
1. 歌詞の概要
「505」は、イギリスのロックバンド Arctic Monkeys が2007年にリリースしたアルバム『Favourite Worst Nightmare』のラストを飾る楽曲です。この曲は、バンドのディスコグラフィーの中でも特にエモーショナルでノスタルジックな作品の一つとして、長年ファンの間で愛され続けています。
歌詞では、「505」という謎めいた数字が象徴する場所へと向かう主人公の旅が描かれています。これは、フロントマンの**アレックス・ターナー(Alex Turner)**がかつて恋人と過ごしたホテルの部屋番号に由来すると言われています。しかし、この曲は単なるラブソングではなく、再会への期待と不安、そして過去の恋愛への執着が交錯する、繊細な感情が描かれています。
楽曲の構成は、最初は静かに始まり、徐々にビルドアップしていき、クライマックスでは感情が爆発するような展開を迎えます。Arctic Monkeys の中でも最も劇的な曲の一つであり、ライブでのパフォーマンスでも特に盛り上がる楽曲です。
2. 歌詞のバックグラウンド
Arctic Monkeys は、2000年代に登場した UK インディーロックの中でも特に影響力のあるバンドの一つであり、『Favourite Worst Nightmare』は、彼らのサウンドがより進化し、より洗練されたアルバムとして評価されています。
「505」は、ラストトラックとしてアルバムの終わりを締めくくる役割を果たしており、アルバム全体の疾走感のある楽曲とは対照的に、ゆったりとしたビルドアップ型の楽曲となっています。この曲のメインのオルガンのリフは、The Good, The Bad and The Ugly(映画『続・夕陽のガンマン』)のエンニオ・モリコーネの楽曲からインスピレーションを得たとされており、そのレトロな雰囲気が曲全体のノスタルジックなムードを作り出しています。
3. 歌詞の抜粋と和訳
以下に、楽曲の印象的な部分の歌詞を抜粋し、英語の原文とその日本語訳を掲載します。
I’m going back to 505
If it’s a seven-hour flight or a forty-five-minute drive
「俺は505へ戻る」
「7時間のフライトでも、45分のドライブでもかまわない」
→ ここでは、「505」という場所へ向かう旅の情景が描かれています。遠く離れた場所にいる恋人のもとへ戻ろうとする決意が感じられます。「7時間のフライト」と「45分のドライブ」という対照的な距離感は、実際の距離ではなく、恋愛における心理的な距離を象徴している可能性もあります。
But I crumble completely when you cry
It seems like once again you’ve had to greet me with goodbye
「でも、君が泣くと俺は完全に崩れ落ちる」
「またしても、君は別れの言葉で俺を迎えなきゃいけなくなったみたいだ」
→ ここでは、恋愛の繰り返される別れと再会のサイクルが描かれています。主人公は「505」に戻ることを決意していますが、そこにはいつも悲しみが伴っていることが示唆されています。「崩れ落ちる」という表現が、この恋愛がどれほど主人公の感情を揺さぶるものなのかを強調しています。
I’m always just about to go and spoil the surprise
Take my hands off of your eyes too soon
「俺はいつも、サプライズを台無しにしそうになる」
「君の目を覆っていた手を、早く外しすぎてしまう」
→ ここでは、主人公が焦りすぎて、恋愛の大切な瞬間を壊してしまう傾向があることが表現されています。「目を覆っていた手を早く外してしまう」という比喩は、サプライズを待ちきれない心理や、恋愛における焦燥感を象徴しているように感じられます。
※ 歌詞の全文は Lyrics.com などで参照可能です。
4. 歌詞の考察
「505」は、単なるラブソングではなく、恋愛の中での後悔、執着、そして避けられない別れをテーマにした、非常に感情的な楽曲です。
主人公は「505」という場所へと向かっていますが、それは単なる物理的な場所ではなく、**「過去の恋愛の記憶」や「忘れられない感情の象徴」**であるとも解釈できます。歌詞の中では、「戻る」という表現が何度も登場し、主人公が過去の感情に囚われていることが強調されています。
また、別れと再会が繰り返される恋愛が描かれており、どれだけ愛していても結局は傷ついてしまうという、切ない関係が示唆されています。この曲の歌詞には具体的なストーリーはないものの、その抽象的な表現が、多くのリスナーの心に響く理由の一つとなっています。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- “Do I Wanna Know?” by Arctic Monkeys
→ 同じく執着と欲望がテーマの、ブルージーなロックナンバー。 - “The Less I Know The Better” by Tame Impala
→ 失恋の感情を描いた、メロウなインディーロック。 - “Reptilia” by The Strokes
→ 疾走感のあるギターと内省的な歌詞が特徴の名曲。 - “No Surprises” by Radiohead
→ 静かでメランコリックなメロディの中に、切ない感情が込められた楽曲。
6. Arctic Monkeysのエモーショナルな側面を象徴する楽曲としての「505」
「505」は、Arctic Monkeys のディスコグラフィーの中でも特に感情的で、内省的な楽曲として、多くのリスナーに愛され続けています。
この楽曲は、バンドの持つダークでロマンティックな一面を象徴しており、特にライブでのクライマックスに演奏されることが多く、ファンとバンドが一体となる瞬間を生み出す重要な楽曲となっています。
また、「505」は、Arctic Monkeys のサウンドがより洗練された方向へと進む兆しを示した曲でもあり、後の『AM』で見られるような、ブルージーでグルーヴィーなスタイルへの移行の布石となった楽曲と言えるでしょう。
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