
発売日:2020年4月24日
ジャンル:オルタナティヴ・ロック、エレクトロニック・ロック、インディー・ロック、シンセ・ロック、ポップ・ロック
概要
AWOLNATIONの『Angel Miners & the Lightning Riders』は、Aaron Brunoを中心とするプロジェクトが2020年に発表した4作目のスタジオ・アルバムであり、エレクトロニック・ロック、オルタナティヴ・ロック、ポップ、インディー的な感覚を横断してきたAWOLNATIONの音楽性を、より感情的で人間的な方向へ整理した作品である。AWOLNATIONは2011年のデビュー・アルバム『Megalithic Symphony』で広く知られるようになり、特に「Sail」の爆発的な成功によって、2010年代初頭のオルタナティヴ・ロック/エレクトロニック・ロックの中で特異な存在となった。重いシンセ・ベース、荒いビート、叫びとファルセットを行き来するヴォーカル、ポップなフックとノイズ的な質感を併せ持つサウンドは、ロック・バンドともEDMとも異なる独自の位置を作った。
その後の『Run』では、より攻撃的でダークな要素を強め、『Here Come the Runts』ではギター・ロックやクラシック・ロックへの接近が見られた。そうした流れを経た『Angel Miners & the Lightning Riders』は、AWOLNATIONの持つ爆発力を保ちながらも、過去作ほどの過剰な混沌より、曲単位のメロディ、感情の明快さ、ゲスト・ヴォーカルとの対話が目立つ作品になっている。アルバム全体には、喪失、不安、友情、自己再生、時代への違和感が漂いながらも、完全な絶望には沈まない開放感がある。
タイトルの『Angel Miners & the Lightning Riders』は、非常に寓話的で映像的である。「Angel Miners」は天使を掘り出す者、あるいは地下から光を探す者のように読める。一方、「Lightning Riders」は稲妻に乗る者たち、つまり瞬間的なエネルギーや危険な速度を体現する存在を思わせる。この二つのイメージは、AWOLNATIONの音楽性そのものにも重なる。内面の暗い場所を掘り進みながら、突然の電気的な爆発へ飛び乗る。静けさと閃光、地下と空、祈りと衝動が同時に存在するアルバムである。
本作はゲスト参加も重要である。WeezerのRivers Cuomo、GrouploveのChristian Zucconi、Alex Ebertなどが参加しており、Aaron Bruno一人の内面世界に閉じるのではなく、他者の声を取り込みながら広がっていく構成になっている。AWOLNATIONの初期作品は、Aaron Brunoの孤独な叫びやスタジオ内の爆発的な構築に強い個性があったが、本作ではその個性がより開かれたポップ・ロックの場へ向かっている。
音楽的には、重いシンセや歪んだギター、強いドラム、エモーショナルなコーラスは健在である。ただし、全体としてはより明るく、メロディアスで、空間に余白がある。曲によっては80年代的なシンセ・ポップ、90年代オルタナティヴ・ロック、2000年代インディー・ロック、現代的なエレクトロ・ポップの要素が混ざり合う。AWOLNATIONはジャンルの純度を重視するタイプではなく、むしろロックの衝動、ポップの分かりやすさ、電子音の人工性を同時に使って感情を増幅するタイプのアーティストである。本作ではその手法が、より人懐こく、聴きやすい方向に働いている。
歌詞面では、現代的な不安と、それでも人とつながろうとする意志が中心にある。世界は壊れやすく、未来は不確かで、自分自身の中にも不安定さがある。しかし、楽曲は完全に閉じこもらない。誰かに声をかけること、誰かと歌うこと、過去の痛みをポップな形へ変換することが、アルバム全体の動力になっている。AWOLNATIONの音楽には常に破裂しそうな感情があるが、本作ではその感情が破壊ではなく、共同的な高揚へ向かう場面が多い。
キャリア上の位置づけとして、『Angel Miners & the Lightning Riders』は、AWOLNATIONの作風をコンパクトかつポップに再整理した作品と言える。『Megalithic Symphony』のような初期衝動の巨大さ、『Run』の暗さ、『Here Come the Runts』のロック志向を経て、本作ではそれらがより滑らかに統合されている。結果として、AWOLNATIONの中でも比較的親しみやすく、メロディの強さが前面に出たアルバムになっている。
