
発売日: 1996年8月27日
ジャンル: サザンヒップホップ、オルタナティブヒップホップ
- 宇宙へ飛び立ったサザンヒップホップ—OutKastの進化が始まる
- 全曲レビュー
- 1. You May Die (Intro)
- 2. Two Dope Boyz (In a Cadillac)
- 3. ATLiens
- 4. Wheelz of Steel
- 5. Jazzy Belle
- 6. Elevators (Me & You)
- 7. Ova da Wudz
- 8. Babylon
- 9. Wailin’
- 10. Mainstream (feat. T-Mo, Khujo & Cee-Lo)
- 11. Decatur Psalm (feat. Big Gipp & Cool Breeze)
- 12. Millennium
- 13. E.T. (Extraterrestrial)
- 14. 13th Floor / Growing Old
- 15. Elevators (ONP 86 Mix)
- 総評
- おすすめアルバム
宇宙へ飛び立ったサザンヒップホップ—OutKastの進化が始まる
1996年、OutKastは2ndアルバムATLiensで、ヒップホップの新たな境地を切り開いた。デビュー作Southernplayalisticadillacmuzik(1994年)でサザンヒップホップの新時代を築いた彼らは、本作でサウンドをよりスペイシーかつオルタナティブな方向へと発展させ、単なる「南部のプレイヤー」から「音楽的革新者」へと変貌を遂げた。
タイトルのATLiensは、「Atlanta」と「Aliens」を掛け合わせた造語で、OutKastがアトランタのシーンから孤立した異端者(エイリアン)であることを象徴している。André 3000とBig Boiのリリックはより哲学的・宇宙的な視点を持つようになり、プロダクションもOrganized Noizeの手を離れ、二人自身が大部分を手がけることで独特のサウンドが生み出された。
シングル「Elevators (Me & You)」は、そのユニークなビートと催眠的なフロウでOutKastの新しい方向性を明確に示し、サザンヒップホップの枠を超えた作品として高く評価された。
全曲レビュー
1. You May Die (Intro)
サイケデリックなコーラスとアンビエントなサウンドが印象的なイントロ。まるで異世界へのゲートウェイを開くかのような不気味な雰囲気を持つ。
2. Two Dope Boyz (In a Cadillac)
ハードなビートとスムーズなフロウが融合した楽曲。リリックでは「ATLiens」としての自分たちを誇示し、進化したスタイルを見せつける。
3. ATLiens
タイトル曲であり、OutKastの代表曲のひとつ。宇宙的なシンセサウンドと重低音のベースラインが特徴的で、「南部のエイリアン」としてのアイデンティティを確立する。
4. Wheelz of Steel
スクラッチとジャジーなビートが特徴の楽曲。アナログなヒップホップの要素を残しつつ、近未来的なサウンドを取り入れている。
5. Jazzy Belle
スムーズなベースラインとR&Bテイストのコーラスが魅力のトラック。女性との関係について、OutKastらしい視点で深く掘り下げる。
6. Elevators (Me & You)
アルバム最大のヒット曲。ミニマルなビートと不穏なシンセが特徴的で、催眠的なフロウがリスナーを引き込む。歌詞は彼らのキャリアと成功について語るもの。
7. Ova da Wudz
アンダーグラウンドな雰囲気の強いトラック。シンプルなビートとリズミカルなフロウが融合し、ストリート感を維持している。
8. Babylon
宗教や社会問題を扱ったディープな楽曲。André 3000の哲学的なリリックと、スピリチュアルなサウンドが融合した秀逸なトラック。
9. Wailin’
短めの楽曲ながら、独特のビートとエネルギッシュなラップが光るトラック。
10. Mainstream (feat. T-Mo, Khujo & Cee-Lo)
Goodie Mobのメンバーが参加し、南部ヒップホップのリアルなストリートライフを描写する。
11. Decatur Psalm (feat. Big Gipp & Cool Breeze)
ダークでシリアスなビートの上で、アトランタのストリートカルチャーについて語るヘビーな楽曲。
12. Millennium
アルバムの中でも特に未来的なサウンドが際立つトラック。タイトル通り、次の時代へ向けたOutKastの意識が表れている。
13. E.T. (Extraterrestrial)
タイトル通り、完全にエイリアン的なコンセプトを持つ楽曲。宇宙的なビートと詩的なリリックが融合し、ATLiensの世界観をさらに拡張する。
14. 13th Floor / Growing Old
アルバムの中でも特に詩的なトラック。人生や成長についての深いメッセージが込められており、アルバムのクライマックスを飾る。
15. Elevators (ONP 86 Mix)
「Elevators」のリミックスバージョン。オリジナルとは異なるビートアレンジが施されている。
総評
ATLiensは、OutKastが単なるサザンヒップホップのアーティストではなく、ジャンルを超えたビジョナリーであることを証明した作品だ。本作では、宇宙的でスペイシーなサウンドが全面に押し出され、彼らの音楽的な実験精神が随所に感じられる。
また、リリックの面でも大きな進化を遂げており、ストリートライフの描写にとどまらず、哲学や宗教、未来への視点など、より抽象的かつ深いテーマを扱っている。特にAndré 3000のリリックは、ヒップホップの枠を超えた文学的な要素を持ち、後の作品へとつながる独自のスタイルを確立している。
本作は、OutKastのキャリアの転換点であり、以降のAquemini(1998年)、Stankonia(2000年)といった名盤への布石となる重要な作品である。
おすすめアルバム
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Goodie Mob – Soul Food (1995)
サザンヒップホップの名盤で、OutKastの仲間たちによる社会派の作品。 -
Dr. Dre – 2001 (1999)
スペイシーなGファンクサウンドが、本作の未来的な雰囲気と共通する。 -
A Tribe Called Quest – Midnight Marauders (1993)
ジャジーなビートと哲学的なリリックの融合が、本作の影響を感じさせる。 -
Kendrick Lamar – To Pimp a Butterfly (2015)
ヒップホップの枠を超えた実験精神とコンセプチュアルなアプローチが、本作と共鳴する。 -
Janelle Monáe – The ArchAndroid (2010)
サイエンスフィクション的なコンセプトと音楽性の進化が、OutKastのATLiens的な世界観とリンクする。
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