アルバムレビュー:The Grateful Dead by Grateful Dead

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1967年3月17日

ジャンル:サイケデリック・ロック、ガレージ・ロック、ブルース・ロック、フォーク・ロック、ジャム・ロック

概要

Grateful Deadのデビュー・アルバムであるThe Grateful Deadは、1967年のサンフランシスコ・サイケデリック・シーンの熱気を初期衝動のまま封じ込めた作品である。後に彼らは、長大な即興演奏、アメリカーナ的なソングライティング、ジャズ的なアンサンブル、巨大なライヴ・コミュニティによって、アメリカン・ロック史上でも特異な存在となっていく。しかし本作の時点では、そうした後年の広大な音楽世界はまだ形成途上にあり、ブルース、フォーク、ガレージ・ロック、R&B、カントリー、サイケデリアが荒削りに混ざり合った、若いバンドのエネルギーが前面に出ている。

1967年という年は、ロック史において極めて重要である。The BeatlesのSgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band、The Doorsのデビュー作、Jefferson AirplaneのSurrealistic Pillow、Pink FloydのThe Piper at the Gates of Dawnなど、サイケデリック・ロックが世界的に拡大した年だった。サンフランシスコでは、Haight-Ashburyを中心にヒッピー文化、LSD、共同体的なライヴ体験、反体制的な若者文化が結びつき、音楽は単なる娯楽ではなく、意識変容やコミュニティ形成の媒体として機能していた。Grateful Deadはその中心にいたバンドの一つであり、本作はその初期の姿を記録している。

ただし、The Grateful Deadは後年のGrateful Dead像をそのまま期待すると、やや意外に響く作品でもある。一般にGrateful Deadといえば、10分、20分、時にはそれ以上に展開する即興演奏や、曲がライヴごとに変化していく流動性が想起される。しかし本作の多くの楽曲は短く、テンポも速く、演奏はガレージ・ロック的な粗さを持つ。スタジオ録音の制約もあり、バンドがライヴで展開していた自由な即興性は十分には捉えられていない。その意味で、本作はGrateful Deadの完成形ではなく、むしろ「発火点」として聴くべきアルバムである。

この時期のGrateful Deadは、Jerry Garcia、Bob Weir、Ron “Pigpen” McKernan、Phil Lesh、Bill Kreutzmannという編成を中心にしていた。特にPigpenの存在は、本作を理解するうえで欠かせない。後年のGrateful Deadでは、Robert Hunterの詩的な歌詞とGarciaのメロディが重要な軸となるが、初期のバンドではPigpenのブルース/R&B的な歌唱とオルガンが大きな役割を果たしていた。本作にも、彼の土臭いブルース感覚が色濃く表れている。Grateful Deadはサイケデリック・ロックのバンドであると同時に、アメリカ南部のブルースやR&Bを吸収したバンドでもあった。

一方で、Jerry Garciaのギターもすでに明確な個性を放っている。Garciaはブルース・ギタリストの語法を出発点にしながらも、単純なリフやパワーで押し切るタイプではなく、流れるような旋律、細かい装飾、即興的な展開力を持っていた。本作ではまだ後年ほどの伸びやかな空間性はないが、短い曲の中でも、彼のギターは他のガレージ・ロック・バンドとは異なる浮遊感を生んでいる。Phil Leshのベースも同様に、通常のロック・ベースの枠に収まらず、旋律的に動きながらバンドの音を押し広げている。

アルバム全体としては、伝統曲のアレンジ、ブルースのカバー、オリジナル曲が混在している。これは後年のGrateful Deadにも通じる重要な姿勢である。彼らは完全に新しい音楽をゼロから作ったバンドではなく、アメリカ音楽の古い歌、ブルース、フォーク、カントリー、ゴスペル、ジャズ、ロックンロールを吸収し、それをライヴの中で変化させ続けるバンドだった。本作の時点でも、「The Golden Road」「Beat It On Down the Line」「Good Morning Little School Girl」「Viola Lee Blues」などを通じて、そうした雑多なルーツの混合が確認できる。

特に重要なのが、アルバム最後の「Viola Lee Blues」である。この曲は本作の中で最も長く、Grateful Deadの本質である即興的拡張の可能性を最もよく示している。伝統的なブルースを素材にしながら、演奏は徐々に加速し、サイケデリックな混沌へ向かっていく。ここには、後の「Dark Star」や「The Other One」へつながる、曲を固定された形式から解放し、集団演奏の中で変容させる思想の萌芽がある。

