アルバムレビュー:Twice Removed from Yesterday by Robin Trower

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1973年3月

ジャンル:ブルース・ロック、ハードロック、サイケデリック・ロック、ブリティッシュ・ブルース、ギター・ロック

概要

Robin Trowerの『Twice Removed from Yesterday』は、1973年に発表されたソロ名義でのデビュー・アルバムであり、Procol Harumのギタリストとして知られていたTrowerが、自身のギター表現を前面に押し出して新たな音楽的アイデンティティを確立した重要作である。Procol Harum時代のTrowerは、「A Whiter Shade of Pale」に代表されるバロック・ロック、クラシカルなオルガン・サウンド、文学的な歌詞を持つバンドの中で、ブルース色の強いギターを担っていた。しかし、ソロ活動に入った彼は、より直接的にブルース、ハードロック、サイケデリックな音響、そしてJimi Hendrix以後のエレクトリック・ギター表現へ向かっていく。

『Twice Removed from Yesterday』は、その第一歩である。後に発表される代表作『Bridge of Sighs』ほどの完成度や神秘的な統一感を持つわけではないが、Trowerのソロ・サウンドの核はすでにここにある。深く歪んだストラトキャスターのトーン、ワウやヴィブラートを用いた揺れるギター、重すぎないが確実に沈み込むリズム、ブルースを基盤にしながら宇宙的な広がりを持つ音像。そのすべてが、本作で明確に提示されている。

本作を語るうえで避けられないのが、Jimi Hendrixとの関係である。Robin Trowerはしばしば「英国のHendrix系ギタリスト」として語られる。実際、本作でもHendrixを思わせる音色、フレージング、コード感、空間処理が随所に現れる。しかしTrowerは単なる模倣者ではない。Hendrixが持っていた激しい身体性、ファンク的なリズム、黒人音楽の深い根をそのまま再現するのではなく、Trowerはそれを英国ブルース・ロックの憂い、やや内向的な叙情性、重く曇った空気の中へ移し替えた。彼のギターは炎のように爆発するというより、煙のように広がり、青い炎のように揺れる。

また、本作で重要なのは、Trowerがヴォーカルを担当していない点である。歌を担うのはJames Dewarである。彼の声は非常にソウルフルで、低く太く、ブルース・ロックに深い人間味を与える。Dewarのヴォーカルがあることで、Trowerのギターは単なる技巧の披露ではなく、歌と呼応する表現として機能している。彼の声は、Trowerのサイケデリックなギターに土の匂いを与え、曲を現実の身体へ引き戻す役割を果たしている。

リズム面では、Reg Isidoreのドラムも本作の雰囲気を大きく支えている。彼のドラムは、ハードロック的に直線的に叩きつけるだけではなく、ブルースやソウル由来の揺れを持つ。Trowerのギターが空間を広げ、Dewarの声が歌の芯を作り、Isidoreのドラムが曲に柔らかい重心を与える。このトリオのバランスが、『Twice Removed from Yesterday』の独特な音を作っている。

タイトルの『Twice Removed from Yesterday』も象徴的である。直訳すれば「昨日から二度引き離されて」といった意味合いになり、過去から距離を取ること、以前の自分から離れることを連想させる。Procol Harumという過去から離れ、さらに昨日の自分からも離れて、新しいギター・ミュージックへ進む。アルバム全体には、過去のブルースへの敬意と、そこから別の場所へ向かおうとする意志が同時に存在している。

1973年という時代を考えると、本作は英国ブルース・ロックの流れが、ハードロック、サイケデリック、プログレッシヴな音響へ広がっていく中に位置づけられる。Cream、Free、Hendrix、Ten Years After、初期Fleetwood Mac、Taste、そしてDeep PurpleやLed Zeppelin以後の重いロック。その文脈の中でTrowerは、派手なリフや大仰な構成よりも、ギターのトーンそのものを中心にした音楽を作った。『Twice Removed from Yesterday』は、ギターという楽器が、歌うこと、泣くこと、揺らぐこと、空間を変えることを示したアルバムである。

全曲レビュー

1. I Can’t Wait Much Longer

オープニング曲「I Can’t Wait Much Longer」は、アルバムの始まりにふさわしく、Trowerのソロ・サウンドの方向性を力強く提示する楽曲である。タイトルは「もうこれ以上待てない」という切迫感を持ち、曲全体にも抑えきれない感情が流れている。これは恋愛の歌としても読めるが、同時にTrower自身が新しい音楽へ踏み出す衝動としても響く。

サウンドはゆったりとしたブルース・ロックを基盤にしながら、ギターの音色が非常に濃い。Trowerのギターは、単にコードを刻むのではなく、曲の空気そのものを作る。音は太く、湿り、ヴィブラートが深い。James Dewarのヴォーカルは、そのギターの揺れに対して、ソウルフルで落ち着いた重みを与えている。

