発売日: 1999年9月21日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、ポストグランジ
Our Lady Peaceの進化——叙情性と実験精神が融合した意欲作
1999年にリリースされたHappiness… Is Not a Fish That You Can Catchは、Our Lady Peace（OLP）の3枚目のスタジオアルバムであり、前作Clumsy（1997年）の成功を受け、より実験的なサウンドとコンセプチュアルなアプローチを試みた作品である。
本作では、バンドのアイデンティティであるエモーショナルなメロディと、ダークな雰囲気を持つサウンドを維持しながらも、より複雑なアレンジやリズムの変化を取り入れることで、より深みのある楽曲が揃った。また、レイン・メイダ（Raine Maida）の特徴的なファルセットヴォーカルがさらに強調され、OLPの個性を決定づけるアルバムとなった。
シングル「One Man Army」「Is Anybody Home?」は、本作を象徴する楽曲であり、バンドのオルタナティブ・ロックとしての成熟を示している。また、当時プログレッシブ・メタルバンドPrimusのドラマーであったレス・クレイプールが「Stealing Babies」に参加し、アルバムに新たな彩りを加えている。
全曲レビュー
1. One Man Army
アルバムのオープニングを飾る代表曲であり、OLPの中でも特にエネルギッシュなナンバー。ヘヴィなギターリフと、不規則なリズムパターンが融合し、バンドの進化を感じさせる楽曲。サビの「I’ll trade you my angst for your apathy!」というフレーズが印象的で、レイン・メイダの感情的な歌唱が際立っている。
2. Happiness & The Fish
本作のタイトルの元となった楽曲であり、リズミカルなベースラインと浮遊感のあるメロディが特徴。歌詞は抽象的ながらも、幸福とは何かを問いかける哲学的な内容となっている。
3. Potato Girl
ミドルテンポで進行する楽曲で、OLP特有のダークで叙情的な雰囲気が漂う。サビのメロディが美しく、バンドのメロディックな側面が強調されたナンバー。
4. Blister
アルバムの中でも最もヘヴィな楽曲の一つ。攻撃的なギターとリズムの変化が特徴的で、ポストグランジ的なサウンドを色濃く反映している。レイン・メイダのヴォーカルの狂気じみた表現が光る。
5. Is Anybody Home?
本作のハイライトの一つであり、シングルとしても成功を収めた楽曲。メロディアスなギターと内省的な歌詞が融合し、OLPの持つ感傷的なサウンドが最大限に発揮されている。サビの「Is anybody home?」というフレーズがリスナーの心に響く。
6. Waited
スローでダークな雰囲気を持つ楽曲。ヘヴィなリフとシンプルなドラムパターンが楽曲の世界観を作り出し、OLPの持つ独特な浮遊感が際立つ一曲。
7. Thief
アルバムの中でも特に感動的な楽曲であり、シンプルなアコースティックギターとメイダの感情的なヴォーカルが際立つバラード。歌詞はメイダが出会った癌を患う少女からインスパイアされており、深いメッセージ性を持つ楽曲としてファンの間でも特に人気が高い。
8. Lying Awake
アップテンポでキャッチーなナンバー。OLPの持つポップな要素が強調され、リスナーにとって聴きやすい楽曲。サビのメロディが印象的。
9. Annie
ミディアムテンポの楽曲で、オルタナティブ・ロックらしいグルーヴ感と繊細なメロディが融合した一曲。特にギターのアルペジオが美しく、バンドの叙情的な側面が強く表れている。
10. Consequence of Laughing
実験的なアレンジが施された楽曲で、OLPの音楽的な冒険心が感じられる。リズムの変化やエフェクトを駆使したギターサウンドが特徴的。
11. Stealing Babies
アルバムのラストを飾る楽曲であり、レス・クレイプール（Primus）がベースとヴォーカルで参加した異色のナンバー。ファンク的な要素とプログレッシブな展開が融合し、OLPの新たな一面を見せている。
総評
Happiness… Is Not a Fish That You Can Catchは、Our Lady Peaceが音楽的に進化し、より複雑で実験的なアプローチを試みたアルバムである。前作Clumsyが持つメロディアスな要素を維持しながら、よりダークで哲学的な歌詞、変則的なリズム、サウンドの多様性が加わった作品となっている。
「One Man Army」や「Is Anybody Home?」のようなシングルは、キャッチーでありながらもバンドのアイデンティティを明確に示しており、「Thief」のようなバラードでは、メイダのソングライティングの成熟が感じられる。さらに、「Stealing Babies」のような実験的な楽曲は、OLPの音楽的な冒険心を反映している。
90年代後半のオルタナティブ・ロックの中でも、単なるポストグランジに留まらず、独自の世界観を構築した作品として評価されるべきアルバムであり、バンドのキャリアの中でも重要な位置を占める作品となっている。
おすすめアルバム
- Our Lady Peace – Clumsy (1997)
- よりメロディアスでキャッチーなサウンドが際立つ代表作。
- Radiohead – The Bends (1995)
- メロディアスかつ内省的な雰囲気が共通するオルタナティブ・ロックの傑作。
- Live – The Distance to Here (1999)
- 叙情的でダイナミックなオルタナティブ・ロック。OLPと共通する要素が多い。
- Smashing Pumpkins – Adore (1998)
- より実験的なサウンドと叙情性を兼ね備えたアルバム。
- Bush – The Science of Things (1999)
- 90年代後半のポストグランジの進化を象徴する作品。
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