アルバムレビュー:All You Need Is Now by Duran Duran

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2010年12月21日(デジタル先行)/2011年3月21日(フィジカル拡張版)

ジャンル:ニュー・ウェイヴ、シンセ・ポップ、ダンス・ロック、エレクトロ・ポップ、ポップ・ロック

概要

デュラン・デュランの『All You Need Is Now』は、2010年にデジタル配信で先行発表され、2011年に拡張されたフィジカル版としてリリースされた通算13作目のスタジオ・アルバムである。1980年代前半に「Planet Earth」「Girls on Film」「Hungry Like the Wolf」「Rio」「The Reflex」などのヒットで世界的成功を収めたデュラン・デュランは、MTV時代の象徴であると同時に、ニュー・ロマンティック、シンセ・ポップ、ファンク、ロックを融合させたバンドとしてポップ史に大きな足跡を残した。

しかし、1980年代の強烈な成功は、同時に彼らを「時代のアイコン」として固定化する危険も持っていた。1990年代には『Duran Duran』(通称『The Wedding Album』)で再評価を受け、「Ordinary World」「Come Undone」といった成熟した楽曲を生み出した一方、その後の作品ではメンバー交代や時代の流行との距離感に苦心する場面もあった。2000年代にはオリジナル・メンバー再集結作『Astronaut』で話題を呼び、続く『Red Carpet Massacre』ではティンバランドやジャスティン・ティンバーレイクらを迎えて当時の現代的R&B/ポップに接近したが、その試みは賛否を分けた。

そうした流れの中で制作された『All You Need Is Now』は、デュラン・デュランが自分たちの本質へ立ち返った作品として位置づけられる。プロデューサーにマーク・ロンソンを迎えたことは非常に重要である。ロンソンは単に懐古的な80年代サウンドを再現するのではなく、デュラン・デュランが最も創造的だった時期の音楽的要素――ジョン・テイラーの跳ねるベース、ニック・ローズのきらびやかなシンセ、サイモン・ル・ボンのドラマティックなヴォーカル、ロジャー・テイラーのダンス・ミュージック的なドラム感覚――を再確認し、それを21世紀のプロダクションの中で再構成した。

本作は、しばしば「『Rio』の続編」とも語られる。もちろん、1982年の『Rio』が持っていた若さ、時代性、ヴィジュアル・カルチャーとの一体感をそのまま再現することは不可能である。しかし『All You Need Is Now』は、バンドが自らの黄金期を客観的に見つめ、その構成要素を現代的に磨き直したという意味で、非常に意識的なセルフ・リファレンス作品である。ここには、80年代への単純な郷愁ではなく、デュラン・デュランというバンドが本来持っていた「華やかさと不安」「ダンス性と孤独」「未来的な音色とロマンティックな歌詞」の結合が再び浮かび上がっている。

アルバムのタイトル「All You Need Is Now」は、「必要なのは今だけ」という意味を持つ。これはビートルズの「All You Need Is Love」を思わせる言い回しでもあるが、デュラン・デュランの場合、愛や理想主義よりも、現在という瞬間に集中すること、過去の成功や未来への不安にとらわれず、いま鳴っている音に身を置くことが主題となる。長いキャリアを持つバンドにとって、このタイトルは非常に象徴的である。過去の栄光を否定せず、しかしそこに閉じ込められず、現在形のポップ・ミュージックとして自分たちを再提示する宣言だからである。

音楽的には、ニュー・ウェイヴ、シンセ・ポップ、ディスコ、ファンク、アート・ポップがバランスよく配されている。1980年代デュラン・デュランを特徴づけたベース主導のグルーヴ、広がりのあるシンセサイザー、艶やかなメロディ、都会的な退廃感が、過剰にレトロな音像ではなく、クリアで現代的な質感で処理されている。これは、2000年代以降のインディー・ダンス、エレクトロクラッシュ、ニュー・ウェイヴ・リバイバルの文脈とも接続する。ザ・キラーズ、フランツ・フェルディナンド、シザー・シスターズ、ラ・ルー、LCDサウンドシステム以降のリスナーにとっても、本作のサウンドは過去の再演以上の意味を持っていた。

