発売日: 1968年8月9日
ジャンル: ブルースロック, サイケデリックロック
Creamの3作目となるWheels of Fireは、ロック史に残る初の「プラチナアルバム」として、その名を刻んでいる。2枚組で構成されたこのアルバムは、スタジオ録音の楽曲とライブパフォーマンスの両方が収録されており、バンドのサイケデリックでありながらもブルースに根差したサウンドの魅力を余すことなく伝えている。エリック・クラプトンの鋭いギター、ジャック・ブルースの力強いベースとボーカル、そしてジンジャー・ベイカーの圧巻のドラムが織りなすこの作品は、スタジオとライブという異なる場面でのCreamの音楽的な幅広さと演奏技術を示す。
スタジオパートでは、バンドの創造力が発揮され、サイケデリックな実験が豊富に盛り込まれている。一方でライブパートでは、彼らの即興演奏力が際立ち、特に「Crossroads」や「Spoonful」などのクラシックブルースのカバーは、彼らのブルースロックへの愛と敬意が感じられる。Creamの音楽的探求とエネルギーに満ちた本作は、彼らのキャリアの中でも最高傑作の一つとして評価されている。
曲ごとの解説
Disc 1: Studio Recordings
1. White Room
アルバムのオープニングを飾るサイケデリックな名曲で、幻想的なイントロが印象的。ジャック・ブルースの哀愁あるボーカルとクラプトンのギターリフが絡み合い、「白い部屋」での孤独や絶望感を描いている。ベイカーのタムを多用したドラムもドラマティックで、アルバムの代表曲として今も愛される。
2. Sitting on Top of the World
ハウリン・ウルフのブルースナンバーをカバーし、Creamらしいヘヴィなアレンジが加わった一曲。クラプトンのギターがブルースのソウルを引き出し、バンド全体が一体となって生み出す熱気が伝わってくる。
3. Passing the Time
サイケデリックなサウンドと叙情的な歌詞が特徴的な楽曲。テンポが次第に変わり、様々なムードが組み合わさっている。クラプトンのギターとベイカーのドラムの掛け合いが際立ち、曲の中で様々な感情が交錯する。
4. As You Said
フォーク調のアコースティックサウンドが特徴のこの曲は、ジャック・ブルースが自らベースとアコースティックギターを演奏。リリカルなボーカルと詩的な歌詞が相まって、サイケデリックかつ内省的なムードを生み出している。
5. Pressed Rat and Warthog
ジンジャー・ベイカーがナレーション風のボーカルを担当した、異色の一曲。ユーモラスでサイケデリックな雰囲気が漂い、バンドの遊び心が表れている。物語風の歌詞と実験的な音作りがユニークな魅力を持つ。
6. Politician
ブルースを基調としたヘヴィな曲で、ジャック・ブルースの低音のボーカルが際立つ。クラプトンの鋭いギターが曲の雰囲気を引き締め、腐敗した政治家への皮肉が歌われている。シンプルながらもパワフルなブルースロックだ。
7. Those Were the Days
サイケデリックで壮大な雰囲気を持つ楽曲で、ベイカーのドラムが特に際立っている。歌詞には過去への懐古が込められており、ブルースのボーカルがノスタルジックな気持ちを引き立てている。壮大なアレンジがCreamの音楽的な幅広さを示す。
8. Born Under a Bad Sign
アルバート・キングのブルースクラシックをカバー。クラプトンのギターがブルースのソウルを感じさせる一方、バンド全体の厚みのあるサウンドが印象的。Cream流にアレンジされたこの楽曲は、ブルースファンにもロックファンにも親しまれている。
9. Deserted Cities of the Heart
ダイナミックなリズムと幻想的なメロディが特徴的な一曲。サイケデリックな要素とブルースロックの力強さが融合し、クラプトンとブルースのヴォーカルの掛け合いが光る。アルバムのスタジオパートを締めくくるにふさわしい楽曲である。
Disc 2: Live Recordings
1. Crossroads
ロバート・ジョンソンのブルースナンバーをカバーした、ライブパフォーマンスの代表作。クラプトンのギターが炸裂し、彼のテクニックと感情が込められたギターソロが圧巻。Creamのライブの魅力とクラプトンのギターが存分に発揮された名演である。
2. Spoonful
ウィリー・ディクソン作のブルースクラシックをライブで約17分にわたり演奏。即興で展開されるジャムセッションでは、3人のメンバーそれぞれのテクニックと個性が際立ち、ブルースに基づきながらもサイケデリックな要素が加わった濃厚な演奏が魅力。
3. Traintime
ジャック・ブルースのハーモニカとブルースボーカルが印象的なトラックで、列車が走るリズムとともにブルースの泥臭さが際立っている。ジャズやブルースのエッセンスが詰まった楽曲で、ブルースの技術が光る。
4. Toad
ジンジャー・ベイカーのドラムソロがフィーチャーされた大作で、13分以上にわたってベイカーのドラミングが炸裂する。ライブのハイライトともいえるパフォーマンスで、彼のテクニックとスタミナが存分に発揮されている。Creamのライブのダイナミズムとサイケデリックなエネルギーが詰まった一曲だ。
アルバム総評
Wheels of Fireは、Creamのスタジオ録音とライブ録音の両方を収録した、ロック史に残る傑作である。スタジオ録音ではサイケデリックな要素と実験的な音作りが、ライブ録音ではブルースと即興演奏の魅力が際立ち、バンドの多彩な才能と独創性が存分に発揮されている。クラプトン、ブルース、ベイカーの3人が奏でるサウンドは、時に荒々しく、時に繊細でありながら、どこか幻想的なムードに包まれている。彼らのキャリアの中でも、特に高度な技術と個性が光る作品として、多くのファンに愛され続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Electric Ladyland by The Jimi Hendrix Experience
サイケデリックなサウンドとブルースの融合が際立つ名盤で、Creamのエネルギッシュなサウンドと共鳴する。
- Live at Fillmore East by The Allman Brothers Band
ライブでの即興演奏の魅力を存分に味わえる一枚。Creamのライブの魅力を愛するリスナーには、同じく緊張感あふれる演奏が楽しめる。
ブルースをベースにしながらも、ロックの新たなスタイルを確立した名盤。Creamと同様にヘヴィでサイケデリックな要素がある。
- Truth by Jeff Beck
ブルースとロックを融合させたサウンドで、ジェフ・ベックが新しいギタースタイルを模索。Creamのブルースロック好きにはぜひ聴いてほしい。
- Axis: Bold as Love by The Jimi Hendrix Experience
サイケデリックで色彩豊かなサウンドが特徴で、Creamの実験的なスタジオ録音に共鳴する。ブルースとロックの融合をさらに発展させた作品。
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