全曲レビュー
1. The Best
オープニング曲「The Best」は、アルバムの幕開けとして非常に明快で、AWOLNATIONらしい高揚感を持つ楽曲である。タイトルの「The Best」は、自信、励まし、自己肯定を思わせる言葉だが、曲の中では単純な勝利宣言というより、不安や混乱を抱えながらも前へ進もうとする言葉として響く。
音楽的には、エレクトロニックなビートとロック的な力強さが組み合わされている。Aaron Brunoのヴォーカルは、親しみやすいメロディを持ちながらも、どこか切迫した響きを残している。AWOLNATIONの魅力は、明るいフックの裏に、常に焦燥や不安がある点であり、この曲もその特徴を持つ。
歌詞では、自分や誰かに対して「最高であれ」と言うような、励ましに近い姿勢が見える。しかし、その言葉は完全な楽観ではない。むしろ、自分を奮い立たせる必要があるほど、世界や心の状態が不安定であることが感じられる。ポジティヴなフレーズの裏にある必死さが、この曲の感情的な核である。
「The Best」は、本作が暗さに閉じこもるアルバムではなく、エネルギーを外へ向けて放とうとする作品であることを示している。開幕曲として、聴き手を一気にAWOLNATIONの世界へ引き込む力を持つ。
2. Slam (Angel Miners)
「Slam (Angel Miners)」は、アルバム・タイトルの一部である「Angel Miners」を含む楽曲であり、本作のコンセプト的な中心に近い曲である。タイトルの「Slam」は衝突、強打、急激な動きを示す言葉であり、「Angel Miners」の神秘的なイメージと組み合わさることで、精神的な探索と肉体的な衝撃が同時に現れる。
音楽的には、リズムの強さとシンセの厚みが印象的で、AWOLNATIONらしいエレクトロニック・ロックの迫力がある。ビートは身体を強く押し出し、コーラスには群衆的な高揚感がある。初期AWOLNATIONの爆発的なスタイルを思わせながらも、音の整理はより洗練されている。
歌詞では、何かを掘り当てること、深い場所へ向かうこと、そしてそこからエネルギーを引き出すことが暗示される。天使を掘るというイメージは、暗闇の中から光を探す行為として読める。これは本作全体のテーマでもある。壊れた世界や不安定な心の中に、それでも何か救いになるものを探す。
「Slam (Angel Miners)」は、アルバムのタイトル世界を音として具現化する曲である。重く、明るく、荒々しく、どこか寓話的である。AWOLNATIONの得意とする過剰なイメージと言葉の力がよく出ている。
3. Mayday!!! Fiesta Fever
「Mayday!!! Fiesta Fever」は、緊急信号と祝祭感が同居する、非常にAWOLNATIONらしいタイトルの楽曲である。「Mayday」は危機を知らせる言葉であり、「Fiesta」は祭りを意味する。つまりこの曲には、危機の中で踊ること、混乱の中で祝祭を作ることという矛盾した感覚がある。
音楽的には、軽快でエネルギッシュなビートが前面に出ており、ポップな即効性が強い。だが、その明るさは単純な楽しさではなく、どこか過剰で、少し狂騒的である。AWOLNATIONの音楽では、パーティーのような高揚がしばしば不安や破滅感と隣り合っている。この曲もその典型である。
歌詞では、危機、混乱、熱、集団的な高揚が混ざり合う。誰かが助けを求めているのに、周囲では祭りが続いているような感覚がある。これは現代社会の比喩としても読める。世界が危機に向かっていても、人々はエンターテインメントや消費の熱の中で踊り続ける。
「Mayday!!! Fiesta Fever」は、本作の中で最も奇妙な祝祭性を持つ曲のひとつである。危機と楽しさを切り離さず、むしろ同じビートの中に置くことで、AWOLNATIONらしい不安定なポップ感覚を作り出している。
4. Lightning Riders
「Lightning Riders」は、アルバム・タイトルの後半を担う楽曲であり、「Angel Miners」と対になる重要な曲である。稲妻に乗る者たちというイメージは、速度、危険、瞬間的な輝き、制御不能のエネルギーを連想させる。AWOLNATIONの音楽的キャラクターに非常に合ったタイトルである。