キャリア上の位置づけとして、『All You Need Is Now』はデュラン・デュランの後期代表作のひとつである。1980年代の代表作に比べると商業的規模は異なるが、バンドが自分たちの核を見失わず、成熟した形で再提示できることを証明した作品である。日本のリスナーにとっても、本作は「80年代のヒット曲のバンド」という印象を更新し、デュラン・デュランが現在進行形のポップ・バンドであり続けたことを理解するうえで重要なアルバムといえる。

全曲レビュー

1. All You Need Is Now

タイトル曲「All You Need Is Now」は、本作のコンセプトを端的に示すオープニング曲である。冒頭からシンセサイザーとビートが鋭く立ち上がり、80年代のデュラン・デュランを思わせる未来的な質感が一気に広がる。しかし、その音像は単なる復古ではなく、マーク・ロンソンによる整理されたプロダクションによって、現代的な輪郭を持っている。

歌詞では、過去や未来ではなく「今」に身を置くことが歌われる。長いキャリアを持つバンドにとって、このテーマは非常に意味深い。デュラン・デュランは、しばしば1980年代の記憶と結びつけて語られるバンドである。だが、この曲では、過去の象徴として消費されるのではなく、現在の瞬間に鳴る音楽として自分たちを提示している。

サイモン・ル・ボンのヴォーカルは、若い頃の鋭い高揚感とは異なり、成熟した艶と余裕を持つ。ジョン・テイラーのベースは曲の推進力を生み、ニック・ローズのシンセは冷ややかで華やかな色彩を加える。アルバムの入口として、バンドの歴史と現在を一つに結びつける重要な楽曲である。

2. Blame the Machines

「Blame the Machines」は、デュラン・デュランらしい近未来的な不安をまとった楽曲である。タイトルが示す通り、機械、テクノロジー、制御不能なシステムへの不信がテーマになっている。バンドは1980年代から都市、メディア、ファッション、映像、テクノロジーと密接に結びついてきたが、本曲ではその未来的イメージに暗い影が差している。

音楽的には、硬質なビート、うねるベース、シンセの反復が、機械的な推進力を作り出している。ジョンのベースは単に低音を支えるのではなく、曲全体を動かす主役として機能しており、デュラン・デュランのダンス・ロック的な魅力がよく表れている。

歌詞では、何かがうまくいかない理由を「機械のせい」にするような、現代社会の責任転嫁や技術依存がにじむ。テクノロジーに囲まれた生活の中で、人間の意思や感情がどこまで主体性を持てるのかという問いが、ポップ・ソングの形で提示されている。80年代的な未来感が、21世紀には不安の表現へ変化している点が興味深い。

3. Being Followed

「Being Followed」は、監視や追跡の感覚をテーマにした緊張感のある楽曲である。デュラン・デュランの音楽には、華やかな表面の裏に常に不穏な都市感覚が存在してきたが、この曲ではその側面が強く表れている。

サウンドはタイトで、ベースとドラムが作るグルーヴの上に、シンセが鋭く配置される。曲全体には、誰かに見られている、追われている、逃げ切れないという圧迫感がある。これは有名人としての経験にも、監視社会への不安にも読める。デュラン・デュランはMTV時代に視覚イメージを最大限に活用したバンドであるが、見られることは同時に追跡されることでもある。

サイモンのヴォーカルは、過度に恐怖を叫ぶのではなく、クールな距離感を保っている。そのため、楽曲はパニックではなく、スタイリッシュなサスペンスとして響く。華やかさと不安を同時に扱うデュラン・デュランの得意な表現が、現代的なテーマで再構成された一曲である。

