アルバムレビュー:The Days of Wine and Roses by The Dream Syndicate

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1982年10月

ジャンル:ペイズリー・アンダーグラウンド、オルタナティヴ・ロック、ガレージ・ロック、ネオ・サイケデリア、ポストパンク

概要

The Dream Syndicateのデビュー・アルバム『The Days of Wine and Roses』は、1980年代アメリカン・インディー・ロックの形成において重要な位置を占める作品である。1982年に発表された本作は、ロサンゼルスを中心に広がった「ペイズリー・アンダーグラウンド」と呼ばれるムーヴメントの代表作のひとつであり、1960年代ガレージ・ロック、サイケデリック・ロック、フォークロック、そしてThe Velvet Undergroundの冷えた反復性を、ポストパンク以降の感覚で再構成したアルバムである。

The Dream Syndicateは、Steve Wynnを中心に結成されたバンドであり、本作ではWynnの乾いたヴォーカルとソングライティング、Karl Precodaの鋭くノイジーなギター、Kendra Smithの無機質で存在感のあるベース、Dennis Duckのタイトで荒々しいドラムが強い緊張関係を作っている。後年のオルタナティヴ・ロックやインディー・ロックに比べると録音は粗いが、その粗さこそが本作の生命線である。洗練よりも衝動、完成度よりも瞬間の熱、整ったサウンドよりも不安定な化学反応が重視されている。

タイトルの『The Days of Wine and Roses』は、優雅さや過ぎ去った幸福を思わせる言葉でありながら、アルバムの音楽は決して甘美な懐古趣味ではない。むしろ、ここで鳴っているのは、酩酊、記憶、失望、欲望、倦怠、若さの苛立ちが混ざり合った音である。1960年代ロックへの参照は明確だが、The Dream Syndicateは単に過去を再現しているわけではない。彼らは、サイケデリック・ロックやガレージ・ロックの未整理なエネルギーを、1980年代初頭の地下ロックの感覚で再点火している。

1980年代初頭のアメリカでは、メインストリームではニューウェイヴ、AOR、ハードロック、MTV向けのポップが力を持っていた。一方、地下ではR.E.M.、Hüsker Dü、Mission of BurmaThe Replacements、Minutemenなどが、後のオルタナティヴ・ロックにつながる新しいギター・ミュージックを作り始めていた。The Dream Syndicateはその中で、パンクの速度や直接性よりも、The Velvet UndergroundやTelevisionに通じる反復、即興、ギターの摩擦を重視した。結果として本作は、アメリカン・インディー・ロックが「パンク以後のギター・ロック」をどう展開するかを示す初期の重要作となった。

ペイズリー・アンダーグラウンドという文脈では、The Bangles、Rain Parade、Green on Red、The Three O’Clockなどと並べて語られることが多い。しかしThe Dream Syndicateの音楽は、その中でも特に荒々しく、神経質で、都市的な不穏さを持っている。サイケデリックといっても、色彩豊かで夢見心地なものではなく、むしろ夜の路地で増幅されたギター・ノイズのような冷たさがある。The ByrdsやLoveのような西海岸の響きを遠くに感じさせつつも、本作の核にあるのはThe Velvet Undergroundの反復美学と、Televisionの鋭角的なギター・インタープレイである。

日本のリスナーにとって『The Days of Wine and Roses』は、オルタナティヴ・ロック前夜の重要なギター・アルバムとして聴くことができる。Nirvana以降の90年代オルタナティヴを入口にしたリスナーにとっては、その前段階にあった地下ロックの緊張感を知る手がかりとなる。また、The Velvet UndergroundPatti Smith Group、Television、R.E.M.、Yo La Tengo、Sonic Youth、Galaxie 500などに関心がある場合、本作はそれらをつなぐ中間地点として非常に重要である。メロディの美しさよりも、ギターのざらつき、反復の陶酔、バンドが崩れそうで崩れない瞬間のスリルを味わう作品である。

全曲レビュー

1. Tell Me When It’s Over

オープニング曲「Tell Me When It’s Over」は、アルバム全体のムードを一気に提示する楽曲である。タイトルは「終わったら教えてくれ」という意味を持ち、すでに何かに疲れ切っている人物の視点を感じさせる。始まりの曲でありながら、歌詞の感触は終わりを待つような倦怠に満ちている。この矛盾が、The Dream Syndicateらしい不安定な魅力を生んでいる。

