとする存在」。
このキャラクターはアルバム全編にわたって顔を覗かせるが、このタイトル曲では彼自身がまさにその“ストラグラー”であると名乗り出る。

パフォーマティブで躍動感のあるトラックに乗せられるその言葉は、身体的であり、祈りでもあり、叫びでもある。
この曲のGenesis Owusuは、説得するのではなく、ただ「生きている」ことを爆音で証明してみせる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

I keep movin’, I keep movin’
Ain’t no ending, no conclusion

俺は動き続ける、止まらない
終わりも結論もないんだ

I’m the Struggler
Dirt in my lungs and blood on my shoes

俺がストラグラー
肺には土、靴には血

I scream, I run
I crawl, I climb

叫び、走り
這い、よじ登る

Still alive
Still alive
Still alive

それでも生きてる
まだ、生きてる
今も、生きてる

歌詞引用元：Genius – Genesis Owusu “Struggler”

4. 歌詞の考察

「Struggler」は、“生き延びることそのものが抵抗である”というフィロソフィーを、リズムと叫びの中に刻んだ強烈な自己定義である。

「I keep movin’, I keep movin’（俺は動き続ける、止まらない）」というフレーズは、希望や勝利ではなく、“動き続けること”に意味を見出すという倒錯した美学の始まりを示している。
それは、ゴールのない旅。報われない労働。終わらない痛み。そのどれにも、Owusuは「Still alive（それでも生きてる）」と繰り返す。

「Dirt in my lungs and blood on my shoes（肺には土、靴には血）」というラインには、“生きることが戦場のようだ”という現代的感覚が強く滲む。
しかし彼はそれを自虐的に語るのではなく、あえてそれを「自分の名札」として掲げている。
血と泥こそが、自分がここまで来た証だ、と。

そして最も印象的なのは、「Ain’t no ending, no conclusion（終わりも結論もない）」というラインだろう。
ここにあるのは、解決も救済もない。だが、その代わりにあるのは、“継続”という一種の神聖さ。
完結を求めず、生を止めない。それこそが、Owusuが定義する“ストラグラー”の核心なのだ。