4. Leave a Light On

「Leave a Light On」は、本作の中でも特にメロディアスで情感豊かなバラードである。デュラン・デュランは派手なシンセ・ポップやダンス・ロックのイメージが強いが、「Save a Prayer」や「Ordinary World」のように、孤独や喪失を美しいメロディで包むバラードにも優れている。本曲はその系譜に位置づけられる。

歌詞では、誰かの帰還を待つこと、暗闇の中で光を残しておくことがテーマになっている。これは恋愛の歌としても、離れてしまった人への祈りとしても、精神的に迷っている相手への支えとしても読める。「明かりをつけておく」というイメージは非常に普遍的で、デュラン・デュランのロマンティックな側面がよく表れている。

音楽的には、過剰にドラマティックになりすぎず、抑制されたアレンジの中でメロディが広がる。サイモンの声には成熟した温かみがあり、若い頃の派手なスター性とは異なる説得力がある。アルバムの中で感情的な深みを担う重要曲である。

5. Safe (In the Heat of the Moment) feat. Ana Matronic

「Safe (In the Heat of the Moment)」は、シザー・シスターズのアナ・マトロニックを迎えたダンス色の強い楽曲である。ファンク、ディスコ、エレクトロ・ポップの要素が混ざり、アルバムの中でも特にクラブ的なエネルギーを持つ。

アナ・マトロニックの参加は象徴的である。シザー・シスターズは2000年代にディスコ、グラム、ニュー・ウェイヴの要素を現代的に再解釈したグループであり、デュラン・デュランの後続世代ともいえる存在だった。その彼女を迎えることで、本曲は80年代のオリジナル世代と2000年代以降のリバイバル世代の接点を作っている。

歌詞では、危うい状況の中での安全、熱狂の瞬間における一時的な安心感が描かれる。ダンス・フロア的な高揚の中で、現実から切り離された保護区のような感覚が生まれる。サウンドは明るく身体的だが、タイトルが示す「安全」は一時的なものでもある。快楽と不安の同居が、デュラン・デュランらしい都会的なムードを作っている。

6. Girl Panic!

「Girl Panic!」は、本作を代表する楽曲のひとつであり、初期デュラン・デュランの華やかさと遊び心を強く感じさせるナンバーである。タイトルからして、ファッション、メディア、ポップ・スター性、パーティー感覚が一体となった世界を想起させる。

音楽的には、ジョン・テイラーのベースが非常に印象的で、ファンク的な跳ねとロック的な鋭さを兼ね備えている。ニックのシンセはきらびやかに曲を彩り、ロジャーのドラムはダンス・ミュージックとしての推進力を生む。サイモンのヴォーカルも軽やかで、バンド全体が自分たちの得意な領域に戻ってきたような勢いがある。

歌詞は、女性、混乱、欲望、華やかな夜の空気を断片的に描く。深刻な物語というより、デュラン・デュランが得意としてきた映像的なイメージの連なりで構成されている。後に制作されたミュージック・ビデオでは、スーパーモデルたちがメンバー役を演じるという自己言及的な演出が話題となった。バンドの歴史そのものをファッションとユーモアで再演する姿勢は、本作のセルフ・リファレンス性を象徴している。

7. A Diamond in the Mind

「A Diamond in the Mind」は、短いインストゥルメンタル的な間奏曲であり、アルバムの流れに幻想的な余白を与える。デュラン・デュランは派手なシングル曲だけでなく、アルバム全体に映画的な空気を作ることにも長けていた。この曲はその側面を示している。

タイトルは「心の中のダイヤモンド」を意味し、記憶、イメージ、内面の輝きを連想させる。歌詞を中心に展開する楽曲ではないが、シンセの音色や空間的な響きによって、アルバムの中に一瞬の夢のような場面を挿入する。

本曲は、デュラン・デュランの音楽が視覚的であることを改めて感じさせる。明確な物語がなくても、音の質感だけで映像が浮かぶような構成は、MTV時代から彼らが培ってきた感性と深く結びついている。アルバム全体の構成上、緩急を作る重要な小品である。