歌詞では、待ち続けることへの苛立ちと、もう限界に近い感情が描かれる。ブルースにおいて「待つ」ことは、恋愛の苦しみだけでなく、人生そのものの停滞感とも結びつく。この曲では、その焦燥が派手なスピードではなく、重く揺れるグルーヴによって表現されている。「I Can’t Wait Much Longer」は、本作がギターの音色と感情の持続を重視するアルバムであることを示す導入曲である。

2. Daydream

「Daydream」は、タイトル通り白昼夢を思わせる楽曲であり、本作の中でも特にサイケデリックで浮遊感のある一曲である。Robin Trowerのギターは、ここで非常に夢幻的に響く。ブルースを土台にしながらも、曲は酒場や路上ではなく、意識の中の曖昧な空間へ入っていく。

サウンドはゆったりとしており、ギターのトーンが大きな役割を果たす。Trowerは音数を詰め込まず、一音一音を伸ばし、揺らし、残響の中に漂わせる。Dewarのヴォーカルも穏やかで、曲全体に霞んだような美しさを与えている。Reg Isidoreのドラムは控えめながら、夢の中で脈打つようなリズムを保つ。

歌詞では、現実から少し離れて夢想する感覚が描かれる。白昼夢は逃避であると同時に、現実では得られない感情や記憶へ触れる場所でもある。「Daydream」は、Trowerのギターが単なるブルース・ロックの道具ではなく、心理的な風景を描く楽器であることを示している。本作の中でも特に美しいサイケデリック・ブルースである。

3. Hannah

「Hannah」は、人物名をタイトルにしたブルース・ロックであり、Trowerの音楽における人間的な情感が強く表れた楽曲である。Hannahという女性名は、ブルースの伝統における名前を持つ相手、つまり愛情、欲望、後悔、執着の対象として機能する。具体的な物語が明確に語られなくても、名前があることで曲は一気に親密な空気を帯びる。

サウンドはやや重く、ギターのリフにはブルースの粘りがある。Trowerのギターは、ここでも非常に歌っている。短いフレーズの中に、言葉では語られない感情が込められている。Dewarの声は深く、Hannahという人物への呼びかけに説得力を与える。

歌詞では、Hannahという相手に向けられた感情が描かれる。そこには愛情と不安、距離と欲望が混ざっている。Trowerの音楽では、恋愛は明るい幸福というより、ブルース的な苦さを含むものとして表現される。「Hannah」は、本作の中で最もストレートにブルース・ロックの情感を感じさせる楽曲のひとつである。

4. Man of the World

「Man of the World」は、Peter Green時代のFleetwood Macによる名曲のカヴァーである。原曲は、成功や世界を知ることの裏にある深い孤独を歌った楽曲であり、英国ブルース・ロックの中でも特に内省的な名作として知られる。Trowerがこの曲を取り上げたことは非常に意味深い。彼はここで、ブルースを単なる形式ではなく、精神的な孤独の表現として捉えている。

サウンドは非常に抑制されており、原曲の持つ寂しさを尊重している。Trowerのギターは、派手な解釈を加えるのではなく、曲の感情に寄り添う。Dewarのヴォーカルも、過剰に感情を盛り上げず、静かに孤独を伝える。結果として、このカヴァーはTrowerのアルバムの中に自然に溶け込んでいる。

歌詞では、世界を知り、多くを手に入れたように見える人物が、実際には心の中で満たされていない状態が描かれる。これはロック・ミュージシャンの成功と孤独にも重なるテーマである。「Man of the World」は、本作に深い陰影を与える重要なカヴァーであり、Trowerのブルース観を示す楽曲である。

5. I Can’t Stand It

「I Can’t Stand It」は、タイトル通り「我慢できない」という強い感情を持つ楽曲である。前曲「Man of the World」の静かな孤独から一転し、より直接的な怒りや苛立ちが前に出る。ブルース・ロックにおいて、抑えきれない感情は重要な動力であり、この曲はその荒さを担っている。

サウンドはタイトで、リフには強い推進力がある。Trowerのギターは、ここではより攻撃的に鳴る。ワウや歪みのニュアンスも含め、感情の圧力が音に変換されている。Dewarのヴォーカルも力強く、曲に肉体的な説得力を与えている。

歌詞では、相手や状況に対する限界感が歌われる。もう耐えられない、これ以上続けられないという感覚は、恋愛にも人生にも当てはまる。Trowerはそれを速いロックンロールではなく、重くうねるブルース・ロックとして表現する。「I Can’t Stand It」は、本作の中で感情が最も外へ向かう楽曲のひとつである。

