アルバムレビュー:Pussy Cats by Harry Nilsson

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1974年8月19日

ジャンル:ロック、ポップ・ロック、シンガーソングライター、バロック・ポップ、ブルース・ロック、ロックンロール

概要

Harry Nilssonの『Pussy Cats』は、1970年代ロック史の中でも、華やかな才能、破滅的な生活、友情、過剰なスタジオ制作、そして声の喪失が複雑に絡み合った特異なアルバムである。プロデューサーを務めたのはJohn Lennonであり、制作時期はLennonがYoko Onoと一時的に別居していた、いわゆる「Lost Weekend」期にあたる。この時期のLennonはロサンゼルスを中心に、酒、夜遊び、ミュージシャン仲間との放蕩的な生活を送り、その中心的な相棒の一人がHarry Nilssonだった。

Nilssonは1960年代後半から1970年代初頭にかけて、ポップ・ソングライターとして非常に高い評価を得ていた。The Beatlesからも称賛され、特にJohn LennonとPaul McCartneyが彼の才能を認めていたことはよく知られている。『Aerial Ballet』『Harry』『Nilsson Schmilsson』『Son of Schmilsson』などで、彼は美しいメロディ、卓越したヴォーカル、多重録音を用いた独自のハーモニー、皮肉とユーモアに満ちた歌詞を展開した。特に「Everybody’s Talkin’」「Without You」「Coconut」などによって、Nilssonは商業的にも大きな成功を収めた。

しかし『Pussy Cats』は、その輝かしい才能が最も危うい形で記録された作品でもある。本作の制作中、Nilssonは深刻な喉の不調を抱えながらも、それをLennonに隠して歌い続けたとされる。その結果、彼の声は以前の滑らかで伸びやかな美声から大きく変化し、かすれ、割れ、痛々しい質感を帯びている。Nilssonのファンにとって、この声の変化は衝撃的であり、本作を評価する際の大きな焦点となる。かつての天使的な高音はここには少ない。代わりにあるのは、夜明け前の酒場のような荒れた声、笑いと疲労が混ざった声、そして壊れかけた身体から出る切実な声である。

音楽的には、『Pussy Cats』はNilssonの過去作に比べて統一感があるようでいて、実際には非常に混沌としている。オリジナル曲、カバー曲、ロックンロール、バラード、ブルース、ノヴェルティ的な曲、スタジオでの悪ふざけのような要素が入り混じる。Lennonのプロデュースは、緻密に整えられた美しいポップ・アルバムを作るというより、Nilssonの破天荒さをそのまま増幅させる方向に働いている。Ringo Starr、Keith Moon、Jim Keltner、Klaus Voormann、Jesse Ed Davis、Danny Kortchmarなど、豪華なミュージシャンが参加しており、アルバム全体にはロサンゼルスのロック人脈が集まったパーティーのような空気が漂う。

タイトルの『Pussy Cats』には、可愛らしさ、猥雑さ、悪ふざけ、夜の世界の匂いが同居している。ジャケットや作品全体の雰囲気にも、1970年代半ばの退廃したロック・セレブ文化が強く表れている。これは、ロックが若い反抗の音楽から、成功した大人たちの放蕩や自己破壊の音楽へも広がっていった時代の記録である。『Pussy Cats』は、その意味で美しいポップ・アルバムではなく、成功の後に訪れる疲労と混乱のアルバムである。

本作の評価は長く分かれてきた。Nilssonの最高傑作と呼ぶには粗く、声の状態も万全ではない。一方で、この粗さこそが本作の魅力であるともいえる。ここには、スタジオで完全に制御されたポップ職人Nilssonではなく、John Lennonとともに破滅的な夜を笑いながら駆け抜けるNilssonがいる。『Pussy Cats』は、完成度の高い作品というより、才能あるアーティストが崩れながらも歌い続ける瞬間を記録したアルバムである。その痛み、滑稽さ、豪華さ、哀しみが、本作を忘れがたいものにしている。

全曲レビュー

1. Many Rivers to Cross

オープニングを飾る「Many Rivers to Cross」は、Jimmy Cliffによる名曲のカバーであり、本作の中でも最も重要な楽曲の一つである。原曲はレゲエ/ソウルの文脈で生まれた深いバラードだが、NilssonとLennonはそれを壮大なロック・バラードとして再構成している。冒頭から、Nilssonのかすれた声が強く印象に残る。かつての彼ならば、もっと滑らかに、美しく歌い上げることもできたはずである。しかしここでは、声の傷そのものが曲の主題と結びついている。