8. The Man Who Stole a Leopard feat. Kelis

The Man Who Stole a Leopard」は、本作の中でも最もミステリアスで映画的な楽曲である。ケリスをフィーチャーし、語りの要素とドラマティックなアレンジを組み合わせた、アルバムの異色作といえる。タイトル自体が物語性を強く持っており、犯罪、逃亡、誘惑、異国的なイメージを喚起する。

歌詞は、ヒョウを盗んだ男という奇妙なモチーフを通じて、所有、欲望、逃避、危険な美への執着を描く。ヒョウは野生、美しさ、暴力性、支配できないものの象徴として機能している。何か美しく危険なものを手に入れようとする行為は、ポップ・カルチャーやスター性への欲望にも重なる。

音楽的には、ゆったりとしたテンポ、緊張感のあるストリングス風のアレンジ、ケリスの声が作る異質な質感が特徴である。デュラン・デュランの中でも「The Chauffeur」のような暗く映像的な楽曲に近い系譜にある。アルバムの中で単なる80年代回帰にとどまらない、アート・ポップ的な深みを与える重要曲である。

9. Other People’s Lives

「Other People’s Lives」は、他人の人生を覗き見ること、あるいは他人の物語に過剰に関心を持つ社会をテーマにした楽曲である。セレブリティ文化、タブロイド、リアリティ番組、SNS的な覗き見の感覚が背景にあると解釈できる。

デュラン・デュランは1980年代からメディアに大きく消費されてきたバンドである。そのため、他人の人生が娯楽として扱われる構造への視線には、当事者としての実感がある。歌詞は直接的な批判というより、現代人が他人の生活に惹きつけられ、自分自身の空虚さを埋めようとする姿を描いている。

音楽的には、明快なポップ・ロックの形を取りつつ、シンセとリズムが現代的な硬さを加えている。テーマは現代的だが、楽曲自体は非常に聴きやすく、デュラン・デュランらしいフックがある。華やかなポップ・サウンドを使いながら、メディア社会の不気味さを描く点で、本作の中心的な問題意識とつながっている。

10. Mediterranea

「Mediterranea」は、タイトル通り地中海的なイメージを持つ、開放的でロマンティックな楽曲である。デュラン・デュランの音楽には、しばしば旅、海、リゾート、異国の風景が登場する。『Rio』の時代から、彼らは音楽と映像を通じて、日常から離れた場所への憧れを表現してきた。本曲はその伝統を受け継いでいる。

歌詞では、地中海の光、風、移動、解放感が感じられる。そこには単なる観光的な明るさだけでなく、逃避や再生のニュアンスもある。都市的な緊張や監視のテーマが多い本作の中で、この曲は一時的に視界を広げ、別の場所へ連れていく役割を果たす。

音楽的には、柔らかなメロディと空間の広いアレンジが特徴で、サイモンのヴォーカルも伸びやかである。デュラン・デュランが持つリゾート感、旅情、映像的な美しさが、成熟した形で表現されている。アルバムの中で、都会的な不安を和らげる重要な楽曲である。

11. Too Bad You’re So Beautiful

「Too Bad You’re So Beautiful」は、美しさと厄介さが結びついた関係を描く楽曲である。タイトルは「君がそんなに美しいのが残念だ」という皮肉を含んでおり、魅力的であるがゆえに離れがたい人物への複雑な感情が表現されている。

デュラン・デュランは、初期から美、欲望、危険、ファッションを音楽の中で扱ってきたバンドである。この曲でも、美しさは単なる肯定的な価値ではなく、人を惑わせ、判断を狂わせるものとして描かれる。相手の美しさが問題を覆い隠し、関係を断ち切りにくくする。そこに、ポップ・ソングらしい甘さと苦さがある。