The Grateful Deadは、完成された名盤というより、サンフランシスコの地下で鳴っていた新しい音楽文化の記録である。録音はやや硬く、バンドのライヴでの広がりを完全に捉えているわけではない。しかし、その硬さや短さの中にも、後に巨大な音楽共同体へ成長する要素がはっきりと存在している。日本のリスナーにとって本作は、American BeautyやWorkingman’s Deadのような歌心あるGrateful Dead、あるいはLive/Dead以降の長尺即興のGrateful Deadとは異なる、初期のガレージ・サイケデリック・バンドとしての姿を知るための重要な作品である。

全曲レビュー

1. The Golden Road (To Unlimited Devotion)

アルバム冒頭の「The Golden Road (To Unlimited Devotion)」は、Grateful Deadの初期衝動を象徴する明るく疾走感のある楽曲である。タイトルからして、無限の献身へ向かう黄金の道という、1960年代サイケデリック文化らしい理想主義的な響きを持っている。後年のGrateful Deadに見られる複雑な寓話性や深い死生観に比べると、この曲はより直接的で、若々しく、共同体的な祝祭感が前面に出ている。

音楽的には、ガレージ・ロックとフォーク・ロック、初期サイケデリック・ポップが結びついたような曲である。テンポは速く、ギターは明るく鳴り、リズムは前のめりに進む。Jerry Garciaのギターは短いフレーズの中にも流麗さを見せ、Bob Weirのリズム・ギターは曲に勢いを与えている。Phil Leshのベースは、すでに通常の低音支えに留まらず、曲の中を動き回るような役割を持っている。

歌詞は、聴き手を道へ誘い、踊り、集まり、愛と自由の共同体へ参加するよう促す内容を持つ。これは1967年のサンフランシスコにおけるヒッピー文化の空気を強く反映している。個人の内面を深く掘り下げるというより、聴き手全体を祝祭へ巻き込む招待状のような曲である。

アルバムの導入として、この曲は非常に効果的である。後年のGrateful Deadの穏やかで内省的な側面とは異なり、ここには若いバンドが「新しい世界が始まる」と信じているような高揚感がある。一方で、その理想主義はまだ素朴で、後の複雑な音楽世界に比べると単純にも響く。しかし、その単純さこそが、1967年のデビュー作ならではの価値である。

2. Beat It On Down the Line

「Beat It On Down the Line」は、Jesse Fullerの楽曲として知られるフォーク/ブルース系のナンバーを、Grateful Deadが高速のロックンロールとして再構成した曲である。バンドは初期から古いアメリカ音楽をレパートリーに取り込み、それを自分たちのライヴ・サウンドへ変換することに長けていた。この曲は、その姿勢を分かりやすく示している。

音楽的には、軽快で直線的なロックンロールであり、アルバムの中でも特にコンパクトで勢いのある曲である。ドラムは歯切れよく進み、ギターはカントリーやロカビリーにも通じる軽さを持っている。後年のGrateful Deadに見られる長い即興展開はここにはなく、曲は短く、明快に駆け抜ける。

歌詞のテーマは、仕事や生活から逃げ出し、道を進むという典型的なアメリカン・フォーク/ブルースのモチーフである。列車、旅、移動、逃避といった要素は、Grateful Deadの長いキャリアを通じて繰り返し現れる。この曲でも、語り手は何かから離れ、次の場所へ向かおうとしている。これは後の「Truckin’」にもつながる、移動するバンドとしてのGrateful Deadの基本的なイメージである。

この曲の重要性は、Grateful Deadがサイケデリックな幻想だけでなく、古いフォーク/ブルースの実用的な語法をしっかり持っていたことを示す点にある。彼らの音楽は、抽象的な意識拡張だけでなく、アメリカ音楽の道、仕事、逃亡、旅といった具体的なモチーフに根ざしていた。本作の中では小品的な曲だが、バンドのルーツを示すうえで重要である。

3. Good Morning Little School Girl

「Good Morning Little School Girl」は、Sonny Boy Williamsonで知られるブルース曲を元にしたナンバーであり、初期Grateful DeadにおけるRon “Pigpen” McKernanの存在感を強く示す曲である。Pigpenは、バンドの中で最もブルースやR&Bに直結したメンバーであり、この曲では彼の荒々しく人間臭いヴォーカルが中心に置かれている。