音楽的には、シンセとギターが強く組み合わされ、疾走感のあるロック・トラックとして機能する。曲には明るい推進力がありながら、どこか不穏な電気的な緊張がある。Aaron Brunoの歌唱は、メロディアスでありつつ、感情がはみ出しそうな切迫感を保っている。
歌詞では、稲妻に乗るような危険な自由、瞬間を生きる感覚、未来へ突き進む衝動が描かれる。これは、現代的な不安の中で静かに耐えるのではなく、むしろ電気的な速度へ身を任せるような姿勢である。アルバムの中で「Angel Miners」が内面の地下へ向かう存在だとすれば、「Lightning Riders」は外へ、空へ、閃光へ向かう存在である。
「Lightning Riders」は、本作の二面性を象徴する曲である。暗い場所を掘る者と、光の中を走る者。その両方がAWOLNATIONの音楽に存在している。
5. California Halo Blue
「California Halo Blue」は、本作の中でも特に叙情的で、広がりのある楽曲である。タイトルには、カリフォルニア、光輪、青というイメージが並び、空、海、郷愁、喪失、希望が重なっている。AWOLNATIONの拠点やAaron Brunoの個人的な背景とも結びつき、アルバムの中で感情的な重みを持つ曲である。
音楽的には、エレクトロニックな質感を持ちながらも、非常にメロディアスで、開放感がある。曲は大きく広がり、コーラスには空を見上げるような感覚がある。重いシンセ・ロックというより、空間的なポップ・ロックとして響く。
歌詞では、カリフォルニアの風景、災害や喪失の記憶、青い光のような希望が感じられる。カリフォルニアは単なる地名ではなく、夢と破壊、自由と危うさが同居する場所として機能している。Haloは聖性や救いの象徴だが、Blueは悲しみも示す。つまりタイトル自体が、救いと哀しみの混合物である。
「California Halo Blue」は、本作の中でも特に感情的に開かれた曲である。AWOLNATIONの爆発的な側面よりも、広い空の下で喪失を見つめるような、成熟したメロディ感覚が前面に出ている。
6. Radical
「Radical」は、タイトル通り急進性、極端さ、根源への接近を思わせる楽曲である。AWOLNATIONの音楽には常に過剰なエネルギーがあるが、この曲ではそのエネルギーがよりポップに整理されている。過激でありながら、聴きやすいフックを持つ点が特徴である。
音楽的には、シンセ、リズム、ギターがタイトに配置され、曲はコンパクトに進む。ビートにはダンス的な要素もあり、ロックとポップの中間に立っている。Aaron Brunoの声は明るく響くが、言葉の裏には時代への違和感や自己変革への衝動がある。
歌詞では、普通であることへの拒否、根本から変わること、あるいは他者から極端に見られることへの意識が感じられる。Radicalという言葉は政治的な意味も持つが、ここでは個人的な生き方の姿勢としても響く。世界が不安定であるなら、自分もまた中途半端ではいられないという感覚がある。
「Radical」は、アルバムの中でポップな推進力を担う曲である。深刻になりすぎず、しかしテーマとしては変化と逸脱を扱っている点がAWOLNATIONらしい。
7. Battered, Black & Blue (Hole in My Heart)
「Battered, Black & Blue (Hole in My Heart)」は、タイトルからして傷ついた身体と心を直接的に示す楽曲である。「殴られ、黒く青くなった」という表現は肉体的なダメージを示し、副題の「Hole in My Heart」は感情的な欠落を示す。身体の痛みと心の空洞が重なる曲である。
音楽的には、エレクトロニックな質感とロック的な感情表現が組み合わされている。曲は重くなりすぎず、メロディの明快さを保っているが、歌詞の内容には深い傷がある。AWOLNATIONは、こうした痛みを暗く沈めるのではなく、ポップな形で外へ放つことが多い。この曲もその方法を取っている。
歌詞では、傷つき、壊され、それでも生きている人物の感覚が描かれる。心に穴が空いているという表現は古典的だが、AWOLNATIONのサウンドの中では、電気的な空洞のように響く。感情は生々しいが、音は人工的に増幅されている。