歌詞は、越えなければならない多くの川、疲労、孤独、道に迷う感覚を描いている。これはNilsson自身の状況と重なる。名声を得た後の混乱、身体的な限界、友情と放蕩の中で自分を見失っていく感覚が、この曲の言葉に深い重みを与えている。声が完璧でないからこそ、歌詞の痛みが生々しく響く。

音楽的には、Lennonらしい大きなスケールのプロダクションが施されている。ピアノ、ストリングス的な厚み、力強いリズムが、曲をドラマティックに押し上げる。しかし、中心にあるのはあくまでNilssonの声である。その声は時に割れ、苦しそうに聴こえるが、そこにこそ本作の真実がある。

「Many Rivers to Cross」は、『Pussy Cats』全体の入口として非常に象徴的である。アルバムは豪華で騒がしいが、その奥には深い疲労と孤独がある。この曲は、その核心を最初に露出させる。カバーでありながら、Nilsson自身の告白のように響く名演である。

2. Subterranean Homesick Blues

Bob Dylanの「Subterranean Homesick Blues」を取り上げたこの曲は、NilssonとLennonによる荒っぽいロックンロール的な解釈である。原曲はDylanの言葉の洪水とビート感が印象的な楽曲だが、本作のヴァージョンでは、歌詞の鋭さよりも、バンドの勢いとスタジオ内の混沌が前面に出ている。

Nilssonの声はここでも荒れているが、その荒れ方が曲の性格にはよく合っている。Dylanの原曲が持つ都会的な神経質さや早口の切迫感は、Nilsson版では酔ったロック・バンドが全力で突っ走るような感覚へ変わる。完璧なカバーではないが、そこに本作らしい雑さと楽しさがある。

歌詞は、政治、メディア、若者文化、社会の混乱を断片的に並べたものだが、Nilssonの解釈では、その意味の細部よりも、時代の騒がしさそのものが音として表れている。1970年代半ばのNilssonとLennonにとって、この曲は1960年代的な反抗の記憶を、酔いとノイズの中で再演するようなものだったともいえる。

「Subterranean Homesick Blues」は、アルバムに荒々しい勢いを与える曲である。Nilssonの繊細なポップ職人としての側面よりも、ロックンロールを楽しむ放蕩的な側面が強く出ている。完成度よりも瞬間の熱を重視した、本作らしいトラックである。

3. Don’t Forget Me

「Don’t Forget Me」は、本作の中でも最も美しく、悲痛なオリジナル曲の一つである。タイトルの「僕を忘れないで」という言葉は、シンプルでありながら非常に重い。Nilssonのキャリア全体においても、この曲は後期の代表的なバラードとして評価されるべき作品である。

音楽的には、穏やかなピアノと抑制されたアレンジが中心になっている。John Lennonのプロデュースはここでは比較的控えめで、Nilssonの歌とメロディが前面に出る。声は完全ではないが、その不完全さが曲に深い切実さを与えている。きれいに歌い上げるのではなく、別れ際に何とか言葉を残そうとするような声である。

歌詞は、過去の関係、愛、別れ、記憶をめぐるものである。忘れないでほしいという願いは、恋人への呼びかけであると同時に、聴き手や友人、あるいは世間に向けたNilsson自身の声のようにも響く。成功の後に崩れつつあるアーティストが、自分の存在を記憶してほしいと歌っているように聴こえる。

「Don’t Forget Me」は、『Pussy Cats』の感情的な中心にある楽曲である。アルバムの騒がしさや悪ふざけの背後に、こうした繊細で普遍的な歌があることが、Nilssonの才能を改めて示している。声が傷ついていても、メロディと感情の強さは失われていない。

4. All My Life

「All My Life」は、よりストレートなロック・ソングとしての性格を持つ楽曲である。タイトルからは人生全体を振り返るような大きなテーマが連想されるが、曲調は比較的軽快で、NilssonとLennonのロックンロール志向が表れている。

