アルバムレビュー：Room on Fire by The Strokes

アルバムレビュー

2024.11.12

発売日: 2003年10月28日
ジャンル: ガレージロック、インディーロック

Room on Fireは、The Strokesが2001年のデビュー作Is This Itで築いたシンプルで鋭いサウンドをさらに洗練させた、2作目のアルバムである。デビュー作のヒットにより、一躍ニューヨークのロックシーンを象徴する存在となった彼らが、アルバム制作にあたって新たなプレッシャーに向き合いながらも、独自のガレージロックスタイルを貫き、進化を遂げている。前作に比べ、洗練されたメロディとより引き締まったサウンドが特徴で、Julian Casablancasのドライなボーカルと、Nick ValensiとAlbert Hammond Jr.による印象的なツインギターが一層際立つアルバムとなっている。

このアルバムでは、より洗練されたアレンジとクールな雰囲気が全体を通じて感じられるが、同時に前作から引き継がれるストレートでシンプルなエネルギーも健在である。「Reptilia」や「12:51」といった楽曲は、キャッチーでありながらもエッジが効いており、デビューアルバムで見せた鋭さがさらに強調されている。全体的に一貫したサウンドが保たれながらも、前作から確実な進化が感じられる作品である。

トラックごとの解説

1. What Ever Happened?
アルバムのオープニングを飾るナンバーで、疾走感のあるビートと哀愁漂うメロディが印象的。Casablancasのボーカルに込められた切なさと力強さが、リスナーを一気に引き込む。

2. Reptilia
アルバムの代表曲で、鋭いギターリフとエネルギッシュなビートが特徴的な一曲。攻撃的なサウンドと印象的なコーラスが絡み合い、The Strokesの真骨頂が感じられる。

3. Automatic Stop
リラックスしたリズムとミニマルなギターサウンドが心地よいトラック。恋愛の揺れる感情をテーマにした歌詞と、クールなメロディが魅力的で、落ち着いた雰囲気が漂う。

4. 12:51
シンセのようにエフェクトがかけられたギターリフが特徴的で、キャッチーなメロディが印象的。夜の都会の雰囲気を感じさせる一曲で、ポップでありながらもクールな印象。

5. You Talk Way Too Much
シンプルなビートとキャッチーなリフが際立つ楽曲で、タイトなリズムセクションが楽曲を引き締めている。ストレートで痛快な歌詞が印象的。

6. Between Love & Hate
落ち着いたビートに、軽やかなギターが交差するバラード風の楽曲。Casablancasのボーカルが感情を抑えつつも切実さを感じさせ、心地よい余韻を残す。

7. Meet Me in the Bathroom
少し攻撃的なリフが際立ち、リズミカルなビートが楽曲を盛り上げる。ローファイな質感と都会的なクールさが融合した一曲で、バンドの個性が光る。

8. Under Control
バンドのメロディアスな一面が際立つスローテンポな曲で、ポップでありながらも哀愁が漂う。シンプルなアレンジが、歌詞のテーマに深みを持たせている。

9. The Way It Is
独特なギターフィルとリズムが印象的で、クールで都会的なムードを醸し出している。力強いビートとどこかメランコリックなメロディが心地よい。

10. The End Has No End
エネルギッシュなリズムとキャッチーなサビが際立つ、アルバムの中でも特に耳に残る楽曲。反復するメロディがクセになり、アルバムのハイライトとも言える。

11. I Can’t Win
アルバムのラストを飾る軽快なロックナンバーで、開放感と希望が感じられる一曲。アップテンポでありながらも、どこか哀愁が漂うフィナーレにふさわしい楽曲。

アルバム総評

Room on Fireは、The Strokesがデビュー作の勢いを保ちながら、より洗練されたアプローチを見せたアルバムである。シンプルで直球なエネルギーに加え、クールで練り上げられたアレンジが施され、バンドとしての成長が感じられる。リスナーを引き込むキャッチーなフックと無駄のないアレンジがアルバム全体に貫かれており、前作に比べて大人びた印象も与える。また、「Reptilia」や「12:51」など、ライブでも人気の高い楽曲が多く収録されており、The Strokesのファンにとっても新鮮な驚きと楽しさが詰まった作品である。ガレージロックリバイバルの象徴的な一枚として、今も多くのリスナーに愛されている。