「Battered, Black & Blue」は、本作の中で個人的な痛みを担う楽曲である。アルバム全体が持つ明るいエネルギーの裏に、傷と欠落が存在していることを示している。
8. Pacific Coast Highway in the Movies
「Pacific Coast Highway in the Movies」は、Rivers Cuomoを迎えた楽曲であり、本作の中でも特にポップな魅力が強い曲である。タイトルは、映画の中のパシフィック・コースト・ハイウェイを意味し、カリフォルニアの海岸線、車、青春、映画的な記憶、現実とイメージのずれを連想させる。
音楽的には、Weezer的なパワー・ポップ感覚とAWOLNATIONのエレクトロニック・ロック的な質感がうまく結びついている。Rivers Cuomoの参加によって、メロディには甘酸っぱさとオルタナティヴ・ポップの親しみやすさが加わっている。Aaron Brunoの声との対比も効果的である。
歌詞では、現実のカリフォルニアではなく、映画の中で見たような理想化された風景が扱われる。Pacific Coast Highwayは、自由やロマンスの象徴としてポップ・カルチャーに何度も登場してきた。しかし、映画の中の風景は現実とは異なる。曲はその美しいイメージと、実際の人生の複雑さの間にある距離を描いている。
「Pacific Coast Highway in the Movies」は、本作の中で最も親しみやすいポップ・ロックのひとつである。カリフォルニア的な夢を、少しノスタルジックで、少し皮肉な視点から捉えている。
9. Half Italian
「Half Italian」は、Christian Zucconiを迎えた楽曲であり、アルバム後半に明るく人間的なエネルギーを加える。タイトルはアイデンティティや血筋、自己認識を示すようにも読めるが、曲全体には深刻さよりも遊び心がある。
音楽的には、Grouplove的なインディー・ポップの開放感が感じられ、コーラスには共同的な明るさがある。AWOLNATIONの音楽が一人の内面から爆発するものだとすれば、この曲では他者の声が加わることで、より集団的で軽やかな空気が生まれている。
歌詞では、自己認識や人との関係、少しユーモラスな個人的イメージが扱われる。Half Italianという表現は、完全なアイデンティティの宣言ではなく、どこか曖昧で、半分だけ何かであるという感覚を持つ。現代の自己像は固定的ではなく、複数の要素が混ざったものとして存在する。この曲はそれを軽く、ポップに扱っている。
「Half Italian」は、本作の中で息抜きのような役割を持つが、同時にアルバムの共同性を強める曲でもある。他者と声を重ねることで、AWOLNATIONの世界がより開かれている。
10. I’m a Wreck
「I’m a Wreck」は、タイトル通り、自分が壊れている、めちゃくちゃな状態にあることを認める楽曲である。AWOLNATIONの歌詞には、自己崩壊や不安定さがたびたび現れるが、この曲ではそれが非常に直接的な言葉になっている。
音楽的には、メロディアスでありながら、内側に不安を抱えたポップ・ロックとして響く。曲は過度に重くならず、むしろ自分の壊れた状態を少し笑い飛ばすような軽さもある。しかし、その軽さは問題の否認ではなく、壊れた自分と付き合っていくための方法として機能している。
歌詞では、自分が完全ではないこと、精神的に混乱していること、誰かとの関係の中でうまく振る舞えないことが示される。I’m a wreckという言葉は弱音であると同時に、自己認識でもある。自分が壊れていると認めることは、回復への第一歩でもある。
「I’m a Wreck」は、アルバム終盤で自己の脆さを明確にする曲である。AWOLNATIONのエネルギッシュなサウンドの裏には、常にこうした壊れやすさがある。
11. Jetpack
「Jetpack」は、タイトルから空へ飛び上がること、機械的な推進力、子どものような未来への憧れを連想させる楽曲である。アルバム終盤に置かれることで、重さや傷から少し離れ、軽やかな上昇感をもたらす。