サウンドは、乾いたギターのカッティングと反復的なリズムを軸に進む。派手なイントロで聴き手をつかむというより、徐々に緊張を積み上げていく構造である。Steve Wynnのヴォーカルは、熱唱というよりも投げやりで、やや冷めた語り口に近い。しかしその冷たさの下には、確かな苛立ちと切迫感がある。彼の歌は感情を直接爆発させるのではなく、抑え込まれた感情が言葉の隙間から漏れてくるように響く。

歌詞のテーマは、関係の終わり、感情の消耗、あるいは状況から抜け出せない閉塞感として読める。「終わったら教えてくれ」という言葉には、主体的に何かを変えようとする意志よりも、すでに疲弊し、外部からの合図を待っているような感覚がある。1980年代初頭の地下ロックには、1970年代パンクの怒りとは異なる、冷えた諦念や都市的な無力感がしばしば表れる。この曲もその感覚に近い。

音楽的には、The Velvet Underground的なミニマルな反復と、Television以降のギター・ロックの神経質な線が交差している。リズムはシンプルだが、ギターの質感が曲にざらつきを与え、バンド全体を常に不安定な状態に保っている。アルバムの入口として、The Dream Syndicateが単なる60年代復古バンドではなく、過去のロック語法を80年代の緊張感で再構築していたことを示す重要な一曲である。

2. Definitely Clean

「Definitely Clean」は、タイトルからして皮肉を含んだ楽曲である。「明らかにクリーン」という言葉は、潔白、正常、健全さを意味するようでありながら、曲の音や歌詞の空気はむしろその反対を感じさせる。The Dream Syndicateは、清潔さや整合性よりも、ノイズ、曖昧さ、感情の汚れを音楽の中に取り込むバンドであり、この曲ではその姿勢が端的に表れている。

サウンドは比較的軽快に進むが、ギターの音色には鋭さがあり、曲全体にどこか落ち着かない感触がある。Kendra Smithのベースは過度に動きすぎず、楽曲の骨格を冷静に支える。Dennis Duckのドラムは派手ではないが、ロックンロールの推進力を保ちながら、曲を必要以上に整えすぎない。バンド全体が、きれいにまとまることをあえて拒んでいるように聴こえる。

歌詞では、自分の状態や相手との関係を「クリーン」と言い切ろうとする感覚が見えるが、その言葉には疑わしさがつきまとう。人はしばしば、自分が問題ないことを強調することで、かえってその問題の存在を露呈する。この曲における「clean」も、純粋さや安全さの証明というより、自己弁護や皮肉として機能している。

音楽的には、ガレージ・ロック的な直線性と、ポストパンク的な乾いた感覚が同居している。メロディは比較的明快だが、演奏は滑らかではない。この引っかかりこそが本作の重要な要素である。The Dream Syndicateの曲は、ポップ・ソングの骨格を持ちながら、その表面をノイズや不穏さで削り取ることで独自の質感を生み出している。「Definitely Clean」は、そのバランスがよく出た楽曲である。

3. That’s What You Always Say

「That’s What You Always Say」は、The Dream Syndicateの初期を代表する楽曲のひとつであり、本作の中でも特に鋭いギター・ロックとして機能している。タイトルは「君はいつもそう言う」という意味を持ち、相手への不信、諦め、反復される会話の空虚さを示している。言葉は繰り返されるが、そこに新しい意味はない。その感覚が、曲の反復的な構造と強く結びついている。

楽曲は、切れ味のあるギターとタイトなリズムによって前進する。Karl Precodaのギターは、きれいに整えられたロック・リフというより、ノイズを含んだ鋭い線として曲を切り裂く。Steve Wynnのヴォーカルは、感情を爆発させる手前で抑えられており、その抑制がかえって緊張感を増している。

歌詞のテーマは、会話の停滞である。相手はいつも同じことを言う。自分もまた、それを聞き続けている。そこには関係の進展ではなく、反復による消耗がある。このような心理的な反復は、The Dream Syndicateの音楽的な反復とよく対応している。リフやリズムが繰り返されることで、同じ場所をぐるぐる回っているような感覚が生まれる。