音楽的には、シカゴ・ブルースやR&Bをサイケデリック・ロックの文脈へ持ち込んだようなアレンジである。オルガンの響き、ギターのブルージーなフレーズ、重めのリズムが、曲に土臭さと粘りを与えている。Grateful Deadの初期サウンドには、後年のフォーク・ロック的な透明感とは異なる、こうしたブルース・バンドとしての側面が強く存在した。

歌詞は、現在の視点からは扱いに注意が必要な題材を含んでいる。古いブルースの文脈では、若い女性への呼びかけや性的な誘惑がしばしば題材になったが、現代の感覚ではその表現に問題性を感じる部分もある。Grateful Deadの演奏は、こうした古典的ブルースを当時のロック・バンドの語法として取り込んでいるが、その歴史的背景と現在の倫理的な距離は区別して捉える必要がある。

本作における「Good Morning Little School Girl」は、Pigpenが前面に出ることで、バンドがサンフランシスコのサイケデリック・シーンに属しながらも、単なる幻想的なロックではなく、ブルースの身体性を強く持っていたことを示している。Pigpenの声は、Garciaの柔らかい歌唱やWeirの若々しい声とは異なり、酒場やクラブの空気を運び込む。初期Grateful Deadを理解するうえで欠かせない一曲である。

4. Cold Rain and Snow

「Cold Rain and Snow」は、伝統的なフォーク・ソングをGrateful Deadがアレンジした楽曲であり、彼らのレパートリーの中でも長く演奏され続けた重要曲である。曲名が示す通り、冷たい雨と雪のイメージが中心にあり、旅、別れ、厳しい生活、感情的な冷え込みを連想させる。

音楽的には、アルバム前半の中でも比較的暗く、重い質感を持つ。Garciaのヴォーカルは、過度に劇的ではなく、淡々と歌うことで曲の冷たさを強めている。ギターはフォーク由来の旋律感を持ちながら、リズムはロック・バンドとしての力を保っている。短いスタジオ版ではあるが、後年のライヴでこの曲が持つ緊張感の原型はすでに確認できる。

歌詞には、苦労の多い結婚生活や逃げ出したい感情がにじんでいる。語り手は冷たい雨と雪の中で立ち尽くし、関係の重さや生活の厳しさを感じている。Grateful Deadの歌詞世界では、旅や道はしばしば自由の象徴だが、この曲では自然環境の厳しさが人間関係の冷たさと重なる。

この曲の重要性は、Grateful Deadが古い民謡の素材を、サイケデリック時代のロック・バンドとして再生させている点にある。彼らは伝統曲を博物館的に保存するのではなく、ライヴの中で変化し続ける素材として扱った。「Cold Rain and Snow」は、その後の長いキャリアにおいても演奏され続け、時期によってテンポや重さを変えながら生き続けた。デビュー作に収録されたこのヴァージョンは、その出発点として重要である。

5. Sitting on Top of the World

「Sitting on Top of the World」は、Mississippi Sheiksによる古典的なブルース/カントリー・ブルース曲を基にしたナンバーであり、Grateful Deadがアメリカ音楽の古層をどのようにロック化していたかを示す一曲である。タイトルは「世界の頂上に座っている」という一見勝利感のある言葉だが、ブルースの文脈では失恋や喪失を経た後の強がり、あるいは諦念を含むことが多い。

本作のヴァージョンは、テンポが速く、軽快なロックンロールとして演奏されている。ブルースの哀愁を深く引き伸ばすというより、カントリー、ブルーグラス、ロカビリー的な勢いを加え、バンドの若々しい演奏力を見せる曲になっている。Garciaのギターは、ブルース的なフレーズを保ちながらも軽やかに動き、曲を重くしすぎない。

歌詞のテーマは、失われた愛、去っていった相手、それでも自分は大丈夫だと言い張る感覚である。「世界の頂上にいる」という言葉は、実際の幸福というより、傷ついた人間の強がりとして響く。この二重性はブルースの重要な特徴であり、悲しみとユーモア、喪失と誇りが同時に存在する。

