
発売日: 1999年9月13日
ジャンル: ブリットポップ、オルタナティブ・ロック
進化するバンドサウンド——ブリットポップの枠を超えた成熟した作品
1999年にリリースされたOne from the Modernは、Ocean Colour Sceneの4作目のスタジオアルバムであり、前作Marchin’ Already(1997年)の成功を受けて制作された。本作では、彼らの特徴である60年代ロックの影響を色濃く残しつつも、フォークやブルース、さらにはエレクトロニカ的なアプローチも取り入れたサウンドへと進化している。
ブリットポップのムーブメントが終息しつつあった1999年のUKロックシーンにおいて、本作はバンドの成熟したソングライティングと、より内省的なテーマを前面に押し出した意欲作となった。政治的なメッセージを含む楽曲もあり、特に「Profit in Peace」は平和を訴えるアンセムとして話題を呼んだ。また、「So Low」や「July」などの楽曲は、バンドの新たな表現の幅を示すものとなっている。
全曲レビュー
1. Profit in Peace
アルバムのオープニングを飾る、反戦をテーマにしたメッセージ性の強い楽曲。穏やかなアコースティックギターとシンプルなメロディの上に、サイモン・ファウラーの情熱的なヴォーカルが響く。サビでは「There’s no profit in peace」と繰り返され、社会的なメッセージを力強く伝えている。
2. So Low
メロウで浮遊感のあるサウンドが特徴的なミディアムテンポのナンバー。これまでのバンドのイメージとは異なる、よりドリーミーな雰囲気を持ち、バンドの進化を象徴する楽曲のひとつ。
3. I Am the News
ファンキーなリズムと、特徴的なギターリフが印象的なナンバー。ヴォーカルにエフェクトがかかり、エレクトロ的な要素も感じられる異色の一曲。バンドのサウンドの実験精神が反映された楽曲。
4. No One at All
シンプルなアコースティックギターのアルペジオが美しいバラード。ストリングスのアレンジが施され、フォークロック的なアプローチが際立つ。ノスタルジックな雰囲気が心地よい。
5. Families
ブルースやカントリーの要素を取り入れた楽曲。スライドギターが響き、バンドのルーツミュージックへの愛情が感じられる。
6. Step by Step
オルガンとアコースティックギターが絡み合う、70年代ロックの影響を強く感じる楽曲。落ち着いたリズムの中に、どこか哀愁を帯びたメロディが響く。
7. July
アルバムの中でも特にキャッチーで爽快なナンバー。タイトル通り、夏の夕暮れのようなノスタルジックな雰囲気を持つ楽曲であり、過去作の「The Day We Caught the Train」に通じる明るさとリズミカルな展開を持つ。
8. Jane She Got Excavated
トライバルなリズムとミステリアスなメロディが特徴的な楽曲。エレクトリックギターの響きが幻想的で、サイケデリックな要素も感じられる。
9. Emily Chambers
ジャズやブルースの影響を取り入れた、洗練された大人の雰囲気を持つ楽曲。サックスの音色が曲全体に深みを与え、バンドの新たな一面を見せる。
10. Soul Driver
フォークとサイケデリックが融合した楽曲で、ストリングスとアコースティックギターの絡みが美しい。スティーヴ・クラドックのギターが楽曲をリードし、サイモン・ファウラーの叙情的な歌声が映える。
11. The Waves
アルバムのラストを飾る楽曲で、アンビエント的な要素を取り入れた、静かで感動的なバラード。ゆったりとしたビートと壮大なシンセのレイヤーが、アルバム全体の余韻を深める。
総評
One from the Modernは、Ocean Colour Sceneがブリットポップの枠を超え、新たな音楽性を模索した作品であり、バンドの成熟を感じさせる意欲作となった。
社会的なメッセージを含む「Profit in Peace」、エレクトロ的な要素を取り入れた「I Am the News」、フォーキーなバラード「No One at All」など、幅広いスタイルの楽曲が収録されており、バンドの進化が明確に表れている。また、「July」のようなキャッチーなナンバーもあり、バランスの取れたアルバムとなっている。
ブリットポップブームが終焉に向かう中で、Ocean Colour Sceneは単なる「懐古主義的なバンド」ではなく、新たな時代に向けた音楽性を確立しようとしていたことが感じられる。本作は、彼らのディスコグラフィの中で最も実験的かつ多様性に富んだ作品として、今なお高く評価されるべきアルバムである。
おすすめアルバム
- Ocean Colour Scene – Moseley Shoals (1996)
- 彼らの代表作であり、60年代ロックとブリットポップの融合が際立つアルバム。
- Ocean Colour Scene – Marchin’ Already (1997)
- さらにダイナミックなサウンドを展開し、UKチャート1位を獲得した名盤。
- Paul Weller – Heliocentric (2000)
- Ocean Colour Sceneとも関係が深いポール・ウェラーによる、フォークやジャズを取り入れた意欲作。
- The Verve – Urban Hymns (1997)
- オーガニックなロックサウンドと壮大なアレンジが特徴の名作。「Bitter Sweet Symphony」収録。
- Gomez – Bring It On (1998)
- ブルースやフォーク、サイケデリックの要素を取り入れたUKロックの傑作。
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