- 発売日: 1990年10月
- ジャンル: ドリームポップ、スロウコア、オルタナティブロック
This Is Our Musicは、Galaxie 500にとって3枚目にして最後のスタジオアルバムであり、彼らの独自の美学を完成させた作品といえる。これまでの作品と同様に、メランコリックでリバーブの効いたギター、ミニマルなベースライン、そして淡々としたボーカルが特徴だが、This Is Our Musicではさらに成熟した表現と深みが加わっている。アルバム全体を通して、切なさと儚さが漂うサウンドスケープが展開され、リスナーをノスタルジックな音の旅へと誘う。リリース後、Galaxie 500は解散を迎えるが、この作品は彼らのキャリアを象徴する、集大成ともいえる一枚である。
「Fourth of July」や「Hearing Voices」などの楽曲は、シンプルで美しいメロディとリリックが際立ち、静かでありながらも強い感情が伝わってくる。さらに、Yoko Onoの「Listen, The Snow Is Falling」のカバーも収録され、バンドの音楽的な多様性が感じられる。This Is Our Musicは、淡い記憶や感情を呼び起こし、内面的な世界を探求するような音楽体験を提供してくれる。
トラック解説
1. Fourth of July
アルバムの幕開けを飾る一曲で、ディーン・ウェアハムの独特なボーカルが、静かな感情の揺らぎを表現している。シンプルなギターリフとミニマルなリズムが織りなすメロディが心地よく、ノスタルジックなムードが漂う。
2. Hearing Voices
静寂の中に深い哀愁が感じられるトラックで、淡々としたボーカルとリバーブの効いたギターが心に響く。リスナーを夜の静けさに包み込むような、Galaxie 500ならではのメランコリックな世界観が表現されている。
3. Spook
アルバムの中でも特に浮遊感のある一曲で、ミステリアスでアンビエントな雰囲気が漂う。ゆったりとしたビートと幻想的なギターが絡み合い、幽玄的なムードを作り出している。
4. Summertime
明るさと切なさが交錯するトラックで、夏の終わりを思わせるようなメロディが印象的。控えめなギターとベースが、夏の一瞬の輝きとその儚さを巧みに表現している。
5. Way Up High
シンプルな構成ながらも、ウェアハムのボーカルとヤンのベースラインが織りなす深い情緒が特徴のトラック。夢と現実が入り混じるような音の空間が広がり、穏やかな浮遊感がリスナーを包み込む。
6. Listen, The Snow Is Falling
Yoko Onoのカバー曲で、オリジナルよりもゆったりとしたペースで再解釈されている。降り積もる雪の静寂を思わせるような、リバーブの効いたギターとボーカルが神秘的なムードを醸し出している。Galaxie 500によるアレンジが、楽曲に深い哀愁を与えている。
7. Sorry
切なくも美しいメロディが特徴のトラックで、関係性の悔いと自己反省が歌われている。ウェアハムの控えめなボーカルと、繊細なギターが心に染み渡り、淡い感情が静かに広がる。
8. Melt Away
アンビエントなサウンドが印象的なトラックで、溶けて消えるような感覚を伴う楽曲。リズムが抑えられた中に浮遊感のあるギターが響き、リスナーを非現実的な空間へと誘う。
9. King of Spain, Part Two
アルバムを締めくくるフィナーレにふさわしい一曲で、ゆったりとしたビートとメランコリックなギターが美しく調和している。静かで幻想的な雰囲気が漂い、アルバム全体を通して続くノスタルジーと切なさを表現し、余韻を残して終わる。
アルバム総評
This Is Our Musicは、Galaxie 500の独自の音楽性が成熟した形で表現された、最後のスタジオアルバムである。淡い悲しみと夢見るようなサウンドが交錯し、聴き手を静かな音の世界へと導く。特に「Fourth of July」や「Hearing Voices」は、Galaxie 500のエッセンスが凝縮されており、リバーブの効いたギターとメランコリックなメロディが際立つ。さらに、Yoko Onoの「Listen, The Snow Is Falling」のカバーはバンドの実験精神を示しており、アルバムに神秘的な深みを加えている。
Galaxie 500はこの作品をもって解散するが、This Is Our Musicは彼らの音楽的な集大成であり、多くのファンやインディーロックのリスナーにとっても特別な位置を占めるアルバムである。時間が経っても色褪せることのない美しさがここには詰まっており、聴くたびに新たな感情や発見をもたらしてくれるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- On Fire by Galaxie 500
バンドの代表作であり、同様にメランコリックでノスタルジックなサウンドが楽しめる。This Is Our Musicのファンには必聴の作品。 - Loveless by My Bloody Valentine
ドリーミーで幻想的なギターサウンドが特徴のシューゲイザーの名盤。Galaxie 500の浮遊感とメランコリックな要素が共通している。 - Nowhere by Ride
リバーブが効いたギターと重厚なビートが印象的な作品で、ノスタルジックでメランコリックな雰囲気がGalaxie 500と響き合う。 - Souvlaki by Slowdive
静けさと浮遊感のあるサウンドが特徴で、Galaxie 500のファンにも共感を呼ぶエモーショナルな作品。 - The Velvet Underground & Nico by The Velvet Underground
ミニマルで実験的なスタイルと、淡々としたボーカルがGalaxie 500に影響を与えた名作。彼らのルーツを感じる一枚。
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