The Words That Maketh Murder by PJ Harvey(2011)楽曲解説

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

1. 楽曲の概要

「The Words That Maketh Murder」は、イギリスのシンガーソングライター、PJ Harveyが2011年に発表した楽曲である。8作目のスタジオ・アルバム『Let England Shake』に収録され、同作からのリード・シングルとしてリリースされた。作詞作曲はPJ Harvey、プロデュースはPJ Harvey、Flood、John Parish、Mick Harveyが担当している。

『Let England Shake』は、PJ Harveyのキャリアの中でも特に高く評価されたアルバムである。2011年のMercury Prizeを受賞し、彼女は同賞を2度受賞した初のアーティストとなった。前回の受賞作は2001年の『Stories from the City, Stories from the Sea』であり、そこから10年を経て、まったく異なる方法で再び評価を得たことになる。

「The Words That Maketh Murder」は、アルバムの4曲目に配置されている。曲調は軽快で、オートハープの刻み、跳ねるようなリズム、ホーンの響きが印象的である。しかし、歌詞が扱うのは戦争、兵士の死、外交の無力さ、暴力が言葉によって正当化される過程である。この明るい音と残酷な内容のずれが、曲の最大の特徴といえる。

タイトルの「maketh」は古風な英語表現であり、「murder」は殺人を意味する。直訳すれば「殺人を作り出す言葉」となる。ここで問題にされているのは、戦争の現場で直接人を殺す武器だけではない。政治家、国家、外交、報道、歴史の語りがどのように暴力を可能にするのかという、より広い構造である。

2. 歌詞の概要

歌詞は、戦場を見た人物の報告のように進む。語り手は、兵士の倒れる姿、身体の損壊、戦争の現場に残る異様な光景を目撃する。だが、その描写は大きな感情を込めて泣き叫ぶようなものではない。むしろ、淡々とした声で悲惨なイメージが並べられる。その抑制が、かえって歌詞の残酷さを強めている。

曲の中心にあるのは、「言葉が殺人を作る」という認識である。戦争は銃や爆弾だけで始まるのではない。国家の名誉、愛国心、安全保障、報復、正義といった言葉が積み重なり、人を殺すことが制度として許可される。PJ Harveyはその過程を、抽象的な政治論ではなく、戦場の身体的な描写と結びつけている。

歌詞の終盤には、Eddie Cochranの「Summertime Blues」を参照したフレーズが登場する。原曲では、若者が自分の不満を国連に持ち込むというユーモラスな言い回しが使われる。「The Words That Maketh Murder」では、それが戦争の文脈に置き換えられる。すると、国際機関へ訴えるという発想は、軽い冗談ではなく、あまりにも大きな暴力を前にした無力な身振りとして響く。

『Let England Shake』全体は、イギリスという国、戦争の歴史、兵士の死、土地と血の結びつきを扱う作品である。「The Words That Maketh Murder」はその中でも、戦争の現場と政治的な言葉の関係を最も鋭く結びつけた曲である。歌詞は第一次世界大戦や第二次世界大戦を連想させる一方で、発表当時のアフガニスタン戦争の影も帯びている。

3. 制作背景・時代背景

『Let England Shake』は、2010年4月から5月にかけて、イギリス・ドーセットのEype Churchで録音された。制作には、長年の共同制作者であるJohn Parish、Mick Harvey、Floodが参加している。PJ Harveyはこのアルバムで、先に言葉を書き、その後に音楽を作る方法を取ったとされる。つまり、サウンドよりも歌詞の主題が先にあり、楽曲はその言葉を支える形で構築された。

前作『White Chalk』では、ピアノを中心とした幽玄で内省的な音世界が展開されていた。それに対して『Let England Shake』では、オートハープ、ギター、ホーン、パーカッションを使いながら、フォーク、ロック、軍楽、古い民謡のような響きが混ざり合う。音は軽やかだが、主題は重い。この矛盾した設計がアルバム全体の特徴である。

2011年当時、イギリスはイラク戦争とアフガニスタン戦争の記憶を抱えていた。戦争は過去のものではなく、同時代の政治問題でもあった。PJ Harveyは直接的なプロテスト・ソングの形を取らず、むしろイギリスの長い戦争の歴史を掘り返し、過去と現在を重ねる方法を選んだ。