この曲には、The Velvet Undergroundの影響が明確に感じられる。特に、単純なコードやリズムを反復しながら、ギターのノイズとヴォーカルの冷たさで緊張を作る手法は、彼らの美学に近い。ただし、The Dream Syndicateはそれを1980年代ロサンゼルスの地下ロックとして再生している。音はより荒く、テンションはより直接的である。

「That’s What You Always Say」は、アルバム序盤の中核であり、本作が持つ怒り、倦怠、反復、ノイズの要素を凝縮した一曲である。ポップなサビや明確な解決を求める曲ではなく、同じ言葉と同じ感情が繰り返されること自体を音楽化している。

4. Then She Remembers

「Then She Remembers」は、記憶をめぐる楽曲であり、本作の中でもやや物語性を感じさせる曲である。タイトルは「そして彼女は思い出す」という意味を持ち、過去が現在へ不意に侵入してくる瞬間を示している。The Dream Syndicateの歌詞は明確なストーリーを語るというより、断片的な場面や感情を提示することが多いが、この曲でも記憶の断片が楽曲の中心に置かれている。

サウンドは、性急で荒々しいエネルギーを持っている。ギターは鋭く、リズムは前のめりで、曲全体が短時間で駆け抜けるような印象を与える。The Dream Syndicateはジャム的な拡張を得意とする一方で、このようにコンパクトなガレージ・ロックとしても強い説得力を持つ。この曲では、パンク以降の簡潔さと、60年代ガレージの粗さが結びついている。

歌詞では、女性が何かを思い出す瞬間が描かれるが、その記憶が具体的に何であるかははっきりしない。重要なのは、思い出すという行為そのものが感情を動かす点である。忘れていたもの、忘れたかったもの、あるいは忘れたふりをしていたものが戻ってくる。そこには、過去の恋愛、裏切り、若さの失敗、失われた時間など、さまざまな読みが可能である。

音楽的には、曲のスピード感が記憶の突然性を表しているようにも聴こえる。記憶はゆっくり整理されるものではなく、ある瞬間に急に襲ってくる。この曲の性急な演奏は、その心理的な瞬間を反映している。アルバムの中では短く鋭いアクセントとなっており、作品全体の緊張感を高めている。

5. Halloween

「Halloween」は、本作の中でも特に暗く、サイケデリックで、幻覚的な雰囲気を持つ楽曲である。タイトルの「ハロウィン」は、仮装、死者、恐怖、境界の曖昧さ、現実と非現実の交錯を連想させる。The Dream Syndicateはこの曲で、ガレージ・ロックの粗さとサイケデリックな不穏さを濃密に結びつけている。

サウンドはゆっくりと不吉に進む。ギターは空間を埋めるように歪み、リズムは重く、ヴォーカルはまるで夢の中から聞こえるように響く。ここでのサイケデリアは、明るくカラフルなものではない。むしろ、暗い部屋、夜の街、曖昧な記憶、現実が少しずつ歪んでいく感覚に近い。1960年代サイケデリック・ロックの影響を受けながらも、80年代地下ロックの冷えた不安が強く出ている。

歌詞のテーマは、変装と正体、恐怖と遊戯、現実逃避と不安の境界にある。ハロウィンは、人が別の何かになれる日である。しかし、その仮装は単なる楽しさだけでなく、本当の自分を隠す行為でもある。The Dream Syndicateの文脈では、仮面をつけることは自己解放であると同時に、自己喪失でもある。この曖昧さが楽曲の不気味さを支えている。

音楽的には、ギターの響きが非常に重要である。Karl Precodaの演奏は、メロディを明快に支えるというより、曲全体に影を落とすノイズとして機能している。リズム隊はその不穏さを支え、Steve Wynnのヴォーカルは物語を語るというより、夢の断片をつなぐ役割を果たす。

「Halloween」は、アルバムの中盤における重要な深部である。序盤のガレージ・ロック的な鋭さから、より幻覚的で暗い領域へと聴き手を引き込む。The Dream Syndicateが単にロックンロールを鳴らすバンドではなく、心理的な不安や夢の歪みを音にできるバンドであることを示す楽曲である。

6. When You Smile

「When You Smile」は、タイトルだけを見ると親密で穏やかなラブソングのように思えるが、実際にはThe Dream Syndicateらしい不安定さを持った楽曲である。「君が笑うとき」という言葉には、一見すると幸福や魅力が含まれる。しかしこの曲では、その笑顔が安心よりも謎や危うさを生み出しているように響く。

