発売日: 1970年7月7日
ジャンル: ガレージロック / プロトパンク / サイケデリックロック
The Stoogesの2作目となるアルバムFun Houseは、デビューアルバムをさらに過激に進化させた作品であり、ロック史に残る傑作として広く知られている。デトロイトの地下シーンから生まれたこのアルバムは、荒々しいガレージロックにサイケデリックな要素とフリージャズの影響を取り入れたサウンドで、聴く者に圧倒的なエネルギーと混沌を与える。
プロデュースはドン・ガルズマンが担当し、レコーディングはほぼライブのような一発録りで行われた。結果として、アルバム全体に緊張感と即興的なダイナミズムが漲っている。フロントマンのイギー・ポップの挑発的なヴォーカルとステージパフォーマンス、バンドの強烈な演奏は、後のパンクロックやオルタナティブシーンに大きな影響を与えた。
Fun Houseは、商業的な成功には至らなかったものの、その攻撃的で革新的な音楽性が再評価され、現在ではロックの歴史における重要なアルバムのひとつとされている。
トラック解説
1. Down on the Street
アルバムのオープニングを飾る攻撃的な楽曲で、シンプルなギターリフと重低音が際立つ。イギーのボーカルは荒々しく、歌詞にはストリートの反抗心と欲望が詰まっている。ライブ感のある録音がバンドのエネルギーをそのまま伝える。
2. Loose
「I’m loose」というイギーの挑発的な叫びで始まるこの楽曲は、自由と解放を象徴している。シンプルながらもパワフルなギターリフと、リズムセクションのタイトさが際立つパンクロックの原点とも言える一曲だ。
3. T.V. Eye
リズムギターが唸るイントロから始まり、イギーの叫び声が炸裂する。この曲はライブの定番で、スリリングな展開が魅力。反復的なリフが中毒性を生み出し、曲全体に緊張感を与えている。
4. Dirt
7分近いスローなナンバーで、ブルースの影響を感じさせる一曲。暗く退廃的な雰囲気の中、イギーのボーカルが心に刺さる。「I’m dirt」というラインが繰り返され、自己否定的ながらも挑発的な感情が滲み出ている。
5. 1970
「I feel alright!」という叫びが印象的な楽曲で、1970年代の始まりを祝うかのようなエネルギーが溢れている。サックスが加わり、曲にジャズ的なエッジを与えている点も注目だ。狂乱のグルーヴ感がリスナーを圧倒する。
6. Fun House
アルバムタイトルを冠したこの楽曲は、即興性と混沌が極まったフリージャズのようなアプローチが特徴。サックスが前面に出たカオスなサウンドとイギーのボーカルが絡み合い、狂気の世界を描いている。
7. L.A. Blues
アルバムを締めくくるフリーフォームのインストゥルメンタル。ギター、ドラム、サックスが完全に解き放たれ、破壊的で予測不能な音響を作り出している。ロックの枠を超えた実験的なトラックで、聴く者に衝撃を与える。
アルバム総評
Fun Houseは、The Stoogesの音楽的エネルギーが極限まで高まったアルバムであり、荒削りながらも大胆で革新的な作品だ。ライブ感をそのまま記録したような一発録りのレコーディング手法は、楽曲に即興性と危険な魅力を与えている。
「Down on the Street」や「Loose」のような直球のロックから、「Fun House」や「L.A. Blues」のようなカオスと実験性に満ちた楽曲まで、バンドの幅広い音楽性が詰まっている。商業的には失敗したが、その影響力は計り知れず、特にパンクロックやノイズロックに大きな影響を与えた。
混沌とエネルギー、そして音楽の本質的な原始性が詰まったこのアルバムは、ロックの歴史における革命的な作品として、今もなお新しいリスナーを魅了している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Raw Power by Iggy and The Stooges
さらに攻撃的で荒々しいサウンドが特徴。グラムロックの影響を受けたパンクの原点的作品。
Kick Out the Jams by MC5
デトロイトのガレージロック仲間MC5のデビュー作。ライブ感とエネルギーが共通している。
White Light/White Heat by The Velvet Underground
アヴァンギャルドなロックの名盤。ノイズと混沌が好きなリスナーにおすすめ。
Funeral Parade by The Flesh Eaters
パンクとジャズの要素を取り入れた異色の作品で、The Stoogesの実験性と共鳴する。
Yeti by Amon Düül II
クラウトロックの名作。即興性とサイケデリックな要素が「Fun House」の自由なスピリットと通じる。
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