アルバムレビュー:Notorious by Joan Jett & The Blackhearts

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日: 1991年8月
ジャンル: ハードロック、ポップ・ロック、オルタナティブ・ロック


概要

Notorious』は、Joan Jett & The Blackheartsが1991年にリリースした7作目のスタジオ・アルバムであり、90年代という新しい時代に足を踏み入れるJoan Jettの“移行期”を刻んだ静かな野心作である。

1988年の大ヒット作『Up Your Alley』のあと、彼女はグランジやオルタナティブ・ロックが勃興するアメリカ音楽シーンの中で、“女性ロックの先駆者”としてのポジションを更新しようとした

『Notorious』では、従来のガレージ色やパンク・ロックの衝動はやや後退し、よりメロディアスで叙情的、そして成熟した音像と内省的なテーマが目立つようになっている。

プロデューサーは引き続きKenny Laguna、そしてJoan自身。加えてDon Was(Rolling Stones、Bonnie Raitt)とのコラボも一部に見られ、制作陣も重厚。

商業的にはヒットチャート上位には届かなかったが、グランジ前夜の静かな熱と、自らの美学を一歩ずつ更新しようとする強い意志を刻んだ、キャリアの中でも異色かつ重要なアルバムである。


全曲レビュー

1. Backlash

オープニングを飾るリード・シングル。

Big Audio DynamiteのMick Jonesと共作された楽曲で、Joan Jettの“怒り”と“冷静さ”が交錯する、大人の反抗ロック

ギターリフはタイトで、メロディもポップ寄りに整理されており、Joanの新たな方向性がこの時点で提示されている。

「痛みは跳ね返るのよ(Backlash)」というフレーズが、象徴的な開幕。

2. Ashes in the Wind

バラード調のナンバー。

燃え尽きた関係や夢を風に任せるようなイメージの歌詞が、Joanの声の中にある“諦念”と“前向きさ”を同時に引き出している

静かながら芯のある演奏と、ややフォーキーなアレンジも新鮮。

3. The Only Good Thing (You Ever Said Was Goodbye)

印象的なタイトルが示すように、別れを逆手に取った皮肉と解放のロック

Joanらしい強気なスタンスが戻ってきており、ドライなギターとシャウト気味のヴォーカルが爽快。

80年代的な“強さ”とは違う、90年代のクールな女ロッカー像がここにある。

4. Lie to Me

中音域で揺れるリズムとミニマルなコード進行が続く、ムーディーなトラック。

「どうせなら嘘をついて」と囁くようなJoanの声には、支配・依存・感情のねじれといった複雑な心理が込められている。

全体にオルタナティブ・ロック的な空気感があり、時代の変化を感じさせる一曲。

5. Don’t Surrender

タイトル通り、“諦めるな”というストレートなメッセージが込められたミッドテンポ・ロック。

Joanのキャリアの中でもとりわけ真っ直ぐで誠実な応援歌であり、その声の説得力が強く響く。

自己啓発的な側面もあるが、それ以上に人生を積み重ねてきた彼女だからこそ出せるトーンがある。

6. Notorious

アルバムのタイトル曲。

“悪名高い(Notorious)”という言葉を誇りとして掲げるこの曲は、Joan Jettのキャリアとパブリックイメージに対する自己言及的ロック

キャッチーなフックと反復されるリフはライブ映えも抜群で、「嫌われてもいい、それが私」というメッセージが痛快。

7. Treadin’ Water

疲れ果てながらも浮かび続ける──そんな心理を表した内省的ミディアムナンバー。

ギターは控えめ、Joanの声が主役。

水面を漂いながらも沈まない意志が、90年代の倦怠感と前向きさを象徴するような一曲。

8. I Want You

どこかThe Kinks的なユーモアを感じさせるリズムとリフが特徴的。

Joanの“欲望”が前面に出る珍しいタイプの楽曲で、セクシュアリティとユーモアが拮抗する絶妙なバランス

リスナーに対して開かれた曲調ながら、パーソナルな色合いも強い。

9. Wait for Me

恋人との距離、タイミングのズレをテーマにした切ないロック・バラード。

Joanの声はここでは驚くほど優しく、パンクスピリットとは別の“人としての弱さと願い”を表現している

終盤にかけて感情が膨らむ構成が美しい。

10. She Lost You

アルバム後半で急に現れる疾走系ロック。

“彼女は君を失ったけど、私は違う”という、恋愛の逆転劇を歌うJoanらしい勝気なナンバー

ガレージロック的で荒削りなギターサウンドが久々に炸裂し、アルバムに緩急を与えている。

11. Machismo

本作でもっとも異色な一曲。

タイトルが示すように“マッチョ主義”を皮肉る内容で、フェミニズム的スタンスが前面に出た歌詞と、重くインダストリアル風のビートが印象的。

Joan Jettが時代に対して何を思い、どんな位置に立っているかが凝縮された問題提起的トラック。


総評

『Notorious』は、Joan Jettにとって新しい時代にどう声を発するかを模索した転換点のアルバムである。

80年代の“Bad Reputation”や“I Love Rock ’n Roll”に代表されるヒロイン的イメージから一歩引いて、より多面的で内省的な自己像を描き出す構成となっている。

そのため一見地味に感じられるかもしれないが、そこにはJoan Jettの不変の信念と変化への対応力の両方が見事に刻まれている。

90年代的なサウンドやテーマを取り込みつつも、決して流行に飲まれない“Joan Jettらしさ”が貫かれた、静かで強靭なロック・アルバムなのだ。


おすすめアルバム(5枚)

  1. Melissa Etheridge – Never Enough (1992)
     内省とエネルギーを併せ持つ女性ロックの代表作。Joanの90s的路線と共鳴。

  2. Patty Smyth – Patty Smyth (1992)
     80sから90sへの移行を鮮やかに描いたポップ・ロックアルバム。

  3. HolePretty on the Inside (1991)
     Joanが切り開いた女性ロックの地平を引き継いだ、よりラフで攻撃的なサウンド。

  4. Chrissie Hynde – Packed! (1990)
     The Pretendersの中心人物によるソロ色の強い作。Joanと同じ“成熟の声”。

  5. Concrete Blonde – Bloodletting (1990)
     女性の影と強さを繊細に描く、ゴシックなオルタナ・ロックの隠れ名盤。

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