サウンドは比較的メロディアスで、アルバムの中でも聴きやすい部類に入る。だが、ギターの響きには引っかかりがあり、曲全体は完全には穏やかにならない。The Dream Syndicateの美点は、ポップな旋律やロマンティックな題材を扱う場合でも、そこに不安やざらつきを残すことにある。この曲でも、笑顔という肯定的なイメージが、どこか信用できないものとして提示されている。

歌詞では、相手の笑顔が語り手に与える影響が描かれる。笑顔は相手の本心を示すものかもしれないが、逆に何かを隠す仮面かもしれない。人間関係において、表情はしばしば言葉以上に強い意味を持つが、その意味は必ずしも明確ではない。この曲は、その曖昧さをロック・ソングとして表現している。

音楽的には、The Byrdsや初期R.E.M.にも通じるギター・ポップ的な要素がかすかに感じられる。ただし、The Dream Syndicateの場合、透明感よりも歪みが強く、フォークロック的な軽やかさよりも地下ロックの緊張感が勝っている。メロディは魅力的だが、演奏は常に少し軋んでいる。

「When You Smile」は、アルバムの中でThe Dream Syndicateのポップな側面を示しながらも、そのポップさを決して安全なものにしない曲である。愛情、魅力、疑念、不安が同時に存在し、笑顔という単純なモチーフの中に複雑な感情を忍ばせている。

7. Until Lately

「Until Lately」は、本作の中でも特に反復と緊張が強く作用する楽曲である。タイトルは「最近までは」という意味を持ち、ある時点を境に状況や認識が変化したことを示している。過去と現在の間にあるズレ、気づいてしまったこと、変わってしまった関係が曲の中心にある。

サウンドは、じわじわと圧力を高めていくタイプである。即効性のあるフックよりも、演奏の積み重ねによって聴き手を引き込む。The Dream Syndicateは、シンプルなコードやリフを繰り返しながら、ギターのノイズやリズムの揺れによって曲の表情を変えていく。この手法はThe Velvet Undergroundからの影響を感じさせるが、よりアメリカン・ガレージ的な荒さもある。

歌詞では、以前は見えていなかったものが最近になって見えてきた、という感覚が読み取れる。人間関係において、ある日突然、相手の言葉や行動の意味が違って見えることがある。あるいは、自分自身の状況に対する認識が変わることもある。「Until Lately」という言葉は、そのような遅れてやってくる理解を示している。

音楽的には、反復が心理的な圧迫感を生む。曲が進むにつれて、同じフレーズが少しずつ重みを増し、逃げ場のない空気が濃くなる。The Dream Syndicateの音楽におけるジャム的な要素は、技巧を見せるためではなく、感情を持続させるためにある。この曲では、その持続が不安と緊張を作っている。

「Until Lately」は、アルバム後半の暗い推進力を担う曲である。表面的には派手ではないが、The Dream Syndicateの音楽的な本質である反復、ノイズ、心理的なズレが深く刻まれている。

8. Too Little, Too Late

「Too Little, Too Late」は、タイトル通り「少なすぎて、遅すぎる」という後悔や諦念を示す楽曲である。本作の中では、Kendra Smithがヴォーカルを取ることで、アルバムに異なる質感をもたらしている。彼女の声は、Steve Wynnの乾いた語り口とは異なり、より無表情で、冷たく、どこか遠くから響くような存在感を持つ。

サウンドは比較的抑制されており、曲の感情は大きく爆発しない。むしろ、すでに何かが終わってしまった後の静けさがある。タイトルが示すように、ここで描かれるのは、何かを取り戻そうとしてももう間に合わない状態である。感情は残っているが、状況はすでに動かない。その諦めが、曲全体に冷たい美しさを与えている。

歌詞のテーマは、遅れて差し出された謝罪や愛情、あるいは不十分な努力への失望として読むことができる。人間関係では、必要な言葉や行動が適切な時に与えられなければ、後からどれほど取り戻そうとしても届かないことがある。この曲は、その不可逆性を静かに描いている。

Kendra Smithのヴォーカルは、感情を露骨に表現しないため、かえって曲の冷えた傷が際立つ。彼女は後にOpalやMazzy Star周辺のドリーミーでサイケデリックな音楽にも関わることになるが、この曲にはその後の幽玄な感覚の萌芽も感じられる。The Dream Syndicateの中では異色のムードを持つ曲であり、アルバムに奥行きを加えている。