「The Words That Maketh Murder」は、その方法が特に明確な楽曲である。戦場の描写は歴史的でありながら、特定の戦争だけに限定されない。第一次世界大戦、第二次世界大戦、アフガニスタン戦争が重なり合い、戦争が繰り返される構造そのものが問題にされる。曲が古風な言い回しを含むのも、過去の言葉が現在の暴力にまで続いていることを示していると考えられる。

また、この曲のミュージックビデオは、写真家・映像作家Seamus Murphyによって制作された。Murphyは『Let England Shake』の全曲に対応する映像プロジェクトにも関わっており、アルバムの視覚的な文脈を作った人物である。映像には兵士、街、ダンスホール、戦争を思わせる断片が含まれ、楽曲の持つ記録性と演劇性を補強している。

4. 歌詞の抜粋と和訳

歌詞は権利保護の対象であるため、ここでは批評上必要な短い範囲のみ引用する。

The words that maketh murder

和訳:

殺人を生み出す言葉

この一節は、楽曲全体の核心である。殺人は個人の暴力だけではなく、制度や言葉によって支えられる。戦争を可能にするのは、敵を作り、犠牲を正当化し、死を意味づける言葉である。PJ Harveyは、そこに音楽の焦点を当てている。

I’ve seen soldiers fall

和訳:

兵士たちが倒れるのを見た

この短い表現は、語り手が戦争を抽象的に語っていないことを示す。ここには、政策や理念ではなく、倒れる身体がある。曲は政治的でありながら、最終的には戦場にいる人間の身体へ戻ってくる。

What if I take my problem to the United Nations?

和訳:

この問題を国連に持っていったらどうなるのか?

このフレーズは、Eddie Cochranの「Summertime Blues」への参照として知られる。原曲では若者の不満を軽妙に表す言い回しだったが、この曲では戦争の惨状の後に置かれる。そのため、ユーモアは黒い皮肉へ変わる。国際機関に訴えることさえ、巨大な暴力の前では空虚に響く。

5. サウンドと歌詞の考察

「The Words That Maketh Murder」のサウンドは、歌詞の内容に比べて驚くほど軽い。オートハープの明るい響き、跳ねるリズム、簡潔なメロディは、表面的には親しみやすいフォーク・ロックとして聴ける。しかし、その上に乗る言葉は兵士の死や身体の破壊を描いている。この落差によって、曲は単なる反戦歌とは異なる複雑さを持つ。

PJ Harveyのボーカルは、ここでは低く荒々しいロック・シンガーとしての声ではなく、高めで少し距離を置いた声で歌われる。『Let England Shake』全体に共通する特徴だが、彼女は戦争の悲惨さを大声で訴えない。むしろ、民謡の語り手のように、過去から伝わってきた出来事を歌っているように聞こえる。この距離感が、曲を時事的な抗議に閉じ込めない。

リズムは行進曲のような硬さを持たず、むしろ軽く跳ねる。ここに皮肉がある。戦争を扱う曲でありながら、軍楽的な重々しさではなく、日常的で身体を動かせるリズムが選ばれている。暴力は特別な音だけで表されるのではない。軽快な音の中に残酷な言葉が乗ることで、戦争が文化や娯楽の中にも入り込むことが示される。

ホーンの使い方も印象的である。サックスやトロンボーンの響きは、曲に祝祭的な明るさを加える。しかし、その明るさは素直な喜びではない。戦場の描写と組み合わさることで、どこか滑稽で不気味な響きになる。葬列とパレードが重なったような感覚があり、これが『Let England Shake』特有の音響を作っている。

曲の終盤で「国連」への言及が出てくる箇所では、サウンドの印象も変わる。そこまで積み重ねられてきた戦場の描写が、突然、外交的な言葉へ移る。だが、その言葉は解決策として機能しない。むしろ、あまりにも大きな暴力の後に出てくる制度的な言葉の弱さが露出する。