Grateful Deadはこの曲を通じて、ブルースを単に暗い音楽としてではなく、移動し、踊り、語り継がれる生きたレパートリーとして扱っている。デビュー作にこの曲が含まれていることは、彼らが初期からアメリカ音楽の伝統を広く吸収していたことを示す。後年のWorkingman’s DeadやAmerican Beautyで開花するアメリカーナ的感覚は、この時点ですでに基礎として存在していた。

6. Cream Puff War

「Cream Puff War」は、Jerry Garciaが作詞・作曲した楽曲であり、本作の中でも特にガレージ・ロック的で攻撃的な印象を持つオリジナル曲である。Grateful Deadの後年の楽曲に比べると、歌詞も演奏もより直接的で、1960年代中期のロック・バンドらしい荒さが前面に出ている。

音楽的には、速いテンポ、鋭いギター、荒々しいヴォーカルが特徴である。サイケデリック・ロックというより、ガレージ・パンクに近い初期衝動を感じさせる。Garciaのギターはすでに流麗だが、ここでは後年のような長い即興ではなく、短く鋭いフレーズで曲の勢いを支えている。バンド全体もコンパクトにまとまり、若いロック・バンドとしてのエネルギーが強い。

歌詞は、対立や混乱、無意味な争いを皮肉るような内容を持つ。「Cream Puff War」というタイトル自体、柔らかく甘い菓子と戦争という言葉を結びつけた奇妙な表現であり、争いの滑稽さや空虚さを感じさせる。1960年代の若者文化の中では、戦争、権威、社会的対立への批判が重要なテーマだったが、この曲ではそれが直接的な政治スローガンではなく、少しナンセンスなロック・ソングとして現れている。

この曲は、Grateful Deadのカタログの中では後年あまり大きな位置を占める曲ではない。しかし、デビュー作においては、彼らが当時のガレージ・ロックやサイケデリック・ロックの潮流と近い場所にいたことを示す重要な曲である。後のGrateful Deadが持つ柔らかさや広がりとは異なる、荒削りで尖ったバンドの姿がここにある。

7. Morning Dew

「Morning Dew」は、Bonnie Dobsonによる反核フォーク・ソングをGrateful Deadが取り上げたもので、バンドの初期レパートリーの中でも特に重要な楽曲である。後年のライヴでも深い感動を呼ぶ曲として繰り返し演奏され、Grateful Deadの代表的な解釈曲の一つとなった。

歌詞の背景には、核戦争後の世界、あるいは破滅後の荒廃した風景がある。語り手は朝露を見に行こうとするが、世界はすでに大きく変わってしまっている。言葉は少なく、説明も多くないが、その余白がかえって強い終末感を生む。1960年代の冷戦下において、核への恐怖は現実的な不安であり、この曲はその時代感覚を静かに映している。

Grateful Dead版の「Morning Dew」は、スタジオ版では比較的短くまとめられているが、それでも曲の重さは十分に伝わる。Garciaのヴォーカルは抑制されており、悲劇を大げさに演じるのではなく、荒廃した世界を静かに見つめるように歌う。ギターは徐々に感情を高め、曲全体に深い陰影を与える。

音楽的には、フォーク・バラードをサイケデリック・ロックの語法で拡張する初期Grateful Deadの重要な例である。曲は単なる反戦歌や反核歌として固定されるのではなく、ライヴではより大きな精神的体験へと変化していった。後年の長尺ライヴ・ヴァージョンと比べると、本作の録音はまだコンパクトだが、その核となる哀しみと広がりはすでに存在している。

アルバムの中では、「Morning Dew」は軽快なブルース/ロックンロール曲群の中に、深い終末感を持ち込む役割を果たしている。これにより、本作は単なる若いサイケデリック・バンドの勢いだけでなく、1960年代の不安や死の意識も含む作品になっている。

8. New, New Minglewood Blues

「New, New Minglewood Blues」は、Noah Lewisの「Minglewood Blues」を基にした楽曲であり、Grateful Deadが古いブルースを自分たちのロック・バンド・サウンドへ変換した一曲である。後年には「New Minglewood Blues」としてライヴで演奏される重要なレパートリーとなり、Bob Weirのヴォーカル曲として定着していく。

本作のヴァージョンでは、初期らしい荒々しさとテンポの良さが目立つ。ギターはブルース由来のフレーズを使いながらも、演奏全体はガレージ・ロック的な勢いを持っている。Pigpenのブルース感覚とはまた異なり、バンド全体が伝統的なブルースをロックの身体性へ押し込んでいる印象である。

