アルバムレビュー：Into the Deep by Galactic (featuring Jelly Joseph)

アルバムレビュー

2025.04.27

発売日: 2015年7月17日
ジャンル: ファンク、ソウル、ニューオーリンズ・グルーヴ、R&B、ジャズ・ファンク

概要
全曲レビュー（主要トラック抜粋）
総評
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概要

『Into the Deep』は、Galacticが2015年にリリースしたスタジオ・アルバムであり、彼らの“ソウル・サイド”を全面的に押し出した、メロウかつ洗練された傑作である。
この頃、Jelly Joseph（Anjelika ‘Jelly’ Joseph）はライブでの参加を本格化させており、本作を境にGalacticの“歌”は新たな深みを獲得し始める。

タイトルの「Into the Deep」は単なる比喩ではなく、音楽的にも感情的にも、より深く、より内面的な世界へと潜っていく決意を意味している。
ゲストにはMacy Gray、JJ Grey、Brushy One String、David Shawらが参加し、それぞれが異なる表現の“深み”を提示している。

これまでのGalacticのブラス・ファンクやインストゥルメンタル中心の構成から一転、“声”が前面に出たソウルフルなアンサンブルが中心となったことは、Jelly Joseph以降の流れを象徴する転換点として極めて重要である。

全曲レビュー（主要トラック抜粋）

1. Sugar Doosie

ファンキーで跳ねるリズム、アナログ感の強いオルガン、ホーンの掛け合いが抜群なインスト・トラック。
アルバムの開幕として、Galacticの“生演奏感”と“ライヴ的熱気”を見せつける一曲。

2. Higher and Higher (feat. JJ Grey)

スワンピーなソウルフル・ロック。
JJ Greyのしゃがれ声と、分厚いグルーヴが絡み合い、熱さの中に静かなスピリチュアルさを感じさせる。
Jelly Josephのステージングでもこの熱量は継承されている。

3. Into the Deep (feat. Macy Gray)

本作のタイトル曲にして中心テーマ。
Macy Grayのかすれ声とメランコリックなメロディが、内省と再生を繰り返す旅路を語る。
Jellyが後年この曲をライブで歌い継ぎ、彼女の持つ“哀しみと強さの声”がこの曲に宿るようになる。

4. Dolla Diva (feat. David Shaw & Maggie Koerner)

Maggie Koernerが参加する、グルーヴィーでフェミニンなパワーに満ちた一曲。
のちにこの楽曲は、Jelly Josephがステージ上で新たな表現を与える定番ナンバーとなる。
“ソウルとロックとジェンダー表現の交差点”としても興味深い。

5. Long Live the Borgne

インストゥルメンタル・トラック。
ニューオーリンズの川「バーニュ川」に捧げられたこの曲は、Galacticの風景描写力を存分に発揮した美しいサウンドスケープ。

6. Right On (feat. Ms. Charm Taylor)

アフロフューチャリズム的なリリックとスペーシーなアレンジが融合した、実験的かつ神秘的なトラック。
Jelly Josephのボーカルもこのような宇宙的スピリチュアル・ファンクへの対応力があり、彼女の表現幅を照らす鏡のような一曲。

総評

『Into the Deep』は、Galacticが“インスト・ファンクの雄”から“ソウル・ミュージックの語り部”へと移行する過程で生まれた、声と感情を主軸に据えた記念碑的アルバムである。
Jelly Josephの加入によってその“声の深度”はさらに深化し、この作品で描かれた“深みに潜る意思”は、彼女のパフォーマンスによって今も更新され続けている。

このアルバムを聴くことは、Galacticというバンドの心の音域を知ることであり、そこに宿る“静かな熱狂”を体感する旅でもある。