音楽的には、ピアノとギターを中心にしたバンド・サウンドが曲を支える。豪華な参加ミュージシャンによる演奏はしっかりしているが、アルバム全体に漂うラフな雰囲気はここにもある。きっちり整ったスタジオ録音というより、夜中のセッションの勢いを残したような音作りである。

歌詞では、人生を通じた思いや、変わらない感情が語られているように聴こえる。Nilssonの歌にはしばしば、軽妙な表面の下に深い孤独や後悔が潜んでいる。この曲でも、明るいロックの形を取りながら、どこか人生の疲れが見え隠れする。

「All My Life」は、アルバムの流れの中で大きな代表曲というより、バンド・セッション的な楽しさを担うトラックである。Nilssonのポップな洗練よりも、Lennon周辺のロックンロール・サークルの空気が強く出た曲といえる。

5. Old Forgotten Soldier

「Old Forgotten Soldier」は、Nilssonらしい物語性と哀愁を持つ楽曲である。タイトルの「忘れられた老兵」は、戦争や歴史の中で消費され、記憶から消えていく人物を連想させる。同時に、これは芸能界や音楽業界で忘れられていくアーティストの比喩としても聴こえる。

音楽的には、やや古風なポップ・ソングの趣があり、Nilssonの得意とするノスタルジックなメロディ感覚が表れている。彼はロック時代のアーティストでありながら、ティン・パン・アレーや古いショウビズ音楽への愛を強く持っていた。この曲にも、その古いアメリカン・ポップへの感覚が反映されている。

歌詞では、かつて何かのために戦い、今は忘れられてしまった人物の孤独が描かれる。Nilssonはこのような人物像を、皮肉と優しさを交えて描くことができる。大きな英雄譚ではなく、時代の片隅に残された人物へのまなざしがある。

「Old Forgotten Soldier」は、アルバムの中でNilssonの作家性がよく表れた曲である。派手なロックンロールではないが、忘却、老い、記憶というテーマが、本作の傷ついたムードと深く響き合っている。

6. Save the Last Dance for Me

The Driftersで知られる「Save the Last Dance for Me」のカバーは、本作の中でも非常に興味深い選曲である。原曲はロマンティックで美しいポップ・クラシックだが、Nilsson版では、どこか酔いどれた切なさと、夜の終わりの寂しさが強く出ている。

Nilssonの声は、ここでも完全に滑らかではない。しかし、この曲においては、そのかすれがむしろ効果的である。最後のダンスを取っておいてほしいという願いは、若々しい恋の歌であると同時に、去っていく時間への未練としても響く。Nilssonの声は、その未練を痛々しいほどに伝える。

音楽的には、原曲の優雅さを保ちながらも、Lennonのプロデュースによってやや荒れた質感が加えられている。ロマンティックな曲でありながら、どこか崩れたパーティーの終盤のような空気がある。美しいメロディと壊れかけた声の対比が、このヴァージョンの魅力である。

この曲は、Nilssonが古いポップ・ソングを自分の世界へ引き寄せる能力を示している。彼はカバー曲を単に丁寧に再現するのではなく、自分の状態や時代の空気を反映させることで、別の意味を与える。「Save the Last Dance for Me」は、その好例である。

7. Mucho Mungo / Mt. Elga

「Mucho Mungo / Mt. Elga」は、John LennonとNilssonの関係が最も直接的に表れた楽曲の一つである。「Mucho Mungo」はLennon由来の楽曲であり、そこにNilssonの「Mt. Elga」が組み合わされている。二人の共同作業、友情、遊び心、そしてメロディ感覚が交差するトラックである。

音楽的には、ゆったりとした南国風のムードを持ち、アルバムの中でも比較的リラックスした空気がある。Lennonのメロディには、彼特有の素朴さと少し奇妙な温かみがあり、Nilssonの声がそれをやや夢見心地に歌う。荒れた声でありながら、ここでは不思議な柔らかさも感じられる。

歌詞は、明確な物語というより、音の響きや雰囲気を楽しむタイプのものである。NilssonとLennonの共通点は、言葉遊びやナンセンスを愛しながら、その中にふとした哀愁を忍ばせる点にある。この曲にも、悪ふざけのような軽さと、遠い場所への憧れが同居している。

「Mucho Mungo / Mt. Elga」は、『Pussy Cats』がJohn Lennonの影響を強く受けたアルバムであることを象徴する曲である。同時に、NilssonがLennonの素材を自分の柔らかなポップ感覚で包み込むことで、二人の個性が自然に混ざり合っている。