歌詞は、放浪者、酒場、女性、トラブルといったブルースの典型的な題材を含む。Minglewoodという地名的な響きは、現実の場所であると同時に、ブルース的な神話空間として機能する。Grateful Deadの世界では、こうした地名や道のイメージが、現実と幻想の境界を曖昧にする。

この曲は、Grateful Deadが古いアメリカ音楽のレパートリーを長い時間をかけて変化させていく方法を示している。デビュー作の時点では、まだ比較的ストレートなブルース・ロックとして演奏されているが、後年のライヴではテンポ、歌詞、アレンジが変化し、バンドの中で生き続ける曲となった。スタジオ録音は、その長い変化の始まりとして聴くことができる。

9. Viola Lee Blues

アルバム最後を飾る「Viola Lee Blues」は、本作の中で最も重要な楽曲であり、Grateful Deadが後に発展させる長尺即興とサイケデリックな拡張性の最初期の記録である。もともとはCannon’s Jug Stompersによる古いブルース/ジャグ・バンド系の楽曲だが、Grateful Deadはそれを約10分に及ぶサイケデリック・ジャムへ変貌させている。

曲の基本的な構造は、ブルース的な反復に基づいている。しかし演奏が進むにつれ、バンドはその反復を徐々に変化させ、テンポや音圧、緊張感を高めていく。Garciaのギターは、短いフレーズを重ねながら次第に熱を帯び、Phil Leshのベースは曲の内部を大きく揺らす。Bill Kreutzmannのドラムは、単純なビートを維持しながらも、バンド全体の加速を支えている。

歌詞は、刑務所や罪、懲罰といったブルース的な題材を含む。語り手は法や社会の外側に置かれた人物であり、そこにはアメリカの古い民衆音楽に見られるアウトロー的な感覚がある。しかし、この曲で最も重要なのは歌詞そのものよりも、演奏がどのように歌の枠を超えていくかである。

「Viola Lee Blues」は、Grateful Deadの本質がスタジオ・アルバムの短い曲だけでは捉えきれないことを示している。バンドは、ブルースの形式を出発点にしながら、その内部で集団即興を広げ、やがてサイケデリックなトランス状態へ向かう。この方法は、後の「Dark Star」「The Other One」「Playing in the Band」などに受け継がれていく。

アルバムの終曲として、この曲は非常に象徴的である。本作の多くの曲は短く、1967年のガレージ/サイケデリック・ロックの枠内にある。しかし最後に「Viola Lee Blues」が置かれることで、Grateful Deadがその枠を超えていく未来が示される。ここには、デビュー作の中で最も明確に、後年のGrateful Deadの姿が予告されている。

総評

The Grateful Deadは、バンドの長いキャリアの中で見ると、完成された代表作というより、初期のエネルギーと可能性を記録した作品である。後のLive/Deadにおける宇宙的な即興、Workingman’s DeadやAmerican Beautyにおけるアメリカーナ的なソングライティング、Wake of the FloodやBlues for Allahにおけるジャズ的な洗練は、まだ本作には十分に現れていない。しかし、そのすべての萌芽は確かに存在している。

本作の魅力は、荒削りな混合性にある。ガレージ・ロック、ブルース、フォーク、R&B、カントリー、サイケデリアが、まだ整理されないまま一つのバンドの音として鳴っている。曲ごとの完成度にはばらつきがあり、スタジオ録音はバンドのライヴでの本領を完全には捉えていない。それでも、そこには1967年のサンフランシスコでしか生まれ得なかった熱気がある。Grateful Deadが「スタイル」になる前の、生々しい姿が記録されている。

音楽的には、Pigpenのブルース感覚とGarciaの即興的なギター、Leshの旋律的なベース、Weirのリズム・ギター、Kreutzmannの柔軟なドラムがまだ粗い形で結びついている。特にPigpenの役割は、後年のイメージからは見落とされがちだが、本作においては非常に重要である。初期Grateful Deadは、サイケデリックな意識拡張のバンドであると同時に、ブルースとR&Bに根ざした酒場的なバンドでもあった。その二面性が本作の音を形作っている。