音楽的には、電子音とポップなメロディが組み合わされ、AWOLNATIONらしい明るい浮遊感がある。ジェットパックというイメージにふさわしく、曲には地上から離れる感覚がある。ロックの重さよりも、シンセ・ポップ的な軽さが目立つ。
歌詞では、逃避、上昇、現実から一時的に離れる願望が暗示される。ジェットパックは自由の象徴だが、同時に現実的な乗り物ではなく、少し空想的な装置でもある。つまり、この曲の自由は完全な解決ではなく、想像力による一時的な脱出である。
「Jetpack」は、本作の中で子どもっぽい未来感と現代的な不安が共存する楽曲である。重いテーマの多いアルバムに、明るい空中感を与えている。
12. I’m No Good
「I’m No Good」は、自己否定をタイトルにした楽曲であり、アルバム終盤で内面的な弱さをさらに掘り下げる。自分は良くない、自分はうまくやれないという感覚は、AWOLNATIONの中にある不安定な自己像と結びついている。
音楽的には、比較的抑制されたトーンを持ち、Aaron Brunoの声が感情を直接伝える。大きな爆発というより、自己認識の苦みが中心になっている。音は過度に暗くならないが、歌詞の内容は内向きである。
歌詞では、自分への不信、他者との関係での失敗、自己価値の揺らぎが描かれる。ただし、この曲は完全な絶望の歌ではない。自分が良くないと認めることは、同時に自分を見つめることでもある。AWOLNATIONは、自己否定をポップ・ソングの中に置くことで、聴き手がその感情を共有しやすくしている。
「I’m No Good」は、アルバムの明るい面の裏にある影を示す曲である。外へ向かうエネルギーだけでなく、自分の弱さと向き合う時間も本作には含まれている。
13. A Little Luck… and a Couple of Dogs
ラストを飾る「A Little Luck… and a Couple of Dogs」は、Alex Ebertを迎えた楽曲であり、アルバムを穏やかで人間的な余韻の中で締めくくる。タイトルは「少しの運と、何匹かの犬」という意味で、壮大な救済ではなく、ささやかな幸運と日常的な愛情が最後に残ることを示している。
音楽的には、アルバムの中でも柔らかく、温かい雰囲気を持つ。Alex Ebertの声が加わることで、曲にはフォーク的で共同体的な感触が生まれる。AWOLNATIONの電気的な爆発から離れ、最後には人の声と生活感が前面に出る。
歌詞では、大きな成功や完全な答えではなく、小さな幸運、動物との生活、他者とのつながりが救いとして描かれる。これはアルバム全体の結論として非常に重要である。天使を掘り、稲妻に乗り、傷つき、壊れ、自分を否定してきた後に、最後に残るのは「少しの運」と「犬たち」である。つまり、救いは壮大な神話ではなく、日常の小さなものの中にある。
「A Little Luck… and a Couple of Dogs」は、本作を過剰なドラマではなく、静かな人間味で閉じる曲である。AWOLNATIONのアルバムとしては意外なほど優しく、聴き終えた後に温かい余韻を残す。
総評
『Angel Miners & the Lightning Riders』は、AWOLNATIONの持つエレクトロニック・ロックの爆発力を維持しながら、よりポップで開かれた方向へ進んだアルバムである。『Megalithic Symphony』の巨大な初期衝動や『Run』の暗い圧力に比べると、本作は全体的に明るく、メロディアスで、ゲスト参加による共同性も強い。しかし、表面の明るさの下には、不安、喪失、自己否定、傷ついた心が確かに存在している。
本作の魅力は、過剰なイメージと人間的な感情が共存している点にある。タイトルに含まれる「Angel Miners」と「Lightning Riders」は、ほとんどコミックや神話の登場人物のような言葉である。しかし、その背後で歌われるのは、心に穴が空いた感覚、自分が壊れているという認識、危機の中で踊ること、少しの幸運にすがることといった、非常に身近な感情である。このスケールの落差がAWOLNATIONらしい。
