アルバムレビュー:Time and Tide by Split Enz

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

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発売日: 1982年4月19日
ジャンル: ニューウェイヴ、アートポップ、ポップロック、プログレッシブ・ポップ

概要

『Time and Tide』は、Split Enzが1982年にリリースした7作目のスタジオ・アルバムであり、バンドの芸術性と大衆性が最も美しく交差した、“海と時間”をめぐる詩的なコンセプト・アルバムである。
本作では、メロディアスなポップ・アプローチを維持しながらも、より内省的かつ幻想的な楽曲構成が施され、バンドの創作力が頂点に達した瞬間が記録されている

アルバムタイトル「Time and Tide(時と潮)」が示す通り、作品全体には潮の流れのように移ろう感情や、時間による変化、失われゆくものへの追憶が通奏低音として流れている。
この時期のSplit Enzは、前作『Waiata / Corroboree』で築いた人気と商業的成功を背景に、より芸術性を追求する姿勢へと大胆に踏み込んでおり、ポップ・バンドでありながら深い精神性と物語性を備えた作品に仕上がっている

全編を通じて、ニール・フィンとティム・フィンのソングライティングが見事に対話し合い、ファンタジーと現実、内面と風景、喜びと痛みが波のように押し寄せる
オーストラリア/ニュージーランドではチャート1位を記録し、Split Enzの芸術的到達点として高く評価され続けている。

全曲レビュー

1. Dirty Creature

ファンク要素を取り入れたグルーヴィーなナンバー。
“汚れたクリーチャー”というメタファーは、不安や鬱といった内なる怪物を象徴しており、精神的闘いをポップに昇華した傑作
ティム・フィンの表現力とバンドのアンサンブルが鋭く交錯する。

2. Giant Heartbeat

タイトル通り、人生や感情の“鼓動”を描いたミッドテンポのナンバー。
ニール・フィンらしい透明感のあるメロディと内省的リリックが際立ち、大きな時のうねりの中での個人の存在をしみじみと感じさせる。

3. Hello Sandy Allen

実在する世界一背の高い女性“Sandy Allen”にインスパイアされた、シュールで愛らしいポップソング。
異質な存在への優しさと憧れが描かれ、ニール・フィンのソングライターとしての柔らかさと独創性が光る。

4. Never Ceases to Amaze Me

ティム・フィンが描く皮肉とユーモアの交錯した世界。
音楽的には軽やかで陽気ながらも、リリックには常に“驚かされる世界”への懐疑と戸惑いが見え隠れする。
表層の明るさと内面の複雑さの二重奏

5. Lost for Words

失語=言葉を失う瞬間をテーマにしたニールのバラード。
淡いキーボードと慎ましやかなボーカルが、沈黙と感情の間に漂う微妙な感覚を丁寧に描写。
このアルバムの“静けさ”の象徴でもある。

6. Small World

ポップでありながら内省的なティム・フィンのナンバー。
“世界は小さい”という言葉の裏にある、人間関係の近さ・遠さの心理的距離を詩的に捉えている。
テンポ感とメロディのバランスが心地よい。

7. Take a Walk

ニール・フィンらしい、浮遊感あるサウンドと時間の感覚を主題にした名曲
日常のなかに潜む内なる旅を描き出し、抒情とポップの両面が美しく響き合う。
コーラスの多重録音も印象的。

8. Pioneer

インストゥルメンタル。
ピアノを主体とした短く美しい小曲で、“時間の間隙”を感じさせる静かな風景描写のようでもある。
アルバム全体に通じる“海の間”のような余韻を担う。

9. Six Months in a Leaky Boat

本作のハイライトであり、Split Enz最大の代表曲のひとつ。
オーストラリアからニュージーランドへの入植をモチーフにしながら、航海=人生の旅をテーマにしたスケールの大きなポップ叙事詩
海、時間、記憶がすべて交差する大作であり、誰もが耳に残すサビが印象的。

10. Haul Away

前曲の大波を受けて、静かに始まるアコースティックなバラード。
“引き上げろ”という号令が、過去との決別、あるいは感情の整理を象徴する。
ティム・フィンの感傷的で慈愛に満ちた歌声が胸を打つ。

11. Log Cabin Fever

不穏なリズムとサイケなコード進行で、閉塞感と孤立を描いた実験的ナンバー。
“山小屋に閉じこもって発狂する”というタイトル通り、閉じた空間での心理崩壊を演劇的に描写している。
Split Enzのアート的DNAが炸裂。

12. Make Sense of It

アルバムの締めくくりにふさわしい、意味を求める旅の終わりをテーマにしたナンバー。
音数は少なく、リリックも繰り返しが多いが、そこに滲む諦念と微かな希望が、アルバム全体を象徴している。

総評

『Time and Tide』は、Split Enzが音楽的にも思想的にも最も緻密に“アルバム”という形式を完成させた作品である。
一曲ごとの完成度はもちろん、全体としての構成、テーマ性、感情の流れが見事に統一されており、“アルバムを通して聴くこと”の意義を改めて思い出させてくれる

ポップの中に抒情を、ユーモアの中に深淵を。
Split Enzは本作で、芸術性と娯楽性の見事な均衡点に立ち、聴き手に海のように深く広がる“時間と潮”の感覚を静かに、そして強く刻みつけた。

おすすめアルバム(5枚)

  • Crowded House / Temple of Low Men
     ニール・フィンの内省性が深まった傑作。『Time and Tide』の精神的後継。
  • Prefab Sprout / Steve McQueen
     抒情とポップのバランス、そして時間の詩学が響き合う。
  • XTC / Skylarking
     構成美と季節感を持ったアルバム単位の名作。テーマと構成力が共鳴。
  • The Blue Nile / A Walk Across the Rooftops
     静けさと都市感覚の融合。Split Enzの叙情性と共振する空気感。
  • Peter Gabriel / Peter Gabriel (III)
     精神的リアリズムと音響的冒険心の融合。Split Enzの実験性と深部でつながる。

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