発売日: 1992年4月20日
ジャンル: インディー・ロック、ローファイ、ノイズロック
Slanted and Enchantedは、カリフォルニア出身のインディーロックバンド、ペイヴメントのデビューアルバムで、1990年代のオルタナティブシーンを象徴する作品として今もなお愛されている。リーダーのスティーヴン・マルクマスによる、脱力感に満ちたボーカルと不安定なギターリフが特徴的で、意図的にローファイで荒削りなサウンドは、インディーロックの新たなスタイルを確立した。スラック感やアンチ商業的な態度が全編を通じて強調され、ノイズの中にキャッチーなメロディが溶け込んだスタイルは、後続のバンドに多大な影響を与えている。ペイヴメントのシンプルでありながら複雑な感性が詰まった本作は、時代を超えてリスナーに愛され続ける傑作である。
各曲解説
- Summer Babe (Winter Version)
アルバムの幕開けにふさわしい、のんびりとしたリズムに不安定なギターリフが響く一曲。マルクマスの脱力ボーカルとキャッチーなメロディが印象的で、リスナーを惹きつける。 - Trigger Cut/Wounded-Kite at :17
歪んだギターとキャッチーなリフが交互に繰り返される曲で、シンプルな中に多様なエネルギーが詰まっている。メロディは軽快だが、ローファイの荒々しさが際立っている。 - No Life Singed Her
激しいビートとノイズギターが特徴の一曲。歌詞は抽象的で、マルクマスが放つエネルギーが曲全体に広がる。 - In the Mouth a Desert
疾走感と哀愁が交錯する楽曲で、キャッチーなメロディが印象的。歌詞には孤独感や喪失感が込められ、メロディの中に切なさが漂う。 - Conduit for Sale!
パンク的な攻撃性が感じられるナンバーで、ノイズの洪水の中で叫ぶようなボーカルが印象的。曲全体に漂う緊張感が特徴。 - Zurich Is Stained
シンプルで美しいメロディが特徴の一曲で、短いながらも強い印象を残す。歌詞は詩的で謎めいており、リスナーに解釈を委ねている。 - Chesley’s Little Wrists
キャッチーなリズムとギターが心地よいミッドテンポの曲。軽いメロディの中に、ペイヴメント独特のひねくれた感性が詰まっている。 - Loretta’s Scars
ローファイの荒々しさとメロディの美しさが絶妙に融合した曲。哀愁漂うボーカルが心に響き、メランコリックな雰囲気が全体に広がる。 - Here
アルバムの中でも特にメロディアスなバラードで、しっとりとしたサウンドが印象的。歌詞には自己反省や内省的なテーマが込められており、ペイヴメントの中でも特に人気の高い楽曲。 - Two States
シンプルで勢いのあるパンク調の楽曲。攻撃的なギターと激しいビートが特徴的で、短いながらもパワフルな一曲。 - Perfume-V
ミステリアスな雰囲気とノイズギターが際立つ曲で、リズムの変化が印象的。ローファイサウンドとダークなメロディがうまく融合している。 - Fame Throwa
ストレートなロックナンバーで、勢いのあるギターが特徴的。ペイヴメントの遊び心と荒々しさが詰まった曲で、軽快なビートが聴き手を楽しませる。 - Jackals, False Grails: The Lonesome Era
幻想的なメロディと不規則なリズムが組み合わさった一曲で、アルバムの中でも異色な存在。ポストパンク的な雰囲気が漂い、実験的な一面が感じられる。 - Our Singer
アルバムの締めくくりにふさわしい、穏やかでメロウなナンバー。緩やかなギターリフとボーカルが優しく響き、心地よい余韻を残してアルバムを終える。
アルバム総評
Slanted and Enchantedは、ペイヴメントが持つ独自のローファイ美学とひねくれた感性が詰まったアルバムであり、インディーロックの歴史に残る名盤として今もなお輝いている。荒削りで実験的なサウンドと、マルクマスの脱力したボーカルが織りなす音楽は、インディーシーンの新たな道を切り開き、多くのバンドに影響を与えた。キャッチーなメロディとノイズのバランスが絶妙で、どこか不安定でありながらも聴きやすい楽曲が揃っている。90年代インディーサウンドの原点ともいえる本作は、シーンを超えて支持され続けており、ペイヴメントの持つユーモアとアンチ商業的な姿勢が感じられる魅力的な一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Guided by Voices – Bee Thousand
荒削りなローファイサウンドとポップなメロディが魅力のアルバムで、ペイヴメントのファンにも刺さる。DIY精神が強く、キャッチーでありながらも個性的な楽曲が楽しめる。
Dinosaur Jr. – You’re Living All Over Me
激しいギターサウンドとメランコリックなメロディが特徴で、ペイヴメントのローファイな荒々しさと共通する。インディーロックのパイオニアとしての存在感が光る。
Sonic Youth – Daydream Nation
ノイズとポップセンスが融合したアルバムで、ペイヴメントの実験的な音楽性に共鳴する作品。歪んだギターとメロディアスな展開が楽しめる。
Pixies – Doolittle
ポストパンクとオルタナティブロックの影響が色濃い作品で、キャッチーなメロディとダークな歌詞が特徴。ペイヴメントのファンにとっても共感できる部分が多い。
Sebadoh – Bakesale
ローファイな録音とシンプルな構成が特徴で、ペイヴメントのファンにも響く作品。内省的な歌詞とキャッチーなメロディが印象的なインディーの名盤。
コメント