音楽的には、メロディアスでありながらリズムはしっかりと跳ねており、ダンス・ロック的な軽快さがある。歌詞の皮肉なニュアンスを、サイモンは過度に重くせず、艶を持って歌う。デュラン・デュラン特有の「美しいが危険なもの」への視線がよく表れた一曲である。

12. Runway Runaway

「Runway Runaway」は、ファッションと逃走のイメージが重なった、デュラン・デュランらしいタイトルを持つ楽曲である。「runway」はファッションショーのランウェイであり、同時に飛行機の滑走路でもある。「runaway」は逃亡者を意味する。この言葉遊びから、華やかな表舞台と逃げ出したい衝動が同時に浮かび上がる。

歌詞では、モデル、ファッション、若さ、移動、自己演出の感覚が描かれる。デュラン・デュランは音楽とファッションの結びつきを早くから体現したバンドであり、本曲はそのイメージを現代的に再利用している。華やかな世界の中にいる人物が、同時にそこから逃げ出そうとしているような二重性がある。

音楽的には、軽快なリズムとキャッチーなメロディが印象的で、アルバム終盤に明るい推進力を与える。シンセとギターのバランスもよく、80年代的な輝きを持ちながら過度な懐古には陥っていない。デュラン・デュランのファッション性を自覚的に扱った楽曲として、本作のテーマに深く関わっている。

13. Return to Now

「Return to Now」は、短い間奏的なトラックであり、アルバム全体のタイトル・テーマを再確認する役割を持つ。楽曲としては大きな展開を持たないが、「今へ戻る」という言葉が示す通り、過去や幻想から現在へ意識を引き戻すように機能する。

本作には、80年代の記憶、異国の風景、ファッションの幻影、メディアのざわめき、映画的な物語が数多く登場する。しかし、アルバムの核にあるのは、タイトル曲が示した「今」である。この短いトラックは、そうしたイメージの旅から再び現在へ戻るための接続部として置かれている。

音響的にも、シンセの質感や空間処理によって、アルバムの映画的な流れを保っている。デュラン・デュランがアルバム全体を単なる曲の集合ではなく、場面の連なりとして構成していることが分かる小品である。

14. Before the Rain

「Before the Rain」は、アルバム本編の終盤を飾る重厚な楽曲である。静かで荘厳な雰囲気を持ち、ポップ・ソングというよりも、アルバムのエピローグに近い役割を果たす。デュラン・デュランの華やかなイメージとは異なる、暗く内省的な側面が前面に出ている。

タイトルは「雨の前」を意味し、何かが起こる直前の緊張、嵐の前の静けさを想起させる。歌詞には、喪失、予感、不確かな未来、感情の重さが漂う。アルバム全体が「今」を肯定する作品である一方、この曲では、その「今」が必ずしも明るい瞬間だけではないことが示される。現在とは、雨が降り出す前の不安な時間でもある。

音楽的には、ゆっくりとしたテンポ、深いシンセの響き、ドラマティックなヴォーカルが特徴である。サイモンの声は成熟した重みを持ち、若い頃の華やかな高音とは異なる表現力を見せる。アルバムを単なる復活作や快楽的なポップ作品に終わらせず、深い余韻を与える重要な終曲である。

15. Networker Nation

「Networker Nation」は、拡張版に収録された楽曲で、現代社会の接続性やネットワーク文化をテーマにしている。デュラン・デュランはMTV時代に映像メディアを巧みに使ったバンドだったが、本作の時代にはインターネットやSNSが新たなメディア環境を作っていた。この曲は、その変化を反映している。

歌詞では、人々が常につながり、情報やイメージを交換し続ける社会の姿が描かれる。ネットワークは自由や可能性を与える一方で、個人を絶えず表示し、評価し、消費する構造でもある。これは「Being Followed」や「Other People’s Lives」ともつながるテーマであり、本作が単なる80年代回帰ではなく、現代のメディア状況を意識していたことを示す。

