
発売日: 1997年9月30日
ジャンル: エモ、インディーロック
疾走するエモーション――The Get Up Kidsの原点
1997年にリリースされたThe Get Up Kidsのデビューアルバム『Four Minute Mile』は、エモというジャンルをメインストリームに押し上げた重要な作品の一つだ。カンザスシティ出身の彼らは、このアルバムを通じて、ポストハードコアやパンクの攻撃性と、内省的な歌詞を融合させ、のちに続くエモ・リバイバルの先駆けとなった。
プロデューサーにはShellacやJawbreakerを手掛けたBob Westonを迎え、荒削りながらもエネルギッシュなサウンドが特徴的。感情の揺れをストレートに表現した歌詞と、疾走感あふれる楽曲が詰まった一枚となっている。
全曲レビュー
1. Coming Clean
ギターのフィードバックから始まり、一気に疾走感のあるバンドサウンドへと突入するオープニング曲。バンドのスタイルを明確に示す、エネルギッシュなナンバー。
2. Don’t Hate Me
キャッチーなメロディと感傷的な歌詞が特徴の代表曲。ラストの”Don’t hate me, I’m not special like you”というリフレインが切なく響く。
3. Fall Semester
シンプルながらもエモーショナルなコード進行が印象的な一曲。青春の焦燥感と未練を描いた歌詞が心に残る。
4. Stay Gold, Ponyboy
スローテンポから始まり、次第に爆発するダイナミックな構成。タイトルはS.E.ヒントンの小説『アウトサイダー』からの引用であり、青春と喪失をテーマにした内容となっている。
5. Lowercase West Thomas
カンザスシティの実際の通りの名前をタイトルにした楽曲。リズムチェンジを多用し、シンプルなコード進行ながらも感情の起伏をしっかりと描き出している。
6. Washington Square Park
アルバムの中でも特にパンキッシュな楽曲。疾走感あふれるギターとドラムが特徴的で、ライブ映えする一曲。
7. Last Place You Look
比較的ミッドテンポな楽曲で、哀愁を帯びたメロディが際立つ。別れと喪失感を描いた歌詞が胸を打つ。
8. Better Half
内省的なリリックが印象的なバラード調の楽曲。静かに始まり、後半にかけて感情が爆発する構成がエモらしさを強調している。
9. No Love
シンプルなコード進行ながら、熱量のこもった演奏が光る一曲。ライブ感をそのままパッケージしたような荒々しさが魅力。
10. Shorty
短いながらもエネルギーに満ちた楽曲。シンプルなギターワークと、ボーカルの切実な叫びが印象に残る。
11. Michelle With One ‘L’
アルバムを締めくくるナンバー。ラストにふさわしい感情的なクライマックスを迎える、エモーショナルな楽曲。
総評
『Four Minute Mile』は、エモというジャンルの原点の一つとして、今日でも高く評価される作品だ。決して洗練されたプロダクションではないが、それが逆に若さと情熱を感じさせる要素となり、The Get Up Kidsの魅力を引き出している。
このアルバムの成功が、後のSomething to Write Home About(1999年)でのさらなる飛躍につながり、Jimmy Eat WorldやDashboard Confessionalといったバンドにも大きな影響を与えた。エモの初期衝動を感じたいリスナーには必聴の一枚。
おすすめアルバム
- Jimmy Eat World – Clarity (1999)
- エモをメジャーシーンに押し上げた名盤。繊細なメロディとドラマティックな展開が光る。
- Texas Is The Reason – Do You Know Who You Are? (1996)
- エモ黎明期を代表する作品。メロディアスなギターと感情的なボーカルが特徴。
- American Football – American Football (1999)
- ジャンルの中でも特に内省的で繊細なサウンドを持つ名作。
- Saves The Day – Through Being Cool (1999)
- パンク色の強いエモサウンドが特徴で、『Four Minute Mile』と並んで影響を与えた作品。
- The Promise Ring – Nothing Feels Good (1997)
- メロディックなエモの先駆けとして、多くのバンドに影響を与えたアルバム。
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- メロディックなエモの先駆けとして、多くのバンドに影響を与えたアルバム。
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