歌詞面では、後年のRobert Hunterによる深い詩世界はまだ中心的には展開されていない。むしろ、伝統曲やブルース曲の物語、逃亡者、旅、アウトロー、終末、若者文化の理想が混在している。これにより、本作はGrateful Dead独自の神話というより、アメリカ音楽の既存のモチーフをサイケデリック時代のロック・バンドが再解釈した作品として聴こえる。その意味で、後のGrateful Deadが築く広大な歌詞世界の基礎資料としても重要である。

アルバムの中で最も後年につながるのは、やはり「Viola Lee Blues」と「Morning Dew」である。前者は、ブルースを長尺即興へ拡張する方法を示し、後者は、フォーク・ソングをサイケデリックな哀歌へ変える可能性を示している。この二曲は、本作が単なる時代の産物ではなく、Grateful Deadの未来を内包した作品であることを証明している。

一方で、「The Golden Road」「Cream Puff War」のような曲には、後年には薄れていく初期サイケデリック・ガレージ・バンドとしての姿がある。これらの曲は、Grateful Deadが最初から成熟したジャム・バンドだったわけではなく、1960年代の若いロック・バンドとして時代の空気を吸いながら出発したことを示している。その未完成さは、本作の弱点であると同時に魅力でもある。

日本のリスナーにとって本作は、Grateful Dead入門として最初に選ぶべき作品とは限らない。歌心ある作品を求めるならAmerican Beauty、ライヴでの本質を知りたいならLive/DeadやEurope ’72の方が分かりやすい。しかし、Grateful Deadというバンドがどのような土壌から生まれたのかを知るには、本作は欠かせない。ここには、サンフランシスコのサイケデリック文化、古いブルースとフォークへの愛、若いバンドの荒い衝動、そして後に巨大化する即興音楽の種が詰まっている。

総合的に見て、The Grateful Deadは、完成された傑作というより、偉大なバンドの誕生の記録である。まだ洗練されておらず、時に性急で、スタジオの中では十分に広がりきれていない。しかし、その未整理な音の中に、後のGrateful Deadを決定づける要素がすでに息づいている。ブルースを演奏し、民謡を変形し、サイケデリックな光の中でジャムを拡張し、道を進み続けるバンド。その長く奇妙な旅は、ここから始まった。

おすすめアルバム

1. Grateful Dead – Live/Dead(1969年)

デビュー作で十分に捉えきれなかった初期Grateful Deadのライヴでの本質を知るために欠かせない作品である。「Dark Star」「St. Stephen」「The Eleven」「Turn On Your Love Light」などを通じて、バンドがブルースやロックを超え、長尺のサイケデリック即興へ到達した姿が記録されている。The Grateful Deadの「Viola Lee Blues」に見られる拡張性が、ここで本格的に開花している。

2. Grateful Dead – Anthem of the Sun(1968年)

デビュー作のガレージ/ブルース色から、より実験的でコラージュ的なサイケデリック・サウンドへ移行した作品である。スタジオ録音とライヴ音源を組み合わせた異様な構成を持ち、Grateful Deadが通常のロック・アルバムの形式を超えようとしていたことが分かる。初期の混沌をさらに深く味わえる重要作である。

3. Grateful Dead – Aoxomoxoa(1969年)

Robert Hunterの詩世界とバンドのサイケデリックな音響実験が強く結びついた作品である。「St. Stephen」「China Cat Sunflower」など、後のライヴ・レパートリーの核となる曲も含まれている。デビュー作の荒削りなサウンドから、よりGrateful Dead独自の神話的な世界へ進んだ段階を確認できる。

4. Jefferson Airplane – Surrealistic Pillow(1967年)

同じサンフランシスコ・シーンを代表する作品であり、1967年のサイケデリック・ロックの空気を理解するうえで重要である。Grateful Deadよりも楽曲はポップで整理されているが、Haight-Ashburyの文化、フォーク・ロックとサイケデリアの融合、共同体的な雰囲気という点で共通する背景を持っている。

5. Quicksilver Messenger Service – Happy Trails(1969年)

サンフランシスコのジャム・ロック文化を理解するうえで重要なライヴ主体のアルバムである。長尺のギター・ジャム、ブルースの拡張、サイケデリックな即興という点で、初期Grateful Deadと近い文脈にある。The Grateful Deadのデビュー作に見られる可能性が、同時代の別バンドでどのように展開されたかを知るために有効な作品である。

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