発売日: 1985年3月4日
ジャンル: ポストパンク、ニュー・ウェーブ、インダストリアル・ロック
Night Timeは、Killing Jokeが商業的成功と音楽的成熟を両立させた4枚目のスタジオアルバムである。1985年にリリースされたこの作品は、バンドがインダストリアル・ロックとポストパンクからニュー・ウェーブの領域へと踏み出し、より広い層に訴えるサウンドを確立した転換点となった。これまでの荒々しいエッジの効いたサウンドから一歩進み、シンセサイザーを活かしたアレンジとメロディアスな要素が強調されている。ジャズ・コールマンのダークで力強いボーカルと、ギターの鋭いリフ、そして冷ややかなシンセサウンドが独特のムードを生み出し、アルバム全体に一貫した重厚さと緊張感が漂っている。
プロデューサーにはクリス・キムジーが参加し、彼の手によるクリアな音作りが、アルバムをポストパンクとニュー・ウェーブの中間に位置づける新鮮なバランスを提供している。Killing Jokeはここで、暗いテーマを持ちながらもアクセスしやすいサウンドを完成させ、彼らの代表曲である「Love Like Blood」や「Eighties」を含むこのアルバムは、バンドにとって最大の成功を収めた作品の一つとなった。
トラックごとの解説
1. Night Time
アルバムのタイトル曲で、ミステリアスなシンセと荘厳なギターが特徴的なスローテンポのトラック。暗闇の中を彷徨うようなリリックが、ジャズ・コールマンの冷静で深みのあるボーカルによって強調され、アルバム全体のムードを設定する。
2. Darkness Before Dawn
シンセサイザーが前面に出たトラックで、曲の中に不穏な雰囲気が漂う。タイトルの通り、「夜明け前の暗闇」を描写しており、メランコリックでドラマティックな要素が感じられる一曲。
3. Love Like Blood
Killing Jokeの代表曲の一つで、ニュー・ウェーブのスタイルを強調したメロディアスなトラック。失われた愛や人間の情熱について歌われており、キャッチーなサビとシンセのフックが心に残る。重厚で洗練されたサウンドが、バンドの音楽的な幅広さを示している。
4. Kings and Queens
冷たいシンセと重厚なリズムが際立つ楽曲で、階級や社会的地位に関するテーマを歌詞に込めている。暗く重苦しい雰囲気が支配するトラックで、Killing Jokeのダークな美学がよく表れている。
5. Tabazan
リズムに重点を置いたトラックで、アフリカのパーカッションのようなビートが特徴。エスニックなムードとダークなエネルギーが融合し、バンドの実験的な一面を感じさせる。
6. Multitudes
ミディアムテンポで、シンセサイザーの冷たい響きと力強いボーカルが際立つトラック。孤独や疎外感といったテーマが歌詞に込められ、メランコリックなメロディがリスナーを引き込む。
7. Europe
ヨーロッパの荒廃をテーマにしたトラックで、冷たくも壮大なサウンドが印象的。シンセとギターのリフが絶妙に絡み合い、ポリティカルなメッセージが色濃く反映されている。
8. Eighties
アルバムの締めくくりにふさわしい代表曲で、80年代という時代そのものを風刺したエネルギッシュなナンバー。明快なギターリフとダンサブルなビートが特徴で、後のオルタナティブ・ロックシーンにも影響を与えた一曲。特に、ニルヴァーナの「Come as You Are」のリフとの類似性で話題となった。
アルバム総評
Night Timeは、Killing Jokeがインダストリアル・ロックからニュー・ウェーブにシフトし、商業的な成功を収めつつも音楽的な進化を遂げたアルバムである。全体を通して冷たくも緊張感のあるサウンドが貫かれており、「Love Like Blood」や「Eighties」などのキャッチーなトラックは、バンドの知名度を一気に押し上げた。重厚でダークな雰囲気が漂う中にも、メロディアスな要素が際立ち、ポストパンクの枠を超えて多くのリスナーにアピールする作品となっている。Night Timeは、Killing Jokeのキャリアの中でも象徴的なアルバムであり、ポストパンク・ニューウェーブファンにとっても欠かせない一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Closer by Joy Division
ポストパンクの名盤で、重厚でダークなサウンドが特徴。Killing Jokeの冷たい美学と共鳴する作品で、深い影響を受けたファンに最適。
Songs of Faith and Devotion by Depeche Mode
インダストリアルとロックが融合したアルバムで、Killing Jokeのダークでメロディアスな要素が好きなリスナーにおすすめ。
Ocean Rain by Echo & the Bunnymen
ニューウェーブとポストパンクの要素が融合したアルバムで、幻想的なサウンドとドラマティックなムードが特徴。Killing Jokeのダークなトーンに共鳴する作品。
Scary Monsters (and Super Creeps) by David Bowie
ダークで実験的な音楽が詰まった一枚で、ポストパンクのエッセンスも感じられる。Killing Jokeの独特のサウンドと共鳴する要素がある。
Floodland by The Sisters of Mercy
ゴシックロックの名盤で、重厚でシネマティックなサウンドが魅力。Killing Jokeのダークなトーンが好きなリスナーにおすすめ。
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