8. Loop de Loop

「Loop de Loop」は、Johnny Thunderの曲として知られるノヴェルティ色の強いロックンロール・ナンバーである。本作におけるこの曲は、NilssonとLennonの悪ふざけ、パーティー感覚、1950年代から1960年代初頭のロックンロールへの愛を示している。

音楽的には、非常に軽快で、深刻さはほとんどない。コール・アンド・レスポンス的な楽しさ、リズムの単純な快楽、スタジオ内の笑い声が聞こえてきそうな雰囲気がある。Nilssonの声は荒れているが、その荒れ方もこの曲ではコミカルに作用している。

歌詞は意味の深さよりも、言葉の響きとダンス感覚が中心である。Nilssonはこうしたノヴェルティ・ソングを馬鹿にしているのではなく、本気で楽しんでいる。彼のキャリアには常に、シリアスなバラードと馬鹿馬鹿しい曲が同居していた。「Coconut」もその代表例である。

「Loop de Loop」は、アルバムに軽さと無邪気さをもたらす曲である。しかし、全体の文脈で聴くと、その軽さは少し危うい。傷ついた声のアーティストが、あえて子どもじみたロックンロールを歌うことで、笑いと痛みが同時に生まれている。

9. Black Sails

「Black Sails」は、アルバム後半で暗い陰影を担う楽曲である。タイトルの「黒い帆」は、海賊船、死、逃亡、不吉な旅を連想させる。Nilssonの作風には、古い物語や童話的なイメージをポップ・ソングへ持ち込む感覚があるが、この曲にもその要素が見られる。

音楽的には、やや重く、不穏な雰囲気を持つ。アルバムの中の明るいロックンロールやノヴェルティ的な曲とは異なり、ここでは影のあるメロディとアレンジが前に出る。Nilssonのかすれた声も、曲の不吉なムードに合っている。

歌詞では、黒い帆を掲げた船のイメージが、人生の暗い旅や破滅への航海として響く。これは実際の冒険譚というより、内面的な漂流の比喩として聴くことができる。『Pussy Cats』全体に漂う放蕩と崩壊の感覚が、この曲ではより象徴的な形で表れている。

「Black Sails」は、本作の中でもNilssonの暗いファンタジー性を示す曲である。単なるロックンロール・パーティーではなく、その背後にある死や喪失の気配を感じさせる重要なトラックである。

10. Rock Around the Clock

Bill Haley & His Cometsで有名な「Rock Around the Clock」のカバーは、本作のロックンロール回帰的な側面を象徴している。1950年代ロックンロールの代表曲を1974年のNilssonとLennonが演奏するという構図には、懐古、遊び、そして少しの自嘲が含まれている。

音楽的には、原曲の勢いを保ちながらも、演奏には1970年代のロック・セッション的な厚みがある。完璧に整えられた再現ではなく、仲間たちが集まって古いロックンロールを大声で鳴らしているような雰囲気がある。このラフさが、『Pussy Cats』というアルバムにはよく合っている。

歌詞はもちろん、夜通し踊り続けるロックンロールの喜びを歌うものだが、本作の文脈ではその喜びに疲労が混ざる。夜通し騒ぐことは若さの象徴であると同時に、NilssonとLennonの「Lost Weekend」的な放蕩生活そのものでもある。楽しいが、どこか危険で、いつか代償が来る。

「Rock Around the Clock」は、アルバムのパーティー的側面を強く示す曲である。しかし、そのパーティーは無邪気な青春ではなく、大人たちが自分たちの崩壊を笑いながら踊るようなものとして響く。

11. Down by the Sea

「Down by the Sea」は、アルバム終盤で比較的穏やかな余韻を持つ楽曲である。海辺というイメージは、休息、逃避、記憶、再生を連想させる。Nilssonの声はここでも傷ついているが、その傷が曲に柔らかな哀しみを与えている。

音楽的には、ゆったりとしたテンポとメロディが中心で、アルバムの騒がしさを少し鎮める役割を果たす。John Lennonのプロデュースもここでは比較的落ち着いており、Nilssonの歌が前に出る。海辺の風景は、放蕩的な都市やスタジオの混乱から離れた、別の場所として機能している。

