発売日: 1979年1月（録音：1978年）
ジャンル: ハードロック、ライヴアルバム、ヘヴィメタル
概要
『Strangers in the Night』は、UFOが1979年にリリースしたライヴ・アルバムであり、ロック史上屈指の“ライヴ名盤”として名高い作品である。
1978年のアメリカ・ツアー（シカゴ、ルイビル、アトランタなど）の録音をもとに編集され、マイケル・シェンカー在籍時代のUFO“黄金期”の演奏を、圧倒的な臨場感とともにパッケージした本作は、スタジオ音源以上の熱量と緊張感を孕んでいる。
プロデュースはロン・ネヴィソンが担当し、編集やミックスも極めて高品質。
バンドはツアーを重ねて熟練の域に達しており、各曲のアレンジやテンポはスタジオ版よりも大胆かつ自由に変化しているが、その一つ一つが高い完成度を誇る。
特にシェンカーのギター・ソロは神がかっており、即興性と構築美が見事に融合している点で、以後のライヴ・アルバムの指標ともなった。
この作品はUFOにとって、そしてマイケル・シェンカーにとっても“一区切り”を意味する作品であり、本作を最後に彼はバンドを脱退。
ゆえに『Strangers in the Night』は“別れの美学”を纏った永遠のドキュメントでもある。
全曲レビュー
1. Natural Thing
スタジオ版よりもややテンポアップされ、疾走感が増している。
冒頭から観客の歓声が爆発し、バンドの熱量が瞬時に伝わってくる一曲。
2. Out in the Street
静かなイントロからの盛り上がりが劇的に強調された、ライヴならではの構成。
モグのエモーショナルな歌唱と、シェンカーの抒情的なギターが絶妙に溶け合う。
3. Only You Can Rock Me
UFOの代表曲のひとつ。
スタジオ版よりもギターが前面に押し出され、コーラスの一体感も高まっている。
観客との呼応がアルバム中でも特に印象的。
4. Doctor Doctor
イントロのギターリフが鳴り響いた瞬間、観客の歓声が頂点に達する。
バンドの代表曲にふさわしく、演奏もダイナミックでエネルギッシュ。
シェンカーのソロが特に秀逸で、語り継がれる“ライヴ・ギターソロの金字塔”。
5. Mother Mary
疾走感と切迫感が同居したパフォーマンス。
フィル・モグのヴォーカルの切れ味と、ギターのシャープな刻みが見事に噛み合っている。
6. This Kid’s
ラフで力強い演奏が、スタジオ版よりも荒々しい魅力を引き出す。
観客との距離が近いことが肌で感じられるトラック。
7. Love to Love
本作最大のハイライトのひとつ。
ストリングス抜きでもドラマティックな構成はそのままで、モグのヴォーカルとシェンカーのソロが心を掴む。
特に後半の盛り上がりは感動的ですらある。
8. Lights Out
圧倒的なエネルギーと一体感で迫る、アルバムの中心曲。
観客のレスポンスを引き込みながら、リフとリズムがうねるように響き渡る。
9. Rock Bottom
ライヴ版では10分を超える大作に昇華。
シェンカーのギター・ソロは本作最大の白眉であり、技巧と感情、緊張と解放が複雑に絡み合う“即興芸術”の極致。
UFOのライヴが語り継がれる理由がここにある。
10. Too Hot to Handle
疾走感のあるノリの良いナンバー。
観客の盛り上がりも相まって、アルバム後半にもう一度火を点ける役割を果たしている。
11. I’m a Loser
感傷と力強さが共存する、ライヴだからこそ深みを増す一曲。
UFOのメロディックな側面が最大限に発揮されている。
12. Let It Roll
アグレッシヴでスピーディな演奏が心地よい。
シェンカーのリフと観客の掛け合いに臨場感が宿る。
13. Shoot Shoot
本編ラストを飾るにふさわしい、エネルギッシュなフィナーレ。
ロックンロールの快楽を凝縮した演奏で、UFOのステージを締めくくる。
総評
『Strangers in the Night』は、ライヴ・アルバムという形式の中で、ハードロックの“理想的ライヴ体験”を極限まで磨き上げた金字塔である。
バンドと観客の呼応、即興性と構築性のバランス、そして何よりも演奏の迫真性――そのどれもが尋常ではないレベルで実現されている。
マイケル・シェンカーのギターはここで“神話”となり、彼の退団直前の緊張感と集中力が、すべてのフレーズに宿っている。
一方でフィル・モグは、ライヴでしか表現できない荒さと感情を巧みに使い分け、バンドの中心として観客を掌握している。
スタジオ盤の名曲たちがここで新たに“再定義”され、UFOの音楽が“生きたロック”として記録されたこの作品は、全ロックファン必聴のライヴ・クラシックであり、バンドにとってもジャンル全体にとっても、永遠のマイルストーンである。
おすすめアルバム（5枚）
- Deep Purple – Made in Japan (1972)
ライヴ・ハードロックの金字塔。構成美と即興性の極致。 - Scorpions – Tokyo Tapes (1978)
シェンカーの兄ルドルフ在籍。叙情と激しさのライヴ記録。 - Thin Lizzy – Live and Dangerous (1978)
“演出されたライヴ”の美学。『Strangers〜』と並ぶ名盤。 - MSG – One Night at Budokan (1982)
シェンカーのライヴ力を再確認できる記録。技と感情が共演。 - Judas Priest – Unleashed in the East (1979)
80年代メタルの夜明けを告げるライヴ作。攻撃性と様式美が共鳴。
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