音楽的には、エレクトロニックな質感が強く、リズムも硬質である。アルバム本編の流れに対して、よりデジタル時代の感触を補足する楽曲といえる。デュラン・デュランがかつての映像時代のスターから、ネットワーク時代を生きるバンドへ移行していることを象徴する曲である。

16. Early Summer Nerves

「Early Summer Nerves」は、拡張版の中でも繊細なムードを持つ楽曲である。タイトルは「初夏の神経」あるいは「初夏の不安」と訳せる。明るい季節のイメージと、内面的な落ち着かなさが結びついている点が印象的である。

歌詞では、季節の変わり目に感じる高揚と不安、期待と緊張が描かれる。デュラン・デュランはしばしば都市的で夜のイメージが強いバンドだが、この曲ではより淡い感情の揺れが中心に置かれている。夏の始まりは開放の時期であると同時に、何かが変わってしまう予感を伴う。

音楽的には、やや控えめなアレンジで、メロディと雰囲気が重視されている。アルバム本編の派手な楽曲群とは異なり、余白のあるポップ・ソングとして機能する。拡張版に収録されたことで、『All You Need Is Now』の感情的な幅を広げる役割を果たしている。

17. Too Close to the Sun

「Too Close to the Sun」は、タイトルが示すように、ギリシャ神話のイカロス的なイメージを持つ楽曲である。太陽に近づきすぎることは、野心、欲望、過信、そして破滅を象徴する。デュラン・デュランのキャリアには、成功の華やかさと、その裏側にある消耗が常に存在していたため、このテーマはバンド自身の歴史とも響き合う。

歌詞では、高く飛びすぎること、輝きに近づきすぎることの危うさが描かれる。スターであること、成功を追い求めること、美しいものに接近することは、魅力的であると同時に危険でもある。この二重性は、デュラン・デュランが長年扱ってきた主題である。

音楽的には、メロディアスでありながらどこか切迫感がある。拡張版の楽曲ながら、本作全体のテーマである「過去の栄光と現在の自己認識」に深く関わる曲といえる。成功の光に近づきすぎたバンドが、成熟した視点からその危うさを歌う楽曲として読むことができる。

総評

『All You Need Is Now』は、デュラン・デュランの後期キャリアにおける重要な再定義のアルバムである。彼らは1980年代の象徴としてあまりにも強いイメージを持つバンドであり、そのことは武器であると同時に制約でもあった。『All You Need Is Now』は、その制約を否定するのではなく、むしろ自分たちの歴史を素材として受け入れ、現在形の音楽へ変換した作品である。

本作の成功は、単なる懐古に陥らなかった点にある。確かに、ジョン・テイラーのファンク的なベース、ニック・ローズのシンセサイザー、サイモン・ル・ボンのロマンティックな歌唱、ロジャー・テイラーのダンス感覚は、黄金期のデュラン・デュランを強く思わせる。しかし、サウンドは過度に古びた質感ではなく、2000年代以降のニュー・ウェイヴ・リバイバルやエレクトロ・ポップの流れと自然に接続している。これはマーク・ロンソンのプロデュースの大きな成果であり、バンドの本質を現代の耳に届く形で整理した点が重要である。

歌詞面では、現在、監視、メディア、他人の人生、美、逃避、記憶、不安といったテーマが繰り返し登場する。デュラン・デュランはしばしば華やかなヴィジュアルやファッション性で語られてきたが、その音楽の内側には常に不安や孤独があった。本作では、その二面性が非常に明確に示されている。「Girl Panic!」や「Runway Runaway」のような華やかな曲がある一方で、「Being Followed」「Other People’s Lives」ではメディア社会の不穏さが描かれ、「Before the Rain」では深い内省が表れる。表面の美しさと内面の緊張が同時に存在する点こそ、デュラン・デュランの核心である。

