発売日: 1991年7月26日
ジャンル: グランジ、ガレージロック、オルタナティブロック
Every Good Boy Deserves Fudgeは、Mudhoneyがグランジムーブメントの真っ只中にリリースした2作目のスタジオアルバムである。前作のセルフタイトルアルバムで築いた粗削りで荒々しいグランジサウンドを受け継ぎつつも、この作品ではガレージロックの影響がより色濃く表れ、シンプルでありながらもエネルギッシュな演奏が印象的だ。アルバムのタイトルは、音楽教育でよく使われるフレーズ（「EGBDF」）に基づき、バンドの遊び心と軽妙さが表現されている。このアルバムは、シアトルのサブポップレーベルからリリースされ、後のグランジバンドにも影響を与えた重要な作品である。
プロデューサーには再びジャック・エンディーノを迎えず、代わりにコンラッド・ウノが起用され、ラフでざらついたサウンドにアナログな温かみが加わっている。Mudhoneyの特徴である歪んだギターとマーク・アームのシャウトが炸裂し、シンプルなロックへの回帰が感じられる。特に「Let It Slide」や「Good Enough」といった曲は、キャッチーでありながらもヘビーで、バンドのグルーヴ感とユーモアが詰まっている。
トラックごとの解説
1. Generation Genocide
ノイズの効いた短いインストゥルメンタルトラックで、アルバムの不穏な始まりを告げる。わずか1分強の曲ながらも、強烈な印象を残すイントロダクション。
2. Let It Slide
アルバムのリードトラックで、キャッチーなリフとグルーヴィーなビートが特徴。マーク・アームの力強いボーカルが印象的で、Mudhoneyのサウンドを象徴する一曲である。
3. Good Enough
シンプルでパンキッシュな曲調が心地よく、キャッチーなサビが耳に残る。荒削りながらもポップなメロディが融合し、アルバム全体の雰囲気を盛り上げている。
4. Something So Clear
ゆったりとしたテンポの中に重いギターリフが絡み合い、どこかメランコリックな雰囲気が漂うトラック。Mudhoneyのダークで陰鬱な一面が表れている。
5. Thorn
スピード感あふれるトラックで、激しいドラムとギターが駆け抜ける。パンクとグランジが融合したようなエネルギーに満ち、聴き手を圧倒する一曲。
6. Into the Drink
疾走感がありつつも、ブルージーなリフが特徴の曲。短い中にもインパクトが詰まっており、ライブでの人気曲でもある。
7. Broken Hands
アルバムの中でも特にヘビーなトラックで、スローなリズムと不気味な雰囲気が際立つ。泥臭さと力強さが融合し、バンドの新たな一面を感じさせる。
8. Who You Drivin’ Now?
ガレージロック調の軽快なトラックで、シンプルなギターリフとキャッチーなコーラスが心地よい。ノスタルジックな雰囲気もあり、親しみやすいサウンドが特徴。
9. Move Out
ミッドテンポでブルージーな一曲。エモーショナルなギターリフが印象的で、バンドの内省的な一面が表現されている。
10. Shoot the Moon
短くパンチの効いたインストゥルメンタルで、ノイズとエフェクトが交差する。アルバムの流れを一旦リセットする役割を果たしている。
11. Fuzzgun ’91
激しいリズムとダーティなギターサウンドが響くトラックで、タイトル通りのファズギターが炸裂。グランジの粗野な魅力が詰まっている。
12. Pokin’ Around
ブルースの影響が感じられるトラックで、スローなテンポの中に重厚なリフが光る。哀愁漂うメロディがアルバムの深みを増している。
13. Don’t Fade IV
エネルギッシュなリフが際立つ、キャッチーでノイジーな一曲。アルバム後半においてもバンドのエネルギーが尽きない様子が感じられる。
14. Check-Out Time
アルバムのラストを飾る、メロウでどこかメランコリックなトラック。Mudhoneyにしてはやや落ち着いたフィナーレで、余韻を残すエンディングとなっている。
アルバム総評
Every Good Boy Deserves Fudgeは、Mudhoneyの持つラフでエネルギッシュなサウンドをさらに深化させ、ガレージロックとグランジを絶妙に融合した作品である。全体的にざらついた質感と荒々しさが保たれている一方で、キャッチーでポップな要素も垣間見える。コンラッド・ウノのプロデュースにより、Mudhoneyの生々しいエネルギーがより強調され、スタジオ録音ながらもライブのような迫力が感じられる。シアトルのグランジムーブメントが加速する中で発表されたこのアルバムは、バンドの音楽的成熟と多様性を示し、後のオルタナティブロックにも大きな影響を与えた重要な作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Bleach by Nirvana
荒々しいサウンドとダークなトーンが特徴のニルヴァーナのデビューアルバム。Every Good Boy Deserves Fudgeと共にシアトルのグランジを象徴する作品。
Dry as a Bone by Green River
マーク・アームが在籍していたバンド、Green RiverのEP。ガレージロックとパンクのエネルギーがMudhoneyと共通する。
Louder Than Love by Soundgarden
ヘビーなリフと不穏なムードが特徴のアルバムで、グランジのダークな側面が楽しめる。Mudhoneyのダーティなサウンドが好きなリスナーにおすすめ。
Buzz Factory by Screaming Trees
シアトルシーンで活躍したバンドScreaming Treesの作品で、サイケデリックなガレージロックとグランジの融合が楽しめる。
Gluey Porch Treatments by Melvins
スラッジメタルとグランジを融合させたアルバムで、重厚で暗いサウンドが特徴。Mudhoneyの重さと荒々しさが好きなリスナーに響く一枚。
コメント