アルバムレビュー：Frampton’s Camel by Peter Frampton

アルバムレビュー

2025.04.21

発売日: 1973年5月
ジャンル: ロック、ブルースロック、フォークロック

概要
全曲レビュー
総評
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概要

『Frampton’s Camel』は、ピーター・フランプトンが1973年にリリースした2作目のソロ・アルバムであり、前作『Wind of Change』の繊細でリリカルなアプローチから一転、バンド編成によるより骨太でダイナミックなサウンドを志向した作品である。
アルバム名は、当時フランプトンが結成したツアー・バンド「Frampton’s Camel」に由来し、グループとしての結束とライヴ感を重視した制作姿勢が色濃く反映されている。

本作では、ブルースロックやハードロック的なアタック感に加えて、フランプトン特有のメロディアスな歌心も健在。
ツインギターやコーラスワークを活かしたバンド・アンサンブルによって、ソロでありながら“グループ的ダイナミズム”を獲得しており、のちの大ブレイク作『Frampton Comes Alive!』への橋渡しとなる過渡期的アルバムである。

全曲レビュー

1. I Got My Eyes on You

アルバムの幕開けを飾る、ストレートなロック・チューン。
気になる相手への視線をテーマにした軽妙なナンバーで、ギターのカッティングが心地よい。
爽快なテンポとコーラスのキャッチーさが耳を惹く。

2. All Night Long

ブルースロックの王道を行く、ねっとりとしたグルーヴのミッドテンポナンバー。
“今夜は朝まで離れたくない”という熱っぽいラヴソングで、ギターソロの情熱的な運びが魅力的。
ヴォーカルにも粘りと色気が宿る。

3. Lines on My Face

本作の中でも屈指のバラードで、のちにライヴ・バージョンが定番となる重要曲。
「顔に刻まれた皺は、心の傷跡」とでもいうような内省的なリリックが、繊細なアルペジオに寄り添う。
エモーショナルなギターソロが、抑えきれない感情を代弁する。

4. Which Way the Wind Blows

“風が吹くままに進む”という人生哲学的なテーマを持ったナンバー。
アコースティックギターとオルガンの温かみが、フォークロック的な穏やかさを演出。
ハンブル・パイ時代の影響も感じられる、ルーツ志向の楽曲。

5. I Believe (When I Fall in Love with You It Will Be Forever)

スティーヴィー・ワンダーの名曲をカバー。
原曲のソウルフルな情感を、よりロック寄りに再構築しつつも、真摯なアプローチで愛を語る。
抑制されたアレンジが、歌詞の美しさを際立たせている。

6. White Sugar

タイトル通り、甘くも危険な魅力を持つ人物を描いたアップテンポのロック・ナンバー。
リフの力強さと、ヴォーカルの勢いがライヴ向け。
ブルースに根ざしつつ、ポップな感覚も併せ持つ。

7. Don’t Fade Away

“消えていかないで”という願いを繊細に歌い上げるバラード。
シンプルな構成ながら、叙情的なギターと声が切実な感情をじんわりと伝える。
アルバムの中で静かに存在感を放つ一曲。

8. Just the Time of Year

季節の移り変わりと共に訪れる別れをテーマにした、フォーキーな小品。
アコースティックなサウンドと短い尺の中に、詩的な余韻が広がる。
リスナーの想像力をかき立てる、控えめな美しさがある。

9. Do You Feel Like We Do

のちのライヴ・バージョンで大ヒットする代表曲のスタジオ初出。
ここではまだコンパクトな構成だが、すでにトーキング・ボックスの片鱗が覗き、観客との一体感を予感させる躍動感に満ちている。
フランプトンの“ステージ・ロッカー”としての原点。

総評

『Frampton’s Camel』は、ピーター・フランプトンがバンド感覚とソロ・アーティストとしての自我を巧みに融合させたアルバムであり、彼の音楽人生における“育成と拡張”の記録である。
音楽的には前作の内省的美学を引き継ぎながらも、よりライヴを意識した構成と、ロック的エネルギーが加わっている点で、聴きごたえが格段に増している。

また、収録曲の多くが後のライヴ・アルバム『Frampton Comes Alive!』にて再演されることを考えると、本作はまさに“その飛翔の準備段階”としての意味合いを持つ。
パーソナルな感情とバンド的な高揚感が絶妙に交錯する、過渡期ならではのエネルギーに満ちた作品である。