音楽的には、エレクトロニック・ロック、ポップ・ロック、インディー・ロック、シンセ・ポップが混ざり合っている。Aaron Brunoはジャンルを厳密に分けるのではなく、感情の大きさに合わせて音を選ぶ。「Slam」や「Lightning Riders」では強いビートと爆発力があり、「California Halo Blue」や「A Little Luck… and a Couple of Dogs」ではより広がりと温かさがある。「Pacific Coast Highway in the Movies」や「Half Italian」ではゲストとの相性によって、アルバムに親しみやすいポップ性が加わっている。
歌詞面では、現代的な自己不安が大きなテーマになっている。「I’m a Wreck」「I’m No Good」のように、自己否定はかなり直接的に語られる。一方で、「The Best」や「Radical」には自分を鼓舞するような前向きさもある。本作は、強さと弱さのどちらか一方に寄らない。自分が壊れていると認めながら、それでも走り、歌い、誰かと声を重ねる。その姿勢がアルバム全体を支えている。
また、本作はAWOLNATIONの中でも特に共同的なアルバムである。Rivers Cuomo、Christian Zucconi、Alex Ebertといったゲストの存在は、単なる話題性ではなく、アルバムの雰囲気を開く役割を持つ。Aaron Brunoの個人的な世界に他者の声が入り込み、楽曲がより多面的になる。これは、アルバム終盤の温かな余韻にもつながっている。
日本のリスナーにとって本作は、AWOLNATIONを「Sail」の強烈な一発だけで捉えている場合、その印象を広げる作品になる。確かにAWOLNATION特有の爆発的なエレクトロ・ロックはあるが、本作にはそれ以上に、ポップなメロディ、カリフォルニア的な風景、自己不安、仲間との歌、日常的な救いが含まれている。聴きやすさと個性のバランスが良く、バンド/プロジェクトの成熟を感じられるアルバムである。
『Angel Miners & the Lightning Riders』は、壮大なタイトルを持ちながら、最終的には非常に人間的なアルバムである。天使を掘り当て、稲妻に乗るような派手なイメージの先にあるのは、傷ついた心、少しの運、そして生活の中の小さな温かさである。その落差こそが、本作をAWOLNATIONらしい、奇妙でポップで誠実な作品にしている。
おすすめアルバム
1. AWOLNATION『Megalithic Symphony』
AWOLNATIONのデビュー・アルバムであり、「Sail」を収録した代表作である。エレクトロニック・ロック、オルタナティヴ・ポップ、荒々しいビートが混ざり合い、Aaron Brunoの爆発的な作風が最も分かりやすく表れている。『Angel Miners & the Lightning Riders』の原点を知るために重要である。
2. AWOLNATION『Run』
より暗く、攻撃的なサウンドへ向かったセカンド・アルバムである。重いビート、歪んだ音響、自己破壊的な感情が強く、『Angel Miners & the Lightning Riders』の明るさと比較すると、AWOLNATIONのダークな側面がよく分かる。
3. AWOLNATION『Here Come the Runts』
ギター・ロックやクラシック・ロックの要素が強くなった作品であり、本作への橋渡しとして重要である。電子音だけではなく、バンド的なロックの感触が前面に出ており、AWOLNATIONの音楽的幅を理解するうえで有用である。
4. Weezer『Everything Will Be Alright in the End』
Rivers Cuomoのメロディ感覚やオルタナティヴ・ポップの文脈を理解するうえで関連性が高い作品である。『Angel Miners & the Lightning Riders』の「Pacific Coast Highway in the Movies」に惹かれるリスナーにとって、Weezer的な甘酸っぱいロック・ポップの魅力を知る入口になる。
5. Grouplove『Never Trust a Happy Song』
インディー・ポップの明るさ、集団的なコーラス、少し壊れたような高揚感を持つ作品である。AWOLNATIONよりも軽快でカラフルだが、危うさと祝祭性が同居する点で共通している。本作の共同的でポップな側面を広げて聴くために適している。

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