この曲では、戦争の原因を単純に「悪い指導者」や「兵器」に限定しない。問題は、暴力を可能にする言葉の体系にある。国家を守る、敵を倒す、名誉を回復する、平和のために戦う。そうした言葉が繰り返されることで、殺人は命令となり、義務となり、歴史となる。タイトルの「maketh」は、その古さを強調する。これは今始まったことではなく、長く続いてきた言葉の形式である。

PJ Harveyのキャリアの中で見ると、この曲は彼女の表現が個人的な感情から歴史的・政治的な視点へ拡張したことを示す重要曲である。初期の『Dry』や『Rid of Me』では、身体、欲望、怒りが近距離で噴き出していた。『Stories from the City, Stories from the Sea』では都市的な高揚があった。『Let England Shake』では、その強烈な個人性が、国や歴史を語るための声へ変化している。

ただし、PJ Harveyは政治を説明するために音楽を使っているわけではない。むしろ、音楽と言葉のずれを使って、戦争の不条理を聴かせている。「The Words That Maketh Murder」は、明るく聴こえるからこそ怖い。歌いやすいからこそ、そこに含まれる言葉の暴力性が際立つ。この設計が、曲を単なるメッセージ・ソング以上のものにしている。

6. この曲が好きな人におすすめの曲 5曲

同名アルバムの冒頭曲で、イギリスという国と戦争の歴史を軽やかなサウンドで描く。「The Words That Maketh Murder」と同じく、明るい音色と不穏な歌詞の対比が重要である。アルバム全体の主題を理解するための入口になる。

『Let England Shake』収録曲で、土地、国家、兵士の死を扱う楽曲である。軍隊ラッパを思わせる音の引用が印象的で、戦争とナショナリズムの関係をより直接的に感じられる。「The Words That Maketh Murder」と並ぶアルバムの中心曲である。

  • This Is Love by PJ Harvey

2000年の『Stories from the City, Stories from the Sea』収録曲で、よりロック色の強いPJ Harveyを知ることができる。「The Words That Maketh Murder」とは主題も音作りも異なるが、彼女のメロディの強さと声の表現力を比較しやすい。

戦死した若い兵士を扱った反戦的な楽曲である。ワルツのような柔らかい曲調と、戦争の悲劇を描く歌詞の対比が特徴で、「The Words That Maketh Murder」と近い構造を持つ。英国女性アーティストによる戦争表現として重要な比較対象である。

戦争を作り出す権力者に対する直接的なプロテスト・ソングである。PJ Harveyの曲が皮肉と距離を使うのに対し、こちらは強い告発の言葉で進む。戦争と責任を歌う表現の違いを知るうえで有効である。

7. まとめ

「The Words That Maketh Murder」は、PJ Harveyの『Let England Shake』を象徴する楽曲である。軽快なオートハープ、明るいホーン、跳ねるリズムを持ちながら、歌詞は戦争の死体、外交の無力さ、言葉が暴力を作る構造を扱っている。この音と内容のずれが、曲の強い批評性を生んでいる。

タイトルが示す通り、この曲の焦点は「殺人を生み出す言葉」にある。戦争は、単に戦場で起こる出来事ではない。政治的な演説、国民的な物語、正義の名目、外交の失敗が、最終的に人の身体を破壊する。PJ Harveyはその関係を、説明ではなく歌の構造として提示している。

『Let England Shake』は、PJ Harveyが個人的なロック表現を越え、歴史、国家、戦争を扱う作家へ到達した作品である。「The Words That Maketh Murder」はその中でも、もっとも鋭く、同時に聴きやすい曲の一つである。明るいメロディに乗せて残酷な現実を歌うことで、戦争が遠い場所の例外ではなく、言葉と音楽の中にも入り込んでいることを示した重要曲である。

参照元

  • PJ Harvey – Official Website
  • PJ Harvey – Let England Shake / Discogs
  • PJ Harvey – The Words That Maketh Murder / Spotify
  • Pitchfork – PJ Harvey: The Words That Maketh Murder
  • Pitchfork – PJ Harvey: Let England Shake
  • The Guardian – PJ Harvey wins Mercury music prize for the second time
  • Guinness World Records – First artist to win the Mercury Music Prize twice
  • The Line of Best Fit – PJ Harvey: The Words That Maketh Murder

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