発売日: 2012年9月7日
ジャンル: ガレージロック、サイケデリックロック、ローファイ
オーストラリア出身のサイケデリック・ロックバンド、King Gizzard & the Lizard Wizardのデビューアルバム「12 Bar Bruise」は、荒削りでエネルギッシュなガレージロックサウンドが全開の作品である。彼らの音楽性は後の作品で実験的な方向へと進むが、このデビュー作は、ローファイな質感とライブ感を重視した一枚であり、彼らのルーツであるガレージロック、パンク、サイケデリックの影響が色濃く反映されている。レコーディングもDIYで行われ、例えば、マイクとしてiPhoneを使うなどの独特な手法が取り入れられ、荒々しいサウンドがそのままの形で収録されている。
7人のメンバーが奏でる音の渦は、エネルギッシュでありながらも不思議な一体感を持ち、シンプルで力強いリフと、シャウトするようなボーカルが聴く者を一気に熱狂の渦へと巻き込む。「12 Bar Bruise」は、バンドのエネルギッシュで破天荒な側面が詰まったローファイ・ロックの原点とも言える作品だ。
各曲解説
1. Elbow
アルバムの幕開けを飾る「Elbow」は、鋭いギターリフと激しいドラムビートが特徴の一曲。シャウト気味のボーカルとエネルギッシュなパフォーマンスが、バンドの激しいロックサウンドを象徴している。まるでライブのような生々しい勢いが感じられる。
2. Muckraker
スピード感あふれる「Muckraker」は、サイケデリックとガレージロックが融合したアグレッシブなナンバー。歪んだギターリフが曲全体を支配し、迫力あるサウンドが聴く者の興奮を誘う。
3. Nein
ノイジーなギターとリズムが際立つ「Nein」は、パンクの影響が色濃く反映された曲で、バンドの勢いが存分に発揮されている。シンプルでありながらも、エッジの効いたリフが心地よい。
4. 12 Bar Bruise
アルバムタイトル曲の「12 Bar Bruise」は、荒々しいガレージサウンドが前面に出たナンバー。歪んだギターとシャウトが重なり合い、まるでバーでの熱狂的なライブをそのまま封じ込めたような臨場感がある。
5. Garage Liddiard
パンクとサイケデリックの要素が融合した「Garage Liddiard」は、重いギターサウンドとノイズが渦巻く一曲。タイトル通り、ガレージロックの精神が強調されており、ローファイな音質がバンドの勢いをより強調している。
6. Sam Cherry’s Last Shot
テンポを落とし、ややブルージーな雰囲気が漂う「Sam Cherry’s Last Shot」。粗削りなサウンドの中に哀愁が漂い、バンドの持つ多様性がうかがえる一曲だ。
7. High Hopes Low
アップテンポでノイジーな「High Hopes Low」は、激しいリズムと力強いボーカルが印象的。聴く者を巻き込むようなエネルギッシュなパフォーマンスが魅力で、ライブでの盛り上がりを彷彿とさせる。
8. Cut Throat Boogie
ブルースの要素を取り入れた「Cut Throat Boogie」は、リズミカルで踊りたくなるような楽曲。ノイジーなギターとシャウトが交互に響き、荒々しいながらもグルーヴィーなトラックとなっている。
9. Bloody Ripper
スピード感溢れる「Bloody Ripper」は、攻撃的なギターリフとリズムが際立つガレージロックの一曲。タイトル通り、強烈な勢いがそのまま楽曲に反映されている。
10. Uh Oh, I Called Mum
少しコミカルなタイトルが印象的なこの曲は、パンクとガレージロックが混じり合ったエネルギッシュなナンバー。若干ユーモラスな雰囲気があり、バンドの遊び心が垣間見える。
11. Sea of Trees
サイケデリックなエフェクトが印象的な「Sea of Trees」は、他の曲に比べてダークで神秘的なムードが漂う。重厚なリズムとメロディが絡み合い、アルバムの中でも異色の存在感を放っている。
12. Footy Footy
アルバムを締めくくる「Footy Footy」は、ファンキーでノリの良いトラック。力強いビートとエネルギッシュなボーカルが、最後までアルバム全体を盛り上げ、バンドのロックな精神を強調して終わる。
アルバム総評
「12 Bar Bruise」は、King Gizzard & the Lizard Wizardの激しくも粗削りなエネルギーが詰まった、ガレージロックの衝動的な一枚である。後に彼らが見せる実験的なサウンドとは異なり、純粋にロックへの愛とDIY精神が感じられる作品だ。ローファイな音質と、iPhoneでのレコーディングというユニークな手法も、バンドの独自性を強調している。荒削りながらも情熱がほとばしるこのアルバムは、バンドの原点を知るには最適の一枚であり、ガレージロックやサイケデリックロックを愛するリスナーにとっては、聴く価値のある作品だろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Thee Oh Sees – Floating Coffin
ガレージロックとサイケデリックの要素が融合し、荒々しくもエネルギッシュなサウンドが楽しめるアルバム。King Gizzardと同じく、ライブ感が強い。
Ty Segall – Slaughterhouse
ローファイでガレージ的な質感が特徴のアルバム。ノイズとエネルギーが詰まっており、同じくガレージロックファンにおすすめ。
White Fence – Family Perfume Vol. 1
サイケデリックとローファイなガレージロックが特徴の作品で、自由で実験的なスタイルが「12 Bar Bruise」と通じる。
Black Lips – Arabia Mountain
ユニークなガレージサウンドとパンクの影響が楽しめるアルバム。King Gizzard同様、荒削りでパワフルなサウンドが魅力。
Fuzz – Fuzz
Ty Segallによるプロジェクトで、ハードでサイケデリックなガレージロック。ノイジーなギターとローファイな質感が「12 Bar Bruise」に通じる。
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