歌詞では、海のそばで過ごす時間や、そこにある心の安らぎが描かれる。ただし、それは完全な救済ではない。むしろ、一時的に逃げ込む場所としての海であり、過去の記憶や疲労を抱えたまま眺める海である。Nilssonの声には、その一時的な安らぎと、戻らなければならない現実の両方が含まれている。

「Down by the Sea」は、『Pussy Cats』の中で静かな人間味を感じさせる曲である。大騒ぎの後に訪れる、海辺の朝のような余韻があり、アルバム終盤に必要な落ち着きを与えている。

12. The Flying Saucer Song

「The Flying Saucer Song」は、Nilssonのノヴェルティ性とナンセンス趣味が強く表れた楽曲である。空飛ぶ円盤という題材は、1950年代的なSF、ポップ・カルチャー、子どもじみた想像力を連想させる。Nilssonはこうした馬鹿馬鹿しい題材を、真面目なアルバムの中に平然と置くことができるアーティストだった。

音楽的には、軽く、コミカルで、演劇的な感覚がある。深刻な感情表現というより、スタジオでの遊びや寸劇のような要素が強い。John Lennonもこのようなナンセンスを好んだアーティストであり、Beatles時代から「You Know My Name (Look Up the Number)」のような悪ふざけを残している。その意味で、この曲はNilssonとLennonの共通するユーモア感覚を示している。

歌詞は、意味の深さよりも、奇妙な物語性と馬鹿馬鹿しさが中心である。しかし、このような曲をアルバムの終盤に置くことで、『Pussy Cats』は単なるシリアスな破滅の記録にはならない。笑い、冗談、ナンセンスもまた、Nilssonの重要な表現である。

「The Flying Saucer Song」は、評価が分かれる曲である。感動的なバラードを期待するリスナーには軽すぎるかもしれない。しかし、Nilssonというアーティストの全体像を考えると、このような悪ふざけは不可欠である。彼は美しい歌を書く人であると同時に、真面目さを壊す人でもあった。

13. Turn Out the Light

アルバムを締めくくる「Turn Out the Light」は、タイトル通り、明かりを消して終わりへ向かう曲である。『Pussy Cats』という騒がしく、荒れた、破滅的なアルバムの最後にこのタイトルが置かれることは非常に象徴的である。パーティーが終わり、スタジオの明かりが消え、残るのは疲労と静けさである。

音楽的には、終曲らしい落ち着きがあり、Nilssonの声もどこか諦めを帯びている。アルバム冒頭の「Many Rivers to Cross」で提示された苦しみは、ここで完全に解決されるわけではない。しかし、騒ぎの後に静かに明かりを消すことで、一つの区切りが生まれる。

歌詞では、終わりを受け入れる感覚がある。明かりを消すことは、眠り、別れ、忘却、あるいは一日の終わりを意味する。Nilssonのキャリアを考えると、この曲は一つの時代の終わりのようにも響く。かつての完璧なヴォーカリストとしてのNilssonは、このアルバムで大きく変わってしまった。その変化を受け止めるような終曲である。

「Turn Out the Light」は、『Pussy Cats』を美しくまとめるというより、少し苦く、静かに閉じる曲である。明かりが消えた後に残るのは、笑い声の残響、割れたグラス、疲れた声、そして忘れがたいメロディである。本作の終わり方として非常にふさわしい。

総評

『Pussy Cats』は、Harry Nilssonのディスコグラフィの中でも、最も賛否が分かれるアルバムの一つである。『Nilsson Schmilsson』のような完成度や、『Aerial Ballet』のような繊細なポップ美はここにはない。むしろ本作には、荒れた声、過剰なアレンジ、悪ふざけ、酔い、疲労、豪華な参加陣による混沌がある。だが、その混沌こそが本作の価値である。

本作を聴くうえで最も重要なのは、Nilssonの声の変化を欠点としてだけ捉えないことである。たしかに、かつての彼の声は失われつつある。しかし、その代わりに本作には、壊れかけた声でしか表現できない感情がある。「Many Rivers to Cross」や「Don’t Forget Me」では、声の傷がそのまま曲の痛みになる。美しい声で完璧に歌えば、逆にここまで切実には響かなかったかもしれない。