6. Rock Me Baby

「Rock Me Baby」は、B.B. Kingなどの演奏でも知られるブルース・スタンダードのカヴァーである。Robin Trowerがこの曲を取り上げることで、自身の音楽がブルースの伝統にしっかり根差していることを明確に示している。ただし、彼の演奏は伝統的なシカゴ・ブルースの再現ではなく、1970年代のサイケデリック・ブルース・ロックとして再構成されている。

サウンドは重く、ギターが中心にある。Trowerの演奏は、原曲の持つ性的で身体的なブルースの感覚を保ちながら、音色をより厚く、広くしている。Dewarのヴォーカルも非常に相性がよく、単なるカヴァーを超えて、バンド自身の曲のように聴こえる。

歌詞はブルースの伝統に基づいた、身体的で性的な呼びかけを中心にしている。ここで重要なのは、言葉の複雑さではなく、グルーヴと声とギターが作る感覚である。「Rock Me Baby」は、本作にブルースの根を強く刻む楽曲であり、Trowerがどこから来たギタリストなのかを示している。

7. Twice Removed from Yesterday

タイトル曲「Twice Removed from Yesterday」は、アルバム全体の精神的な中心に位置する楽曲である。「昨日から二度離れている」というタイトルは、過去との距離、記憶の遠さ、変化した自分を示している。これはTrowerのソロ・デビューという文脈でも、非常に象徴的である。

サウンドは叙情的で、ギターの表情が深い。Trowerはここで、ブルースのフレーズを使いながらも、単純なブルース進行に留まらない空間を作る。Dewarの歌唱は、過去を振り返るような哀愁を帯びており、曲に人間的な温度を与える。ドラムも抑制され、曲の内省的な雰囲気を支えている。

歌詞では、過去から遠く離れてしまった感覚が描かれる。昨日の出来事はまだ近いようでいて、すでに二重に隔てられている。人は時間の中で変わり、同じ場所には戻れない。「Twice Removed from Yesterday」は、本作のタイトル曲として、Trowerの新しい出発と、過去への複雑な距離感を象徴する楽曲である。

8. Sinner’s Song

「Sinner’s Song」は、罪人の歌というタイトルが示す通り、ブルースに深く根ざしたテーマを持つ楽曲である。罪、悔い、欲望、救いへの願いは、ブルースやゴスペルの伝統において非常に重要な要素である。Trowerはこの曲で、ハードロック的な重さとブルースの精神性を結びつけている。

サウンドは重厚で、ギターには暗い響きがある。Trowerのフレージングは、罪の意識を語るように沈み込み、時に鋭く立ち上がる。Dewarの声も非常に説得力があり、罪人の歌というテーマを単なる演技ではなく、身体から出る言葉として響かせている。

歌詞では、自分が抱える罪や過ち、それをどう受け止めるかが歌われる。ブルースでは、人間は完全に清らかな存在ではなく、欲望や過ちを抱えながら生きる存在として描かれる。「Sinner’s Song」は、そのブルース的な人間観を、Trower流のサイケデリックなギター・ロックで表現した楽曲である。

9. Ballerina

アルバムを締めくくる「Ballerina」は、タイトルから繊細さ、優雅さ、距離のある美しさを連想させる楽曲である。バレリーナは美しく舞う存在である一方、厳しい訓練や痛みを背後に持つ存在でもある。Trowerの音楽において、こうした美しさと苦さの二重性は非常に重要である。

サウンドは比較的穏やかで、アルバムの終曲として余韻を残す。Trowerのギターは、ここでも歌うように鳴る。派手なクライマックスで終わるのではなく、静かな美しさと哀愁を残してアルバムは閉じられる。Dewarのヴォーカルも、柔らかく、少し遠くを見つめるように響く。

歌詞では、バレリーナという存在を通じて、手の届きにくい美しさや儚さが描かれる。彼女は目の前で踊っているようでいて、どこか遠い。これは恋愛の対象であると同時に、理想や記憶の象徴としても読める。「Ballerina」は、『Twice Removed from Yesterday』を静かで詩的な余韻の中で締めくくる楽曲である。

総評

『Twice Removed from Yesterday』は、Robin TrowerがProcol Harumから離れ、自身のギターを中心としたブルース・ロック世界を築き始めた出発点である。後の『Bridge of Sighs』ほどの完成されたムードや代表曲の強さはまだないが、Trowerの音楽的な核はすでに明確である。深い歪み、揺れるヴィブラート、ブルースを越えて空間を描くギター、そしてJames Dewarのソウルフルなヴォーカル。これらが一体となり、非常に濃密な音楽を作っている。

本作の最大の魅力は、ギターの音色そのものにある。Robin Trowerのギターは、単に速く弾くための楽器ではない。彼にとってギターは、声であり、風景であり、感情の延長である。ワウ、チョーキング、ヴィブラート、サステインを通じて、彼はブルースの伝統をサイケデリックな空間へ広げている。その音はHendrixからの影響を強く感じさせるが、Trowerの場合はより英国的で、湿り気があり、曇り空の下に広がるブルースとして響く。

