アルバムレビュー:Harry by Harry Nilsson

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。

Spotifyジャケット画像

発売日: 1969年8月
ジャンル: バロック・ポップ、ヴォーカル・ポップ、ソフトロック


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「ハリー」という名の肖像画——日常と幻想を行き来する、“最も私的な”Nilsson

『Harry』は、アメリカのシンガーソングライターHarry Nilssonが1969年に発表した4作目のスタジオ・アルバムであり、
彼の“語り手としての声”が最も親密に響く、極めて個人的な作品である。

アルバム・タイトルが自身の名前そのものであることが象徴するように、本作はNilssonの内面、日常、そして人間関係を音楽に投影した“自己肖像画”ともいえる。
前作『Aerial Ballet』で名声を得た後の作品でありながら、ヒット狙いの派手な曲はほとんど存在せず、
あくまで静かに、優しく、そして少しだけ皮肉を込めて綴られる13の小品が並ぶ。

また、Randy Newmanの楽曲を複数カバーし、Nilssonが最も信頼した作家の世界観と自分の感性を融合させた作品という点でも特筆される。


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全曲レビュー

1. The Puppy Song

ポール・マッカートニーの依頼で書かれた曲。
子犬を欲しがる子どもの視点で、無垢な願望と想像力の力を歌う
シンプルなピアノに乗るメロディが、夢と現実の境界を曖昧にする。

2. Nobody Cares About the Railroads Anymore

鉄道という題材を通して、時代の変化と喪失感を描いた一曲。
哀愁漂うメロディとノスタルジックな歌詞に、静かな退廃美が宿る。

3. Open Your Window

優雅なストリングスと穏やかな歌声が印象的なバラード。
タイトルの通り、“窓を開けて”という一節に、閉ざされた心への呼びかけが込められている。

4. Mother Nature’s Son

ビートルズ(ホワイト・アルバム)からのカバー。
アコースティックなアレンジと柔らかな歌唱に、自然との対話と内面への帰依がにじむ。

5. Fairfax Rag

軽快なピアノ・ブギー調の楽曲。
“日常のちょっとした混乱”を愉快に描きながら、都会的ユーモアとジャズ的エスプリを感じさせる。

6. City Life

都市生活の孤独と喧騒を描いたナンバー。
軽妙なリズムの中に、現代社会へのやさしい皮肉が漂う。

7. Mournin’ Glory Story

ひとりの女性の人生と孤独を描いた叙情詩的楽曲。
淡々と語るようなボーカルが、かえって深い同情と人間味を引き出す。

8. Maybe

ソウルやジャズに接近したアレンジが印象的。
仮定法のリリックが、“もしも”という時間の中にある切なさを膨らませる。

9. Marchin’ Down Broadway

ブロードウェイの幻想と現実を混ぜ合わせた、ユーモアと不条理に満ちた曲。
音楽の中に戯画を描くような演出が光る。

10. I Guess the Lord Must Be in New York City

映画『真夜中のカーボーイ』の主題歌候補として書かれた名曲。
「僕は行くよ、きっと神様はニューヨークにいるはずだから」と歌うこの曲は、
都会への憧れと孤独な旅の決意を美しいメロディに乗せたNilsson流アーバン・フォーク。

11. Rainmaker

Randy Newman作。
“雨乞い師”という寓話的キャラクターを通して、信仰と欺瞞、人間の弱さを浮かび上がらせる秀逸なストーリーテリング。

12. Mr. Bojangles

ジェリー・ジェフ・ウォーカーの代表曲をカバー。
ダンサー“ボージャングル氏”の物語に、哀愁と誇りが共存する語り口で迫る。

13. Simon Smith and the Amazing Dancing Bear

再びRandy Newman作。
滑稽で奇妙なショーマンの物語を、明るいメロディとともにどこか哀れに描く
“サイモン・スミスと踊る熊”という奇抜なイメージが、社会の周縁に生きる者たちを象徴する。


総評

『Harry』は、Harry Nilssonの作品の中でも特にパーソナルで静謐な魅力が光る一枚である。
華やかなポップの世界から距離を置き、ひとりの観察者として、あるいは物語の語り部として、
“人間の声”を丁寧に、慈しむように音楽へと変えていった彼の資質が結晶化している

メロディは柔らかく、言葉は詩的で、どこか物語を読み聞かせるような構成が印象的。
Nilssonが“シンガー”である前に“語り手”であったことを、これほど美しく証明したアルバムは他にない。


おすすめアルバム

  • Randy NewmanRandy Newman (1968)
     語り口とストーリーテリングの完成度が極めて近い、知的ポップの原点。
  • Leonard CohenSongs from a Room
     静かなメロディと文学的リリックがNilssonと呼応する。
  • Paul SimonPaul Simon (1972)
     個人的視点と都市生活を重ねたシンガーソングライター作品の秀作。
  • Cat Stevens – Mona Bone Jakon
     内省と優しさが同居する、静かな名作。
  • Jim Croce – You Don’t Mess Around with Jim
     人間臭いキャラクター描写とナラティブな詞世界が、Nilssonの語りに通じる。

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