「Too Little, Too Late」は、本作の激しいギター・ロック面とは対照的に、静かな断絶を描く楽曲である。大きな音で壊れる関係ではなく、すでに冷えきってしまった関係の余白を示している点で、非常に重要な位置にある。

9. The Days of Wine and Roses

アルバムのラストを飾る表題曲「The Days of Wine and Roses」は、本作のクライマックスであり、The Dream Syndicateの初期を象徴する名演である。タイトルは優雅で懐古的な響きを持つが、曲そのものは激しく、長尺で、崩壊寸前のエネルギーに満ちている。この落差が、アルバム全体の美学を決定づけている。

楽曲は、単なるポップ・ソングの構造を超え、反復と即興的なギターの応酬によって徐々に熱を帯びていく。Karl Precodaのギターは、メロディを支えるというより、曲を破壊しかねないノイズの塊として鳴る。Steve Wynnのヴォーカルは、物語を語るというより、バンド全体の高まる緊張の中で言葉を投げつけるように響く。リズム隊はその混乱を支え、演奏が完全に崩れる手前で踏みとどまる。

歌詞のテーマは、過ぎ去った快楽、記憶、喪失、酩酊、若さの幻影として読むことができる。「ワインと薔薇の日々」という言葉は、甘美な過去を思わせる。しかしこの曲では、その過去は美しいだけではなく、苦く、騒々しく、破滅的である。喜びの記憶は、同時に失われたものへの痛みを伴う。The Dream Syndicateは、この矛盾を言葉よりも演奏の激しさで表現している。

音楽的には、The Velvet Undergroundの長尺ジャム、Televisionのギターの緊張、Neil Young & Crazy Horseの荒々しい即興性などを連想させる。だが、The Dream Syndicateの演奏には、より若く、より無謀な勢いがある。録音の粗さも含めて、曲は整った完成品というより、その場で燃え上がる出来事として存在している。

アルバムの最後にこの曲が置かれることで、『The Days of Wine and Roses』は単なる曲集ではなく、最後にすべてを燃やし尽くすような作品として完結する。序盤から積み上げられてきた不信、記憶、倦怠、仮面、後悔が、ここでギター・ノイズの嵐として解放される。これは美しい終幕ではなく、騒音と熱の中で過去を葬るような終幕である。

総評

『The Days of Wine and Roses』は、1980年代アメリカン・インディー・ロックの重要な起点のひとつである。商業的な大ヒット作ではないが、その後のオルタナティヴ・ロック、ノイズ・ロック、ネオ・サイケデリア、インディー・ギター・ロックに与えた影響は大きい。The Dream Syndicateは、1960年代ロックへの敬意を持ちながらも、懐古的な再現に留まらず、過去の音を現在の地下ロックの緊張感で鳴らし直した。

本作の中心にあるのは、ギターの摩擦と反復の陶酔である。The Dream Syndicateの楽曲は、必ずしも複雑なコード進行や緻密なアレンジで聴かせるものではない。むしろ、シンプルな構造を反復し、その中でギターのノイズ、ヴォーカルの倦怠、リズムの推進力をぶつけることで、独特の緊張を生み出している。この手法はThe Velvet Undergroundからの影響を明確に感じさせるが、The Dream Syndicateはそれをよりガレージ・ロック的で、よりアメリカ西海岸の地下シーンらしい荒さへ変換している。

歌詞の面では、明確なストーリーテリングよりも、関係性の崩壊、記憶の断片、倦怠、皮肉、不信、酩酊といった心理状態が重視されている。「Tell Me When It’s Over」では始まりからすでに終わりを待つ感覚があり、「That’s What You Always Say」では反復される言葉への疲労が描かれる。「Halloween」では仮面と恐怖のイメージがサイケデリックに広がり、「Too Little, Too Late」では取り返しのつかなさが冷たく示される。そして表題曲では、過ぎ去った快楽と破壊的な現在がギター・ノイズの中で衝突する。

バンド・アンサンブルの面でも、本作は非常に重要である。Steve Wynnのソングライティングは、パンク以後のシンプルさと60年代ロックへの愛着を併せ持っている。Karl Precodaのギターは、本作を単なるフォークロック復興作にしない決定的な要素であり、鋭いノイズと制御不能寸前の演奏でアルバム全体に危険な空気を与えている。Kendra Smithのベースは冷静で、時に無表情な硬さを持ち、Dennis Duckのドラムは楽曲を荒々しく前へ進める。この四人の緊張関係が、本作の独自性を作っている。