James Dewarのヴォーカルも、本作の成功に欠かせない。彼の声は太く、温かく、深い。Trowerのギターが空間的で幻想的になるほど、Dewarの声は曲に人間的な重心を与える。この関係が非常に重要である。もしギターだけが前面に出すぎれば、音楽は技巧や雰囲気だけに偏ってしまう。しかしDewarの歌があることで、曲はブルース・ロックとしての血肉を持つ。

また、Reg Isidoreのドラムは、Trowerの音楽に独特の揺れを与えている。ハードロックのドラマーのように強く叩きつけるだけではなく、リズムに柔らかな間がある。これによって、曲は硬くなりすぎず、ブルース的な呼吸を保っている。Trower、Dewar、Isidoreの三人は、パワー・トリオでありながら、単に音を大きくするのではなく、空間と余韻を重視している。

本作にはカヴァー曲も含まれている。「Man of the World」と「Rock Me Baby」は、Trowerのルーツを示す重要な選曲である。Peter Greenの内省的な英国ブルースと、B.B. King系のブルース・スタンダード。この二つを取り上げることで、Trowerは自分がどの伝統から出発しているのかを明確にしている。しかし彼は、それらを単なる模倣として演奏するのではなく、自分の音色と空気へ変換している。

歌詞の面では、待つこと、夢見ること、過去から離れること、罪、愛、孤独といったテーマが並ぶ。ブルースの伝統的な題材を扱いながらも、アルバム全体にはサイケデリックな内面性がある。過去のブルースをそのまま再現するのではなく、1970年代の英国ロックの中で、より精神的で浮遊感のあるブルースへ変えている点が本作の特徴である。

『Twice Removed from Yesterday』は、派手なロック・アルバムではない。曲のテンポは全体に抑えめで、爆発的なシングル曲が並ぶわけでもない。しかし、聴き込むほどに、ギターの音色、声の質感、リズムの揺れが深く響いてくる。これはリフの強さだけで聴かせるハードロックではなく、トーンと空気で聴かせるブルース・ロックである。

日本のリスナーにとって本作は、Jimi Hendrix、Cream、Free、Peter Green時代のFleetwood Mac、Taste、Ten Years After、初期Jeff Beck Group、Procol Harumのブルース寄りの側面、そして70年代のギター・ロックに関心がある場合に非常に聴き応えがある作品である。特に、速弾きよりも音色や余韻、ブルースの深みに惹かれるリスナーには強く響くだろう。

『Twice Removed from Yesterday』は、Robin Trowerが自分自身のギターの声を見つけ始めたアルバムである。Procol Harumの一員としての過去から離れ、Hendrix以後のギター表現を自分の中で消化し、ブルースとサイケデリアを結びつける。その過程が、本作には生々しく記録されている。完成された到達点ではなく、深い霧の中から音が立ち上がるような出発点。そこに、このアルバムの大きな魅力がある。

おすすめアルバム

1. Bridge of Sighs by Robin Trower

1974年発表の代表作。『Twice Removed from Yesterday』で提示されたブルース・ロックとサイケデリックなギター表現が、より完成された形で結実している。「Bridge of Sighs」「Too Rolling Stoned」などを収録し、Trowerの最高傑作として語られることが多い。まず次に聴くべき一枚である。

2. For Earth Below by Robin Trower

1975年発表のアルバム。前作『Bridge of Sighs』の路線を継承しつつ、より重く、落ち着いたブルース・ロックへ進んだ作品である。James DewarのヴォーカルとTrowerのギターの相性が引き続き強く、初期三部作的に聴く価値が高い。

3. Electric Ladyland by The Jimi Hendrix Experience

1968年発表の名盤。Robin Trowerのギター表現を理解するうえで避けて通れない作品であり、ブルース、サイケデリア、スタジオ実験、エレクトリック・ギターの可能性が大きく広げられている。Trowerが受けた影響を理解するための重要な基準点である。

4. Then Play On by Fleetwood Mac

1969年発表のPeter Green期Fleetwood Macの代表作。英国ブルースの内省的で陰影の深い表現を聴くことができる。『Twice Removed from Yesterday』で取り上げられた「Man of the World」と同じ精神的な孤独感を理解するうえで関連性が高い作品である。

5. Fire and Water by Free

1970年発表のアルバム。シンプルなブルース・ロック、余白を生かした演奏、Paul Rodgersのソウルフルなヴォーカルが特徴であり、Robin Trowerの音楽にある重さと抑制の感覚と共通する。派手さよりもグルーヴと声の力で聴かせる英国ブルース・ロックの重要作である。

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