発売日: 2015年6月22日
ジャンル: オルタナティヴロック、ドリームポップ、グランジ
ロンドン出身の4人組バンドWolf Aliceによるデビューアルバム「My Love Is Cool」は、90年代のグランジやオルタナティブロックの影響を受けつつも、ドリームポップの要素も取り入れた幅広い音楽性が魅力の作品である。このアルバムで、Wolf Aliceは歪みと静寂の間を行き来し、パワフルでありながらも繊細なサウンドを紡ぎ出している。彼らは激しいギターリフと夢幻的なメロディ、そしてエリー・ロウゼルのボーカルを駆使し、感情の揺れや人間関係の複雑さを描く独自の世界観を確立している。
このアルバムには、オルタナティブロック、シューゲイザー、グランジ、そしてポップといった異なるジャンルが入り交じり、聴き手を次々と新しいサウンド体験へと導く力がある。プロデューサーにマイク・クロッシー（Arctic MonkeysやFoalsと仕事をしてきたプロデューサー）を迎え、粗さと洗練が絶妙にバランスを取り、Wolf Aliceの持つエネルギーを最大限に引き出している。このデビュー作により、Wolf Aliceは英国インディーロックの新しい旗手として注目を浴びることとなった。
トラックごとの解説
1. Turn to Dust
アルバムの幕開けを飾る「Turn to Dust」は、エリーの繊細な歌声とミニマルなギターが美しく響き、夢幻的で儚い雰囲気を作り出している。静かな音の広がりが、夜明け前の静けさを思わせ、アルバム全体の期待感を高める一曲。
2. Bros
「Bros」は、青春期の友情をテーマにしたノスタルジックな楽曲。明るくも切ないメロディがエリーの優しいボーカルと絶妙にマッチし、楽しかった日々と過ぎ去った時間への思いが、ポップなサウンドに乗せて描かれている。
3. Your Loves Whore
ゆったりとしたテンポで進む「Your Loves Whore」は、ギターのリフとエリーの透き通ったボーカルが絡み合い、緊張感を漂わせる一曲。愛の依存や葛藤がテーマとなっており、じわじわと盛り上がるサウンドが心に残る。
4. Moaning Lisa Smile
激しいギターリフとグランジの影響が色濃く表れた「Moaning Lisa Smile」は、アルバムの中でも特にエネルギッシュなナンバー。エリーの叫ぶようなボーカルが楽曲の激しさをさらに引き立て、感情が爆発するかのようなパワフルなトラック。
5. You’re a Germ
「You’re a Germ」は、パンキッシュなビートと挑戦的な歌詞が印象的。エリーの怒りやフラストレーションがストレートに表現されており、リスナーに鋭く刺さるエネルギッシュな一曲だ。
6. Lisbon
ギターのフィードバックとドラムが特徴的な「Lisbon」は、重厚でダークなサウンドが響き渡る。切迫感が漂うメロディとボーカルが、心の葛藤や激しさを描き出し、聴き手を独特の緊張感で包み込む。
7. Silk
「Silk」は、ゆったりとしたビートと繊細なサウンドが印象的なドリームポップ調の楽曲。浮遊感のあるメロディとエリーの美しいボーカルが、どこか儚くも幻想的な世界観を作り上げ、夢の中にいるような感覚を味わわせる。
8. Freazy
「Freazy」は、リズミカルで軽やかなサウンドが心地よく、前向きなメッセージが込められた楽曲。シンプルでキャッチーなメロディが、リスナーに自然と口ずさませる魅力を持つ一曲。
9. Giant Peach
「Giant Peach」は、重厚なギターとパワフルなドラムが特徴のロックナンバー。エリーのダイナミックなボーカルが楽曲の緊張感を高め、バンドのエネルギーが詰まった一曲で、ライブ映えすること間違いなしのパワフルな楽曲だ。
10. Swallowtail
ギタリストのジョフ・オッディがボーカルを担当する「Swallowtail」は、ゆったりとしたメロディが印象的で、異なる声の響きが新鮮。サイケデリックな雰囲気が漂い、アルバムの中で一息つける静かなトラックとなっている。
11. Soapy Water
「Soapy Water」は、エレクトロニックなビートと浮遊感のあるギターが絡み合い、不安と儚さを感じさせる楽曲。エリーのボーカルが切なく響き、感情の奥深くに迫る一曲だ。
12. Fluffy
激しいギターリフとエネルギッシュなビートが魅力の「Fluffy」。アグレッシブなサウンドが際立ち、荒削りでパンク的なエッジが聴き手に鮮烈な印象を残す。
13. The Wonderwhy
アルバムのラストを飾る「The Wonderwhy」は、ダークで幻想的な雰囲気を持つスローテンポの楽曲。エリーのボーカルが深く響き渡り、聴き手に心の奥底で余韻を感じさせながら、静かに幕を閉じる。
アルバム総評
「My Love Is Cool」は、Wolf Aliceが音楽シーンに強烈な印象を与えたデビュー作であり、様々なジャンルを自由に横断しながらも統一感のある作品に仕上がっている。エリー・ロウゼルの柔らかくも力強いボーカル、激しいギターリフ、そして繊細で美しいメロディが組み合わさり、聴き手を多様な感情へと導く。グランジやドリームポップの影響を受けつつ、現代的なアプローチで再解釈したサウンドは、どこか懐かしさを感じさせると同時に、新鮮な驚きをもたらす。「My Love Is Cool」は、Wolf Aliceの可能性と音楽的な幅広さを示す名作であり、リスナーにとって忘れがたい体験となるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Nevermind by Nirvana
グランジロックの代名詞とも言える名盤で、粗削りで力強いサウンドが「My Love Is Cool」と共鳴する。エネルギーと哀愁が詰まった作品。
Loveless by My Bloody Valentine
シューゲイザーの名作。幻想的で濃厚な音のレイヤーが、Wolf Aliceのドリームポップ的な側面と共通しており、深い余韻を残す。
Is This It by The Strokes
シンプルでストレートなロックサウンドが特徴のアルバム。パンクやガレージロックの影響を受けつつも現代的で、Wolf Aliceのファンに響く作品。
Tragic Kingdom by No Doubt
パンク、ロック、ポップが混ざり合ったエネルギッシュな一枚で、力強い女性ボーカルと多彩なサウンドが「My Love Is Cool」と共鳴する。
The Suburbs by Arcade Fire
多様なジャンルと深い感情を盛り込んだ作品。ノスタルジックでありながらも革新的で、「My Love Is Cool」の複雑な感情と共鳴する面がある。
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