1. 歌詞の概要
「You Are My Friend」は、Patti LaBelle(パティ・ラベル)が1978年にリリースしたソロ・デビュー・アルバム『Patti LaBelle』に収録された、友情と無償の愛を讃えるソウル・バラードの名曲である。
この曲の語り手は、タイトルどおり「あなたは私の友だち」と繰り返しながら、その存在がどれほど自分の人生に意味を与えてくれているかを、深く、真摯に、そして敬虔なまでの思いで歌い上げていく。
恋人ではなく、家族でもなく、「友だち」という関係性にこれだけの魂を込めた歌は珍しく、それゆえにこの楽曲はありとあらゆる愛のかたちを包み込むような普遍性を持っている。
“私が泣くとき、あなたは泣いてくれる”
“私が祈るとき、あなたは祈ってくれる”
――この曲は、真の友情とは何かを、音楽という祈りのかたちで捧げた作品なのだ。
2. 歌詞のバックグラウンド
「You Are My Friend」は、Patti LaBelleがソロキャリアを本格的にスタートさせたアルバムの一曲目に配置され、彼女の個性と魂を鮮烈に刻み込む名刺代わりのナンバーとして知られている。
作詞作曲にはLaBelle自身の他、彼女の音楽監督であり夫でもあったArmstead Edwards、そしてJames “Budd” Ellisonが名を連ねており、極めてパーソナルで愛に満ちたコラボレーションによって生まれた。
当時のラベルは、LaBelle解散後のソロ転向にあたり、“自分が本当に信じられる歌を歌いたい”という思いを強く持っていた。その中でこの曲は、商業主義や音楽業界のプレッシャーとは無関係に、ただ“感謝”と“信頼”を歌いたいという純粋な衝動から生まれたものだとされている。
ライブでは必ずと言っていいほど披露される定番曲であり、ゴスペル風のアドリブやコール&レスポンス、観客との感情の交歓が生まれる名場面としても知られている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
You are my friend
I never knew it ‘til then
My friend, my friend
あなたは、私の友だち
そのことに気づいていなかった
あの時までは
でも今ははっきりわかるの
あなたは私の友だち
You hold my hand
You might not say a word
But I see your tears when I show my pain
あなたは私の手を握ってくれる
たとえ言葉を交わさなくても
私が痛みを見せた時、あなたは涙を流すの
引用元:Genius 歌詞ページ
このシンプルな歌詞の中には、言葉を超えた感情のやり取り、共有された痛みと支え合いが刻まれている。友人とは、何かをしてくれる人ではなく、「ともに在る人」なのだと、この曲は静かに教えてくれる。
4. 歌詞の考察
「You Are My Friend」は、友情を歌ったバラードの中でも、最も誠実で、最もスピリチュアルな部類に入る楽曲である。多くのラブソングが「欲望」や「情熱」を描くのに対し、この曲が語るのは信頼、共感、無条件の受容である。
Patti LaBelleのヴォーカルは、冒頭では囁くように、祈るように始まり、曲が進むにつれて情熱を帯び、最後にはほとばしるようなソウルの叫びとなって昇華していく。まるで教会の説教と賛美歌が混じり合うような、音楽的な礼拝の瞬間である。
また、“I never knew it ‘til then”という歌詞には、人は大切な人の存在に気づくまで時間がかかることがあるという普遍的な真理が含まれており、リスナー自身の人生とも深く響き合う。
それゆえこの曲は、**恋人だけでなく、友人、家族、あるいは人生の中で支えてくれたすべての人に捧げられる“感謝の詩”**として、世代やジャンルを越えて愛され続けている。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Lean on Me by Bill Withers
困難なときに支え合う友情を描いたソウル・クラシック。 - That’s What Friends Are For by Dionne Warwick & Friends
友情の永続性と感謝を讃えるオールスター・バラード。 - Bridge Over Troubled Water by Simon & Garfunkel
心の波乱に寄り添う優しさを描いたフォーク・バラードの名曲。 - His Eye Is on the Sparrow(伝統的ゴスペル)
LaBelleのルーツにも通じる、神の見守りと魂の支えを歌う信仰歌。 - You’ve Got a Friend by Carole King
いつでもそばにいるという静かな約束を、暖かく歌った友情の定番曲。
6. 音楽で捧げる、永遠の「ありがとう」
「You Are My Friend」は、Patti LaBelleというアーティストの誠実さと信仰、そして人を大切に思う心が最も端的に表れた楽曲である。
それは華やかなラブソングではなく、
誰かを賛美する派手な賛歌でもない。
だが、この曲ほど深く、長く、心に残る曲は稀有である。
私たちは日々、誰かとすれ違い、誰かに支えられて生きている。
それに気づいた時、心の奥から湧き上がる言葉があるとすれば、
それは“愛してる”ではなく、“ありがとう”かもしれない。
「You are my friend」――
この短い言葉に込められた音楽的な祈りは、
時代を超えて、私たち一人ひとりの心に静かに灯り続けている。
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