アルバムレビュー：Jyoty’s Request Line Vol 2 by JYOTY

アルバムレビュー

2025.04.27

発売日: 2024年3月15日
ジャンル: ネオ・ソウル、UKガラージ、アフロ・フュージョン、エレクトロ・ジャズ、ラジオ・ミュージック

概要
全曲レビュー（主要トラック抜粋）
総評
おすすめアルバム（5枚）

概要

『Jyoty’s Request Line: Vol 2』は、ロンドンのDJ／セレクターであるJyoty（ジョーティ）が手がけるキュレーション・シリーズの第2作であり、前作よりもパーソナルで深く、内省的なムードを増した“音の対話集”となっている。

「Request Line＝リクエスト・ライン」は、クラブやラジオを通じて人々の感情や記憶が交錯する場であり、Jyotyはこのシリーズを通じて“誰かの一夜”を記録し続けている。
本作では、ソウルフルなボーカル、壊れそうなメロディ、アフロリズム、そしてUKクラブカルチャーの知的スピリットが繊細に融合し、リスナーに語りかけるような流れが全編を貫いている。

ゲスト陣もさらに充実し、Yussef Dayes、Nubya Garcia、Shaé Universe、CKTRLらが名を連ね、ジャズとクラブの境界が優しく融解する空間が広がっている。

全曲レビュー（主要トラック抜粋）

1. Soft Opening (ft. CKTRL)

静かなクラリネットの音色とレイドバックなビートが、夜の入り口を描くイントロダクション。
CKTRLのサックスが溶け込むように、深夜の都市を漂うような感覚を生む。

2. Gold Dust (ft. Shaé Universe)

愛と自尊心をテーマにしたネオ・ソウル・バラード。
Shaéのソウルフルな歌声が、“他人の言葉ではなく、自分の価値で光る”ことを優しく説く。

3. 4AM Voicemail Interlude

実際のボイスメモのようなインタールード。
失恋の余韻、感情の揺れ、夜の静けさが1分半の断片に詰め込まれている。
Jyotyらしい“語るようなキュレーション”が光る部分。

4. Dancing in B Minor (ft. Yussef Dayes)

Yussef Dayesのドラミングが爆発的に展開する、ジャズ×ガラージのフュージョン・ジャム。
ビートは常に不安定で、しかし身体を自然に揺らす。
タイトル通り、短調で踊る“複雑な幸福”がテーマ。

5. Calle 23 (ft. La Dame Blanche)

スペイン語ラップとトラップ・クンビアが交錯する、エネルギッシュなラテン・フュージョントラック。
Jyotyのラジオ番組でよく流れるラテンセットを、そのままアルバムに再現したような勢い。

6. Letters You Never Sent

ジャジーなピアノとメロウなベースラインに乗せて、“言えなかった気持ち”を音楽で綴る曲。
歌詞はほとんどなく、ボーカルサンプルとリズムのみで構成される、感情の空白。

7. Outro: Radio Silence (ft. Nubya Garcia)

Nubya Garciaのサックスが語り手となり、言葉を超えた物語を奏でるエンディング。
“リクエストされなかった曲”たちのために鳴らされる、静かで力強いクロージング。

総評

『Jyoty’s Request Line: Vol 2』は、“クラブでの声にならない会話”を記録するシリーズの第2章として、より静かに、より深く、そしてより詩的に深化したアルバムである。

ジャンルを横断するサウンド設計、DJとしての直感と詩人としての構成力、そして何よりリスナーの感情に寄り添う耳が、Jyotyのユニークな存在性を際立たせている。

このアルバムは、夜の中にある“言えなかった言葉たち”に寄り添うプレイリストであり、クラブでも、自室でも、車の中でも、“誰かの記憶”を包み込む静かな魔法のような作品なのだ。