ペイズリー・アンダーグラウンドという括りで見ると、本作はその中でも最も攻撃的で暗い部類に入る。The BanglesやThe Three O’Clockのようなポップな側面、Rain Paradeの夢見心地なサイケデリアとは異なり、The Dream Syndicateはよりノイズと緊張を強く押し出した。彼らのサイケデリアは、花や光ではなく、夜、酒、記憶、苛立ち、都市の埃に近い。その意味で本作は、ペイズリー・アンダーグラウンドの多様性を示すと同時に、後のインディー・ロックに直結する粗いギター・サウンドを提示した作品でもある。

1980年代以降の音楽史において、『The Days of Wine and Roses』は、R.E.M.とは別の形でアメリカン・インディー・ロックの可能性を開いたアルバムと言える。R.E.M.がフォークロック的なメロディと曖昧な叙情で新しいギター・バンド像を作ったのに対し、The Dream Syndicateは反復、ノイズ、即興、ガレージ感覚によって別の道を示した。その道は、後のSonic Youth、Yo La Tengo、Galaxie 500、The War on Drugs、さらには多くのネオ・サイケ/インディー・ロック・バンドへと続いていく。

日本のリスナーにとって本作は、最初は録音の粗さや演奏のざらつきが気になるかもしれない。しかし、整った音像ではなく、バンドがその場で発火しているような生々しさに耳を向けると、その魅力は非常に大きい。ギター・ロックがまだメインストリームの形式に回収される前、地下の小さな空間で過去のロックの亡霊と新しい時代の苛立ちがぶつかっていた瞬間が、本作には記録されている。

総じて『The Days of Wine and Roses』は、粗削りで、危うく、しかし決定的な力を持つデビュー・アルバムである。完成度の高さよりも、時代の裂け目から現れたような緊張感が重要であり、その不安定さこそが作品の価値である。ワインと薔薇の日々という優雅な言葉の裏で鳴っているのは、過去への憧れと現在への苛立ちが混ざり合った、若いバンドの燃えるようなギター・ノイズである。

おすすめアルバム

1. The Velvet Underground『The Velvet Underground & Nico』

The Dream Syndicateの反復的な構造、冷えたヴォーカル感覚、ノイズを含んだギター表現を理解するうえで欠かせない作品。ロックにおける都市的な倦怠、不穏な物語、ミニマルな反復の力を決定的に示したアルバムであり、『The Days of Wine and Roses』の精神的な源流のひとつである。

2. Television『Marquee Moon』

鋭角的なギターの絡み合いと、長尺の緊張感を持つニューヨーク・ロックの名盤。The Dream Syndicateのギター・インタープレイや、ロックンロールを知的で神経質な方向へ引き伸ばす感覚と強く関連している。表題曲の拡張的な演奏は、The Dream Syndicateの長尺ジャムを理解する手がかりになる。

3. Rain Parade『Emergency Third Rail Power Trip』

同じペイズリー・アンダーグラウンドを代表する作品。The Dream Syndicateよりも柔らかく、夢見心地なサイケデリック・ポップの側面が強い。1960年代西海岸ロックへの憧れを、1980年代のインディー感覚で再構築している点で共通するが、より幻想的でメロディアスな方向性を持つ。

4. R.E.M.『Murmur』

1980年代アメリカン・インディー・ロックのもう一つの重要な起点。The Dream Syndicateがノイズと反復を重視したのに対し、R.E.M.は曖昧な歌詞、フォークロック的なギター、内向的なメロディで新しいギター・バンド像を提示した。両作を並べて聴くことで、80年代初頭のアメリカ地下ロックの広がりが見える。

5. Green on Red『Gravity Talks』

The Dream Syndicateと同じペイズリー・アンダーグラウンド周辺に位置するバンドの作品。サイケデリックな質感に加え、よりルーツ・ロックや荒涼としたアメリカーナの感覚が強い。The Dream Syndicateの都市的な緊張とは異なるが、同時代の西海岸地下ロックが持っていた60年代回帰と新しい荒さを理解するうえで関連性が高い。

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