また、本作は「過去との距離の取り方」においても優れている。多くのベテラン・アーティストにとって、若い頃の代表作は避けがたい比較対象となる。過去を拒否すればファンから離れ、過去をそのまま再現すれば創造性を失う。『All You Need Is Now』は、その中間ではなく、過去を編集し直すという方法を選んだ。『Rio』的な色彩やグルーヴを思わせながらも、歌詞には21世紀の監視社会、ネットワーク文化、有名性の疲労が反映されている。つまり、音の表面には過去の輝きがあり、主題には現在の不安がある。

日本のリスナーにとって本作は、1980年代洋楽を懐かしむためだけのアルバムではない。もちろん、当時のMTV文化やニュー・ロマンティックの雰囲気を知る世代にとっては、デュラン・デュランらしい音色やメロディの復活として楽しめる。しかし同時に、現代のエレクトロ・ポップやインディー・ダンスを聴くリスナーにとっても、バンド・サウンドとシンセ・サウンドの融合、ファッション性と音楽性の結びつき、ポップでありながら少し不穏な世界観は十分に有効である。

『All You Need Is Now』は、デュラン・デュランが「80年代の遺産」ではなく、「80年代を作った方法論を現在に応用できるバンド」であることを示した。ポップ・ミュージックにおいて、若さはしばしば重要な価値とされるが、本作は成熟したバンドだからこそ可能な自己理解と編集能力を持っている。自分たちが何者であり、何が過去の模倣になり、何が現在形の表現になるのかを、バンド自身がよく理解している。

総じて『All You Need Is Now』は、デュラン・デュランの再生作であり、後期代表作であり、ニュー・ウェイヴ以降のポップ・バンドがどのように自らの歴史を更新できるかを示したアルバムである。華やかなシンセ・ポップ、ダンサブルなベースライン、ロマンティックなバラード、映画的な物語性、そしてメディア社会への不安が一体となり、過去と現在を結ぶ作品として高く評価できる。

おすすめアルバム

1. Duran Duran『Rio』(1982年)

デュラン・デュランの代表作であり、『All You Need Is Now』の最も直接的な参照点となるアルバムである。きらびやかなシンセ、跳ねるベース、洗練されたヴィジュアル感覚、異国的なロマンティシズムが結びつき、MTV時代のポップ・ロックを象徴する作品となった。本作を理解するうえで欠かせない一枚である。

2. Duran Duran『Duran Duran』(1993年)

通称『The Wedding Album』として知られる再ブレイク作で、「Ordinary World」「Come Undone」を含む。1980年代の華やかさから一歩進み、成熟したバンドとしてのメロディ、内省、ロック色を打ち出した作品である。『All You Need Is Now』における大人のデュラン・デュラン像を考えるうえで重要なアルバムである。

3. Mark Ronson『Version』(2007年)

『All You Need Is Now』のプロデューサーであるマーク・ロンソンの代表作のひとつ。過去のポップ、ソウル、ロック、ダンス・ミュージックの要素を現代的に再構成する彼の手腕がよく分かる。デュラン・デュランの黄金期サウンドを単なる懐古にせず、現代的に磨き直した背景を理解するために有効である。

4. Scissor Sisters『Ta-Dah』(2006年)

本作に参加したアナ・マトロニックが所属するシザー・シスターズの代表作。ディスコ、グラム・ロック、ニュー・ウェイヴ、ポップを華やかに再構成しており、デュラン・デュラン以降の世代が80年代的な快楽性をどのように受け継いだかを知ることができる。ダンス性と演劇性の両面で関連性が高い。

5. The Killers『Hot Fuss』(2004年)

2000年代ニュー・ウェイヴ・リバイバルを代表する作品であり、シンセ、ギター、ダンス・ロック、ドラマティックなヴォーカルが融合している。デュラン・デュランやニュー・オーダー、ザ・スミスなどの影響を現代的なインディー・ロックへ変換したアルバムであり、『All You Need Is Now』が再び受け入れられる土壌を作った作品のひとつとして関連性がある。

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