アルバムレビュー：Motordrome by MØ

アルバムレビュー

2025.03.17

発売日: 2022年1月28日
ジャンル: エレクトロポップ、オルタナティブポップ、シンセポップ

自己の解放と進化—MØが辿り着いた新たな境地Motordrome
全曲レビュー
総評
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自己の解放と進化—MØが辿り着いた新たな境地Motordrome

2022年にリリースされたMOTORDROMEは、デンマーク出身のシンガーソングライターMØの3作目のスタジオアルバムであり、彼女のキャリアにおける重要な転換点となる作品である。本作では、エレクトロポップの要素を残しながらも、シンプルかつ力強いメロディ、より洗練されたプロダクション、そして内省的な歌詞が際立つ。

アルバムタイトルのMOTORDROMEは、MØが自身の不安やパニック発作と向き合う中で感じた、心の中の「モータードローム（円形のモータートラック）」のような感覚を表現している。テーマとしては「自己解放」「成長」「社会への抵抗」「人間関係の複雑さ」が中心にあり、過去のMØの作品よりもダークでエモーショナルな側面が強調されている。

サウンド面では、過去のダンスポップ的な要素を抑えつつ、シンセポップやオルタナティブロック的なアプローチが増えており、より成熟した音楽性を示している。

全曲レビュー

1. Kindness

アルバムの幕開けを飾る、アンビエントなイントロから始まる楽曲。
「優しさ」とは何かを問いかける歌詞と、ゆったりとしたエレクトロニックなサウンドが印象的。

2. Live to Survive

シングルカットされた楽曲で、力強いシンセサウンドとダークなビートが特徴的なエレクトロポップ。自己のサバイバルをテーマにした歌詞が、MØの成熟した視点を感じさせる。

3. Wheelspin

エモーショナルなメロディとシンプルなリズムが際立つ楽曲。自己探求と逃避をテーマにしたリリックが印象的。

4. Cool to Cry

本作の中でも特に感傷的なバラード。ピアノとシンセが優しく絡み合い、MØの繊細なボーカルが際立つ。失恋や喪失をテーマにした、心に響く楽曲。

5. Youth is Lost

ニューウェーブ的なサウンドを取り入れた、ノスタルジックな雰囲気の楽曲。
「青春を失う」というテーマをダンサブルなビートとともに歌い上げる。

6. New Moon

アルバムの中でも最もキャッチーな楽曲の一つで、MØらしい開放感のあるメロディが特徴的。新たなスタートを象徴するポジティブなリリックが印象的。

7. Brad Pitt

ユニークなタイトルとエレクトロポップなビートが融合した楽曲。軽快なリズムとカラフルなプロダクションが耳に残る。

8. Hip Bones

オルタナティブロックとシンセポップの融合が感じられる楽曲。
独特のビートと、ミステリアスな雰囲気のボーカルが魅力的。

9. Punches (feat. Caroline Polachek)

Caroline Polachekとのコラボレーションによる、幻想的でエモーショナルなエレクトロポップ。2人のボーカルが美しく絡み合う。

10. Goosebumps

アルバムを締めくくる楽曲で、浮遊感のあるシンセとメロディアスなコーラスが印象的。心に余韻を残すエンディング。

総評

MOTORDROMEは、MØが自身の音楽性を深化させたアルバムであり、単なるポップアーティストではなく、アーティスティックな表現力を持つアーティストとしての地位を確立した作品となっている。

本作では、「個人の成長」「社会との葛藤」「内省的な視点」が強く反映されており、ダンスミュージック的なアプローチよりも、よりエモーショナルで奥深いサウンドへとシフトしている。そのため、「Lean On」のようなクラブ向けの楽曲を期待したリスナーにとってはやや意外な印象を受けるかもしれないが、MØの音楽的な進化を感じさせる内容となっている。

特に「Live to Survive」「New Moon」「Cool to Cry」などの楽曲は、MØの成熟した音楽性と感情表現が凝縮されており、これまでのMØの作品とはまた違った角度からの魅力を楽しめる。また、Caroline Polachekとのコラボ「Punches」では、エクスペリメンタルなエレクトロポップの新たな可能性も示している。

MOTORDROMEは、エレクトロポップの枠を超えた、MØの新たなフェーズを示す重要な作品であり、シンセポップやオルタナティブポップを好むリスナーにとっても楽しめる一枚である。