John Lennonのプロデュースは、作品を整えるというより、Nilssonの混乱を増幅させている。これは長所でも短所でもある。アルバムはしばしば散漫で、曲ごとの質感にもばらつきがある。しかし、Lennonの存在によって、本作には1970年代半ばのロック・スターたちの放蕩、友情、倦怠、悪ふざけが濃密に刻まれた。これは単なるNilssonのソロ・アルバムではなく、NilssonとLennonの一時期の関係を記録したドキュメントでもある。

歌詞と選曲の面では、忘却、疲労、逃避、パーティー、ロックンロールへの回帰、海辺の静けさ、ナンセンスが交錯する。「Don’t Forget Me」や「Old Forgotten Soldier」には、記憶されたいという切実な願いがあり、「Loop de Loop」や「The Flying Saucer Song」には、真面目さを拒否するNilssonのユーモアがある。「Rock Around the Clock」や「Subterranean Homesick Blues」では、過去のロックやフォーク・ロックの記憶が、1974年の荒れた空気の中で再演される。アルバム全体が、過去のポップ文化を酔いながら抱きしめるような作品になっている。

音楽史的に見ると、『Pussy Cats』は1970年代ロックの退廃を象徴するアルバムでもある。1960年代の理想や1970年代初頭のポップ職人性が、成功、酒、名声、破滅的な友情の中で崩れていく。その過程は美しくない。しかし、だからこそリアルである。ロック史には、完璧な名盤だけでなく、崩壊の記録として重要な作品が存在する。本作はまさにそのタイプのアルバムである。

日本のリスナーにとって本作は、Nilssonの入門編としてはやや特殊である。最初に聴くなら『Nilsson Schmilsson』や『Aerial Ballet』の方が彼の本来の歌唱力と作曲力を理解しやすい。しかし、Nilssonというアーティストの複雑さ、ユーモア、自己破壊性、John Lennonとの関係、そして美声を失ってもなお歌うことの意味を知るには、『Pussy Cats』は避けて通れない作品である。

『Pussy Cats』は、完成された美ではなく、壊れた美を持つアルバムである。美声のNilssonはここで傷つき、ポップ職人のNilssonは悪ふざけに身を任せ、ロック・スターたちは夜を越えて騒ぎ続ける。しかし、その混乱の中から、「Don’t Forget Me」のような忘れがたい歌が生まれている。だからこそ本作は、失敗作とも、名作とも、ドキュメントとも呼びうる。Harry Nilssonという才能の光と影を、最も生々しく刻んだアルバムである。

おすすめアルバム

1. Harry Nilsson『Nilsson Schmilsson』

1971年発表の代表作で、Nilssonの商業的成功と多面的な才能を最も分かりやすく示すアルバム。「Without You」「Coconut」「Jump into the Fire」などを収録し、美しいバラード、ノヴェルティ・ソング、ロックが同居している。『Pussy Cats』以前のNilssonの声と作曲力を理解するために必聴である。

2. Harry Nilsson『Son of Schmilsson』

1972年発表の作品で、『Nilsson Schmilsson』の成功後に作られた、より過激で悪ふざけの強いアルバム。ユーモア、下品さ、ロック、バラードが混在し、『Pussy Cats』へつながる放縦な方向性が見える。Nilssonの反商業的なひねくれた感覚を理解するうえで重要である。

3. Harry Nilsson『Aerial Ballet』

1968年発表の初期名作。繊細なメロディ、美しいヴォーカル、多重録音によるハーモニーが際立ち、Nilssonのポップ職人としての本質がよく分かる。『Pussy Cats』の荒れた声と比較することで、彼の変化の大きさが明確になる。

4. John Lennon『Walls and Bridges』

1974年発表のJohn Lennon作品で、『Pussy Cats』と同じ「Lost Weekend」期に制作されたアルバム。より完成度の高い形で、Lennonの孤独、放蕩、自己省察が表れている。『Pussy Cats』の背景にあるLennonの精神状態や音楽的空気を理解するために重要である。

5. Ringo Starr『Ringo』

1973年発表のアルバムで、Beatles周辺の人脈が集結した華やかなロック/ポップ作品。NilssonやLennonとも近い交友圏の空気があり、1970年代前半のロック・セレブリティたちの共同作業の雰囲気を知ることができる。『Pussy Cats』の豪華で騒がしい背景を理解するうえで関連性が高い。

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