発売日: 2017年8月18日
ジャンル: インディーロック、アートロック、エクスペリメンタルポップ
Grizzly Bearの5作目『Painted Ruins』は、バンドのさらなる進化を示す作品であり、洗練されたプロダクションとエクスペリメンタルな要素が融合した一枚である。前作『Shields』から約5年のブランクを経てリリースされた本作は、個々のメンバーのソロ活動を経た後の集合体としての力強さが感じられる内容となっている。
『Painted Ruins』は、複雑な楽曲構造と緻密なアレンジが特徴でありながら、これまでの作品と比較すると、よりモダンでアクセスしやすいサウンドが展開されている。歌詞では、個人的な喪失や混乱、そして社会の不安をテーマにしつつも、バンドならではの暖かみや美しいハーモニーが随所に光っている。これにより、内省的でありながらもリスナーに寄り添うような深みを持つアルバムとなっている。
トラック解説
1. Wasted Acres
静かなイントロで幕を開けるトラック。ミニマルなアレンジと控えめなボーカルが、不安定な雰囲気を醸し出す。歌詞には日常の些細な瞬間を捉えつつも、内省的なテーマが込められている。
2. Mourning Sound
アルバムのリードシングルで、リズミカルなビートとキャッチーなメロディが際立つ一曲。グリズリー・ベアの特徴的なコーラスワークとモダンなプロダクションが融合した、親しみやすい楽曲。
3. Four Cypresses
重厚なベースラインと不穏なシンセサウンドが印象的。戦争や混乱を彷彿とさせる歌詞と、ドラマチックな展開が、楽曲全体に緊張感を与えている。
4. Three Rings
複雑なリズムとダニエル・ロッセンの感情的なボーカルが特徴的な楽曲。関係性の変化や葛藤を描いた歌詞が、聴き手に深い共感を呼び起こす。
5. Losing All Sense
軽快なリズムと浮遊感のあるメロディが印象的。明るいサウンドの中に、喪失感や不確実性といったテーマが隠されている。
6. Aquarian
エクスペリメンタルな構成とシンセサウンドが際立つトラック。宇宙的な雰囲気と高揚感を感じさせるサウンドスケープが特徴。
7. Cut-Out
スローなテンポとアコースティックなサウンドが中心となった一曲。親密で静かなムードの中に、感情の揺らぎが込められている。
8. Glass Hillside
ロッセンのリードボーカルが印象的なトラック。抽象的な歌詞と流れるようなメロディが、夢のような音の世界を作り出している。
9. Neighbors
柔らかなギターとピアノのイントロから始まるトラックで、バンドのコーラスワークが際立つ。静かな感情の高まりを感じさせる一曲。
10. Systole
アルバムの中でも特に親密で静かな楽曲。ミニマルなアレンジとエド・ドロステのボーカルが、リスナーに深い内省を促す。
11. Sky Took Hold
アルバムのラストを飾る壮大なトラック。静かなイントロから始まり、徐々にエネルギーが高まる構成が印象的。終盤のクライマックスは、アルバム全体を締めくくるにふさわしい感動的なフィナーレを迎える。
アルバム総評
『Painted Ruins』は、Grizzly Bearの新たな挑戦と熟練の音楽性が凝縮された作品である。モダンなエレクトロニカ的アプローチと彼ら特有のフォーク的な暖かさが融合し、バンドの進化を感じさせる内容となっている。複雑なアレンジや豊かなハーモニーが、聴くたびに新たな発見を与えてくれる一枚であり、個々の楽曲が持つテーマ性とアルバム全体の統一感が見事に調和している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Shields by Grizzly Bear
前作で、ダイナミックな展開と緻密なアレンジが楽しめる。『Painted Ruins』との連続性が感じられる。
A Moon Shaped Pool by Radiohead
緻密なアレンジと内省的なテーマが特徴のアルバム。『Painted Ruins』の持つエモーショナルな側面と共鳴する。
Crack-Up by Fleet Foxes
複雑な楽曲構造と美しいコーラスが特徴。『Painted Ruins』と同様に、アート性の高いフォークサウンドが楽しめる。
High Violet by The National
深い感情と壮大なアレンジが魅力のアルバム。『Painted Ruins』のドラマチックな側面に共通点がある。
In the Rainbow Rain by Okkervil River
エクスペリメンタルでモダンなサウンドが特徴。多層的なアレンジが『Painted Ruins』のファンに響く。
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